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石妖契約奇譚  作者: 上月琴葉
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最終章 プロローグ 星は降り、

 ――

 どれぐらい深く眠っていたのだろう。

 記憶は朧げで、頭はぼうっとして、自分という輪郭が保たれているのかもわからない。

 あの女の術が成ったのなら、もう魂だけの精神体に成り果てているのかもしれない。


 ああ、だって何も見えない。

 空を覆うのは星。

 足元を満たすのは水。

 とても綺麗な光景だけど、ここには時間がない。

 水に移る姿は最後に真赭と朽葉を見た時の姿のまま。


 もう時は動かないのかもしれない。

 そう思った時だった。


 止まった夜空から星が降った。


 聴こえたんだ。

 聴こえるはずの無い声。

 どこか虚ろだった君の生きたいと望む声が。

 そして彼の君を助けたいと願う叫びが。


 ああ、だからもう止まった世界にはいられない。

 首からいつのまにか提げていた鈴がチリンと鳴る。


「綺麗な音だな」

「……あなたが今のこの体の主ですか?」

 鈴に導かれるように薄紫色の跳ね髪の奇抜な服を着た男が現れる。

「ああ」

「俺は吹けば飛ぶような精神体ですが……殺しますか?邪魔でしょう?」

 終わりを覚悟して言ったのに、返ってきた言葉は意外なものだった。

「いや、おれは何もしない。ただ、お前はまだ眠っている事にしたほうがいい。

 黒橡にばれれば間違いなく消されるだろう。……これは個人的な興味だが」

「……お前の……アヤトの願いとはなんだ?人間というものはだいたい何か願いがあるものだと聞いたが」

「死んだはずの命だから、自分自身に対しての願いはないよ。だけど、叶うなら……真赭と朽葉を助けたい」

「わかった。お前の願いは叶えよう。何、黒橡には作戦だとでも言っておこう。時間がないから急ぐ。真赭は白澤のゆらとして覚醒したが洞窟からは出られていない。火は……消せたようだが」

「……ありがとう。でも、どうして?」

 その問いに答えた男はとても優しい眼をしていた。

「……おれは世界も人間も滅ぼしたいと思わないからだ。記憶の奥底に微かに残っているが……かつて世界に滅びをもたらすしか出来なかったおれを……肯定してくれた人間たちがいた。だからおれは、むしろ、この世界を守りたい。世界を滅ぼしたいと願っているのは……もっと別の存在だ」

「別の……?まあいいか。時が来れば分かるから、じゃあ、俺は少し眠る。任せたよ……えっと名前は?」

「……エクリプス。ああ、少し眠るといいアヤト。大丈夫。おれは、約束は守るから」


 瞳を閉じる。

 今はまだ動けないけれど。

 いずれ時が満ちたその時は……


「君が生きたいと願うなら、願えるようになったのなら。俺の残りの力を全て使ってでも……助けると約束しよう」

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