回復と書いてドーピングと読む
冒険者
「おーい魔女、居るかー! 俺だ、帰ったぜ」
魔女
「はいはー、あっ! わーっおかえり! 帰ってたんだね。良かったぁ。お茶飲む? お腹すいてる? 」
冒険者
「おーおー、手厚いこって。そんじゃ、お言葉に甘えて、お茶出して貰っちゃお」
魔女
「だって、スカーレットクイーンだよ! 討伐隊に参加するって聞いてから気が気でなかったよ。火竜種のなかでもかなりの大物だし、誰が死んでもおかしくない」
冒険者
「まぁなぁ。確かにありゃ凄かったわ。1人で行ってたら確実に死んでたな。俺も腹にデカいの貰っちまったしな。お前の調合した命綱のお陰で、今じゃピンピンしてっけど」
魔女
「うんうん……そっか、あれは役に立ったんだね。君が無事で本当に良かっ、た? ……ねぇきみ、まさかウチの店に直帰してないよね」
冒険者
「……いんやぁ? してねぇよ」
魔女
「血の匂いがするよ。ちゃんと医者に診てもらって来たんだろうね? 私の回復薬で皮膚は繋がってるけど、中身ぐちゃぐちゃってオチじゃないだろうね!?」
冒険者
「……いやぁ、魔女サマ印の回復薬はスゲェね。ドーピング力高いや! 全然痛くねぇ! ヨッ 世界一!」
魔女
「〜! こんの、スットコドッコイショ! あれは火事場の糞力で撤退する用の回復薬だって何回も、何回も念押したのにッ。痛みと出血を一時的に止めるだけで治らない! もう 何やってんのさ! お茶は無し! 今すぐ医療施設に行くこと! いや、今お医者さん呼ぶからそこを動くな! 」
冒険者
「へーへー。わぁーってるよ(わかってる)。んな怖い顔すんなって。ちゃんと医療魔術の予約取ってっからよ。……今回は流石にな。ただ、お前の薬がなかったら動けずにそのまま死んでただろうからよ。戻ったら1番に顔見てやろうと思ってさ」
魔女
「そ、そっか……って、君! せっかく無事に帰ってきたのに、死にそうなことしないでよ! そんなの嬉しくな、くもないけどさっ! だめだよ!」
冒険者
「へーへー、さーせんしたぁ。ちゃんと治療受けるって。でも、その前にほらよ。お土産。機嫌直して」
魔女
「モノで釣れるかぁ!って、えっ、角! 角!? も、貰えたの!?」
冒険者
「お前が欲しがってた心臓はさすがに貰えなかったけどな。お陰様でそれなりに活躍したんでね。ど? 機嫌直った?」
魔女
「な、直った……やば。え、これ、ホントにもらっていいの。キミこれの価値知ってる……? もう返さないけども」
冒険者
「ま、命の値段よりは安いだろ。役立ててくれや」
魔女
「わ、わ、ありがとう」
冒険者
「ん。どーいたしまして。……てことで俺は治療受けてくるよ。じゃあな」
魔女
「は? 動いて良いわけないでしょ。エルフのドクターさん呼んだから、大人しくしててね」
冒険者
「えっ。俺あの人の治療嫌い……腕はいいけど痛いじゃん……」
魔女
「知ってる。わざとだよ、しっかり反省してください」
冒険者
「へい……」