15話 幸石堂へようこそ
――
無事に紺が戻ってきて一週間。学園は冬休みに入った。
そんなある日、私は浅黄からの電話で最寄りの駅へ向かっていた。
「あの、瑠花ちゃん、一緒にお出かけ、しませんか?」
「ああ。色々あってバタバタしていたが……勉強の息抜きも必要だろう」
断る理由もないのでOKを出して、すぐ支度をして家を出る。
クリスマスが近づく街並みは心なしか華やいでいて、少しだけ気分を明るくさせた。
そう、戦い続きで忘れていたが大学がエスカレーター式とはいえ、私は受験生なのだ。学園では普通に授業を受け、寮に帰れば宿題と戦う日々。
どう考えたって気分は滅入ってしまう。だから、少しぐらいは。
「あ、瑠花ちゃん」
「待ったか?浅黄」
「ううん。今さっききたところだから――」
そう話す浅黄はふわふわした暖かそうな白いニットに水色のコート。足元のブーツもふわふわしている。
対照的に私は紺色のコートに赤いマフラー、茶のブーツ。
「浅黄の服はいつも可愛いな」
「ふえっ!?え、瑠花ちゃんだってかっこいいよ……スタイルいいし……」
照れたような浅黄を可愛いなと思って眺めていると電車が来た。
――
「あ、ここです」
京都糺の森の近くにその小さな店はあった。レンガ造りの今風にいうならばパワーストーンショップ「幸石堂」。
何でも店主がイケメン、バイトの男の子もイケメンらしいと噂で、また石の効果も本物だと華茶花学園でも噂になっている。ここでパワーストーンのアクセサリーを買って鞄やスマホにつけている者も多い。
「一度来てみたかったんです……ほら、私たち契約石を持ってるよね?だから鉱石に興味が湧いてきちゃって」
「ああ、それはわからなくもないな」
私は扉を引いて、浅黄と共に店内へ足を踏み入れる。
その瞬間――
(……え?)
ぐらり、と世界が反転した。
――
「おや、本当の……幸石堂へようこそ」
気が付くと私はひとりで幸石堂の中に立っていた。一緒にいたはずの浅黄は見当たらない。
そして、直感した。
「ここは……先ほどの店であって、先ほどの店ではないな?」
店主の青年がそれを聞いて微笑む。
「おや、さすがは契約者。そして「揺 の子」だけある。ここは次元の狭間、時が止まった場所。ここに導かれたのは、貴方の持つ運命。さて――」
そう言って店主の青年が私に向けて石を差し出す。
「瑠花さん、どうぞこの中からひとつの組み合わせをお選びください。選んだ石が貴方のこれからの道を示すでしょう」
提示された石はこれら。
ルチルクォーツとラブラドライト
アマゾナイトとオニキス
ガーネットとラリマー
ダイアモンド原石
ネビュラストーンと水晶
サンストーンとアクアマリンのリング
――
「だめだ。決めきれない……」
どの石も同じように美しくて、迷ってしまう。
「モノにはある程度の意思がある。これはきっとこれからの貴方に必要になる力だ」
私はしばらく考え、迷いながらも、ひとつを手にした。
「さて、これで、選択はなされた。もし別の物語を紡ぐことを望むなら、いつでもまたおいでなさい」
――
「ちゃん」
「瑠花ちゃん?」
浅黄の声にはっと我に返ると、そこは幸石堂の扉の前だった。
「あ、なんでもない。行こうか、浅黄」
「うん」
私は浅黄と共にクリスマスの飾りつけのされた店内へと一歩を踏み出した。
1部終了
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これにて1部終了です。
最後の石の羅列はとある伏線です。




