1 アキラとヴェス
2作目となります。
高校生の時に書いていて未完だったSFのキャラクター達に愛着があり、もう一度書いてみようと思いました。
初心に戻って最初に思いついたキャラクターのまま、最後まで書き終えられればうれしいです。
よろしくお願いします。
「礼が来るってことはやばい仕事じゃんね!」
アキラが、船に入ってきた礼を見たとたん、天を仰いで嘆いた。
「あー。しばらく仕事なかったから、そろそろ仕事したいとは言ったけど、いきなりかよ!」
ぶつぶつ言い続けるアキラを無視するかのように美女スマイルを浮かべたままタブレットをチェックしていた礼の指が止まり、かすかに眉根を寄せる。
「アキラ、あなたのセックスチェックが空欄のままだけど?」
「知ってんだろ? オレがどっちでもないの!」
「でも、先日の健診で血液検査の結果が出てるでしょ。そもそもあなた、身体的な性が決まる兆候が出る年齢をとっくにオーバーしてるんだから……。ホルモン検査値は? それと性自認もチェックしておくべきでしょう?」
「だから、どっちでもないの! 男も女もわかんないのに、自認なんてできるかよっ!」
礼は肩をすくめるとこのやり取りを興味なさげに眺めているヴェステラントに視線を送り、ため息をついてから話しかける。
「ヴェス、こいつどんどん柄が悪くなるわね。見た目とのギャップひどすぎ」
ヴェスと呼ばれた黒髪を後ろに無造作にくくった黒い瞳の青年が答える。
「いや、アキラは前からこんなだよ」
礼は一瞬考えてから「了解! アキラはいまだにガキってことで納得するわ」と冷静に言った。
「なんだよガキって!」
「ガキだから、ガキって言ってんのよ!」
紫がかった黒髪ストレート、瞳の色も鮮やかな紫色のスタイル抜群の美女である礼がにらむとかなりの凄みがあるのだが、アキラは全く怖気づくこともなく言い合いをしている。
そんなアキラは少年に見える体格だが、かすかに緑色がきらめく銀髪ショート、緑の瞳でとても美しい顔をしており、少年にも少女にも見える。
「あー、もうガキで結構! 仕事の内容送っておいて! オレ、自分の部屋にいるから!」
アキラが船の奥へ引っ込んでしまうと、礼がヴェスにあきれたように話しかける。
「あーあ、だいぶこじらせてるわね。ヴェスはそれでいいの?」
「なにが?」
「愛しの幼馴染がこのままこじらせて、男になってもいいかって言ってんの!」
「いや……、俺の意思なんてどうでも。アキラはアキラなんだから」
「そーいうところが……。
もういい。このままの関係が続くといいとお互い思うのはわかるけど、アキラの身体のこともあるのよ。
ヴェスだけには伝えておくわ、今回の任務で私が来たのはアキラの血液検査で身体に女性化の兆候が出ているからよ」
「それ……俺には関係な」
「馬鹿ね、おおありよ。このまま放っておいたら、すっごい美女になったアキラを他の人にかっさらわれるよ。そうなってからじゃ、遅いんだからねっ!
それにホルモンが変化する時期って精神的にかなり不安定になるの。ヴェスには対応無理……、絶対無理! なんだかアキラがかわいそうに思えてきたわ……」
無言のヴェス。
礼は大きなため息をついてから言った。
「お姉さんのおせっかいもここまで。覚えておきなよ!
さて、今回の任務の話、確認します!」
何人称で書くか迷いましたが、確かアキラの一人称&時々三人称だった記憶があり、なら最初から三人称にしちゃえば、アキラがいないときの話も無理なく書けるかと……書き出しました。
少しずつ書き進めてきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。