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報復惚れ薬

女性

「ここね、魔女の家は」


魔女

「お店ですよ。いらっしゃいませ。何をお探しですか」


女性

「惚れ薬を頂きたいの。幾らでも出すわ、毒薬レベルのをお願い」


魔女

「なるほど。……ご自分用では、なさそうですね?」


女性

「……わかる?」


魔女

「えっと、とりあえずお話を伺ってもいいですか? お茶、お出しします」


女性

「……魔女って思ってたより、なんというか普通なのね。ありがたく頂くわ。恥ずかしくて誰にも言えてないの。でも、関わりのない貴女にならいいかも」


魔女

「魔術素材を扱えるだけで、ただの人間ですよ。あまり身構えず……どうぞカモミールティーです。少し落ち着けるかも」


女性

「私婚約してた溝男(ドブおとこ)がいたのよ」


魔女

「どぶおとこ。はい」


女性

「もう両家に挨拶も済ませてたってのに、あのド腐れ野郎……あんな見え透いた女に付け込まれて。貢ぎこんで。私の誕生日にプレゼントしたパールのバレッタ、強請(ねだ)られたからって同じものをプレゼントって頭湧いてるわよ! 浮気相手とお揃いとか、意味がわからない」


魔女

「万死ですね。呪いましょう」


女性

「えぇ、そうして頂戴。可哀想だったからって何……?? 私は強いから、傷つきやすい子の弱さが分からないって何?? 婚約者を寝度られた人間は可哀想では無いの?? 」


魔女

「こんな人間が存在していいんですか……消した方が良いのでは?」


女性

「信じられないでしょ? これが本当にいたのよ。あの塵芥(ちりあくた)の考えが私に理解できないのは当然なんだけれどもね。わかってたまるものか」


魔女

「今頃、か弱い乙女を守る“俺”に酔ってますよ。腹立ちますね。確か慰謝料というものが取れるんじゃありませんでした。ガツンと、いってしまいましょうよ」


女性

「面白くないけど、笑えるわね。あれでも向こうも同じくらい裕福な家だから、慰謝料を取ったところで大した打撃は与えられないと思うわ。取れる額にも上限はあるし。そして私とは婚約破棄をして、あのオンナと結ばれてハッピーエンドってワケ。最低。私の時間を3年も浪費させておいて。あんなの、こちらから願い下げだけど、これじゃ溜飲(りゅういん)も下がらないわよ」


魔女

「ふんふん。良いと思いますよ。壊しましょう。私も腹が立ちますし! 腕によりをかけて呪います」


女性

「頼もしい魔女ね。でも呪いは穴二つと言うでしょ。私はアレのためにこれ以上不利益は得たくないわ」


魔女

「なるほど。では、惚れ薬を指定ということは何か作戦が?」


女性

「強力な惚れ薬のオーバードーズは人を廃人にするって聞いたから。想いが通じていても、使い方によっては媚薬のような誘引効果もあるんでしょう。あの脳内お花畑の猿なら喜んで使うわよ」


魔女

「んー。薬を盛るとなると、人為的ですからね証拠が残ってしまいますよ。自滅して貰うのが1番ですし、ちょっと考え……あ。あっ! 相手の女性パールのアクセサリーをお持ちなんですよね。よく着けてらっしゃる?」


女性

「知らないわよ。でも、パールを身につけさせればいいの?」


魔女

「そう!真珠は人魚の素材と相性が良いんだ。身につけているのが理想です。……もし、直径20mm以上の大きいものが用意出来るなら、家に置いてあるだけで良いのですが」


女性

「お金には困ってないわ。まかせて頂戴」


魔女

「素晴らしい! それなら、人魚の涙は人魚の涙でも、セイレーンのものを使いましょう! 真珠と共鳴しやすいので、容量を守っていてもオーバードーズ気味になります」


女性

「そのセイレーンって何があるの? 人魚と違うのかしら」


魔女

「人間を食べる人魚です。人間を狩る時に歌で引き寄せるので、彼女たちの歌声は人間に対して強い誘引効果があります」


女性

「……海で漁師が人魚避けしてるって話、そういえば聞いた覚えがあるわね」


魔女

「それです。その本領を真珠が引き出してくれます。しかし、真珠が関わらなければ普通の人魚の涙と普段は同じ効果ですから、薬の材料を調べられても問題はありませんし、オーバードーズとなれば依存性も出てくるので、あとは勝手にサカってくれますよ」


女性

「貴女最高だわ。……そうね、念には念を入れて一応注意書きは作っておくわ。当たり障りのない長々とした注意書きに交えて、1文だけ真珠のことを書いておくの。どうせ読まないわ。でも説明を読まなかったなら、完全な自己責任になるでしょ」


魔女

「わ……お主も悪よの……」


女性

「魔女に言って貰えるなんて恐縮だわ。私も魔女になろうかしら」


魔女

「あはは、良いと思います。あとは花の蜜を変えようかな。普段は「愛の告白」の意味を持つ赤いチューリップを使うところですが、何か好きなものはありますか」


女性

「そうね。……報復の意味合いのあるアザミを使って頂戴」


魔女

「アザミなら、手に入れるのはそこまで困難じゃないですね。分かりました。ではそのように」


女性

「いつ頃受け取れるかしら」


魔女

「蜜蜂に依頼を出すので、1週間ほどあれば確実かと。お代は受け取り時に」


女性

「分かったわ。きっといい知らせをするわね。ありがとう魔女さん」

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