少年と魔女の薬
少年
「……あの、魔女さん居ますか」
魔女
「おや、ずいぶん小さいお客さんだね。お使い?」
少年
「魔女さん、魔女さんっ。俺の妹を助けて!」
魔女
「わ、おっとと。どうし」
↑に被せる
少年
「た、頼むよ。もうアンタしか頼れないんだ!」
魔女
「あー。よしよしよし、大丈夫、大丈夫だよ。話してごらん」
少年
「妹の熱が、もうずっと下がってないんだ。村に医者は居ないし、お金も少ししかない。でも魔女なら……。っ、俺の片足でも片腕でも、片目でもやるよ。魔法薬とか錬金術だとかに使えるんだろ!? 頼むよ、なんでもするから。妹を助けてくれ。俺のたった一人の家族なんだ」
魔女
「わかった、分かったから。よしよし、落ち着いて。力になるよ。えっと、代金のことは後で考えるとして……」
少年
「い、いいのか……? あっ、うぁぁ(泣き)良かった、あ、ありがどう、ありがとう。ほんと、もう、だめだったら、どうしようって」
魔女
「わ、な、泣かないでおくれよ。子供の相手は慣れてないんだ……遠いところから、頑張ったね。えっと、妹さんの熱が出る直前、何かしたり、変なことは無かった? 応えられるかな。病気じゃない可能性もあるんだ」
少年
「……たぶん。川の水を飲んだせいなんだ。ここずっと井戸水が枯れてて。川の水をろ過して飲むことになったんだけど、妹が我慢できずにろ過前の水を飲んだから」
魔女
「寄生虫とかの食中毒かな……んー。私は人体に詳しい訳じゃないからな。後でエルフに診てもらおう。私は応急処置に薬湯を出してやろうね。お湯は湧かせる? まだ水不足が続いてるかい」
少年
「うん。まだ雨が降ってないんだ。綺麗なお湯は難しいと思う」
魔女
「それなら。じゃあ代金代わりにひとつ目の仕事を頼もうかな。この辺りに保管してたと思うんだけど……」
少年
「やる! なんでもやるよ! 俺は何をしたらいい!?」
魔女
「これは水瓜の種。別名オアシスメイカー」
少年
「え。みずうりって、村のじじ様が言ってた。南の国にあるっていう水樽が実る植物……?」
魔女
「よく知ってるね。巨大な水の入った実を付けるんだ。この辺りじゃ育たないから、村で育てておくれ。実がなったら1つ、私のところに届けること。いいね」
少年
「わかった。必ず持ってくよ」
魔女
「よし、じゃあ。これが薬湯の入った魔法瓶。中身は熱いから気をつけて」
少年
「ありがとう。大事に持ち帰るよ」
魔女
「うん、そうしておくれ。妹さんは何歳?」
少年
「えっと、たしか7歳だ」
魔女
「それなら、苦味消しのはちみつもつけようね。あと、これが大事なんだけれど、この星の砂を飲む直前に溶いてね」
少年
「星の砂……分かった。ありがとう!」
魔女
「よし。いい子だね。サービスだよ、送ってやるから早くお帰り」
少年
「俺っ、絶対、絶対妹と一緒に恩を返しに行くよ! ちゃんと水瓜も育てるよ! ありがとう、魔女さん」
魔女
「うん。……子らを見守りし黄昏鳥よ、迷い子を帰るべきよすがへ。(息を吹きかける)」