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石妖契約奇譚  作者: 上月琴葉
15/45

14話その迷いを断ち切りて

 ――

「……ふわああ……」

 とある学生専用マンションの一室で青年は大きくあくびをした。

「お疲れ様ですご主人さん」

 桃色の髪に、細い指がそっと触れた。

「あー……モリオンか」

 青年は眠い目をこすって起き上がるとベッドから降りた。

「調子はどうです?まあ、【霧雨のヴェール】は大した魔力はいらないんですけど期間が長かったですからね」

「ああ……とりあえず腹いっぱい朝ごはんが食いたい」

 まだぼーっとした様子で青年が呟く。

「はいはい。モリオンにお任せあれ」

 そう言うとモリオンと名乗った緑髪のメイド服を着た少女?は台所へ消えた。

「……紅緋さん怒ってたか?」

「いえいえ、全然。むしろあの方は紺と海松の色々に萌えたから新刊あのふたりモデルでいくーとか話してましたし」

「ははは……紅緋さんらしいな……」

 青年は苦笑する。

「はい、できましたよ。それよりご主人さんはいいんです?原稿」

 目の前にぽん、とスクランブルエッグとこんがり焼かれたトーストが置かれる。飲み物は紅茶。

「……まあなんとかなるだろ。いただきます」

 青年は迷わずに紅茶を一口。続いてトースト、スクランブルエッグと食べ進めて行く。

「でも、なんでご主人さんは海松に手を貸したんです?朽葉さんや黒呂さんと色々あるらしいのは知ってますが」

 食べ終わった皿を台所の流しに置いて、青年は答えた。

「海松にしろ紺にしろ考える時間が必要だと思ったんだ。紅緋さんというか……スピネルから事情は全部聞いてたからな」

「スピネルさんは好きませんねー だってキャラが被るじゃないですか男の娘、どうしで」

「お前はまったくベクトル違うから安心しろ。というか何にでもなれるんだから別のキャラになりゃいいだろ」

 青年の意見にモリオンは首を振る。

「嫌ですよー今のところこの姿が一番お気に入りなんですから。それともご主人さんは別のキャラがいいんです? 部屋にこの子のフィギュアやラバストやポスターや……」

「それはそもそもお前のリクエストだろ…いやまあ、俺も好きだけどな」

「彼女がいると普通怒られそうなものですが紅緋さんはあれですからねー……すごいですよねあの方の部屋」

 そう言うとモリオンはさっと姿を変える。目の前に現れたのはまだ少し幼さの残る人気ゲームの主人公の姿だ。

 ちなみにそのゲームのシナリオ担当者は氷上ひょうじょうという。イラストレーターはミソラヒカリ。

「このイケメンのあられもない姿の数々が……」

 モリオンはそう言うとずい、と青年に近づく。

「何だったらこの姿でいましょうか?ご主人様」

「近い……近いって!しかもゲーム中と同じ声で言うな!」

 モリオンは様々な姿に変身することができ、声も完璧に同じにすることができる。モリオン曰く魔力が高いからできる、らしい。もっとも今のところは彼?が気にいった二次元キャラに限る、らしいが。

「……いつもはマナを貰いますが……今日はあげましょうか?どっちがいいです?ご主人さん」

「とりあえず腕離せって!朝っぱらからお前は……っ!」

 顔を背けようとする青年から素早く唇を奪って、モリオンは満足そうにまたいつもの姿に戻った。

「はい、今日はあげました。どうですかご主人さん?ドキドキしました?」

「ああ色々な意味でな。とりあえずマナくれたことはサンキュ。ふらつきがだいぶおさまったから」

 青年はそう言うとさっと立ち上がる。

「じゃ、バイトの支度するか。帰りは紅緋さんとこ寄るから遅くなるかもな」

「はいはい行ってらっしゃいませ。ご主人さん。ぜひいちゃいちゃしてきてください」

「だからなんでそうなるんだよ」


 ――

 降り続いていた霧雨が上がる。雫が葉っぱから落ちて、ぴちょん、と音を立てた。

「……朝、になったんだ」

 そっと重い体を起こす。傍にいたはずの海松の姿は消えていた。

「……」

 そういえば彼は夜の間しか実体を保てないのだと言っていた。だけどずっと握っていた右手にはわずかに温もりが残っていた。

「……俺は……【銀杏】なのか【紺】なのか、まだ答えは出ないままだけど」

 海松は【器】だといった。だから間違いなくこの【器】は―【体】は【紺】のものだろう。

 では心はどうなのか。どういう経緯で【紺】が【銀杏】を宿すことになったのかは覚えていない。

 彼にある記憶は臙脂と出会う少し前からぐらいしか存在していないからだ。

 覚えているのは――薄暗いどこかの部屋で実験を繰り返され、時には体を弄ばれながら、傷だらけになるまで敵と戦わされていた、ぐらい。

 その頃はただそれが当たり前だと思っていた。だから何の疑問も持たずに従っていた。

 だけどそれを変えたのは臙脂との出会いだった。臙脂はよく笑い、よく泣き、よく怒る。ころころ変わる表情を見つめているうちに

 少しずつ彼もつられてそういう表情をするようになった。

 そして大事なもうひとり。

「……瑠花」

 きっかけはよくわからない。だけど、急に円家の護衛だと言われてあの家で暮らすようになって彼女の両親から優しさをたくさんもらった。

 瑠璃さんはすぐにいなくなってしまったけど、藤真さんはその後もしばらくは傍にいてくれた。今はもう藤真さんの行方はわからない。最後に覚えているのは薄暗い部屋に殴り込んでボロボロになった俺を助けてくれたこと。そして帰ってきた俺の姿を見て、瑠花が泣いたこと。いつも円家の当主として凛々しくあった彼女が泣いたのを見たのはこの時と、飼っていた金魚が死んだときの2回だけだ。

 そしてその時に思ったんだ。

「……彼女の……瑠花の笑顔を守りたい」

 どんなに傷ついても構わない。体も心も壊れてしまったっていい。許されるなら。

 だけどその想いも揺らいでしまった。

 見た目が【紺】でも中身は違うのだと知ってしまった。断片的に途切れた記憶。それが【紺】の記憶なのか、【紺】の想いなのか……それとも【銀杏】としてのものなのかがわからない。そして本来彼女の傍にいたのがどちらなのかがわからなくて。そして今の自分がどちらなのかもわからなくて。

「……はー紺さんも難儀な性格してますねえ」

「……えっと……メイドさん?」

 声に気が付いて顔を上げるとそこには緑の髪のメイド服を纏った少女――に見えるが立っていた。

「そうですね。通りすがりのメイドです。紺さんって優柔不断というか悩みまくるタイプで超受けなんですねえ」

「おいモリオン。紺はお前と違って滅茶苦茶繊細なんだよ。紅緋さんから聞いただろ?あとさらっと受けとかいうな」

 桃色の髪の青年がモリオンと名乗ったメイド(でいいや)を制す。

「……はじめましてだな。俺は今出川長春。霧雨を降らせてた張本人で紅緋さんの知り合いだ」

「……紅緋さんの?それよりも霧雨を降らせてたって……」

「紺さんは疑問に思いませんでした?なんで桜導の方々が助けにこないのかって」

 紺ははっとする。

「……えっとてっきり俺が足手まといだから戦力外通告なのかなと思ってたところに海松から真実を聞いたからあーやっぱりなって」

「……そこ簡単に納得しちゃうんだな……ま、まあいい。簡単に言うとな、俺はずっとこの屋敷の周辺にだけ【霧雨のヴェール】を張ってたんだよ。

これはヴェールの中のもののマナ反応さえ遮断してしまい、完全に存在を消す魔法だ」

「……ええと」

「つまりはですね。紺さんがここにいることは桜導の皆さんはおろかリア・クロスの皆様にもわからなかったってことです」

「……リア・クロス?組織名か何かですか?俺は……喪われし楽園(ロストエデン)しか知らないですけど」

 長春は頭を掻いた。

「あー……平たく言うとリア・クロスっていうのは【界軸石保護機関】みたいなもので、結界と浄化の【瑠璃】、情報の【墨染】、実戦の【深紅】

 術使いの【真白】を傘下に持ってる。リア・クロスは基本的には表立った行動はしないんだが、 喪われし楽園(ロストエデン)とは敵対関係にあるらしい。首都の方では交戦もあるって聞くな。京都では今のところ実戦はないみたいだけど……」

「つまりは、リア・クロスは世界の監視者であり調和を望む者。【桜導】のメンバーのうち何人かは接触してるようですね。要は最強の能力者で、世界の形が変わる際に【鎮め】を行った関係者、少なくとも敵ではない、感じです」

「な、なるほど……」

「ま、一度に言われても呑み込めないだろうから…とりあえずは敵じゃない、って思ってくれてたらいい。紅緋さんは関係者にあったことがあるらしいんだが、特に【虹石】っていう人物は平和主義者で見た目も普通の人らしいな。あと手作りのお菓子が絶品だってさ」

 モリオンはこほん、と咳ばらいをする。

「話が脱線しまくっててバイトに遅れますよ ご主人さん」

「ああ、やばいなもうこんな時間か……俺が紺に会いに来たのは一言言いたかったからなんだ」

「……一言、ですか?」

「……紺、お前が【紺】なのか【銀杏】なのかは俺にはよくわからない。俺もこれでも前世の記憶持ちだから 時々自分なのか前世のやつの考えなのかわからなくなる時もあるんだよ。けどな、」

 長春は紺に向けて強い口調で言った。

「大事なのはお前がどうありたいかだ。そして今のお前がどう思うかだ。器と魂が違ったって関係ない」

 ざあっと風が吹く。

「お前はお前の望むように進んでいける。だからその道を選んで、最後まであがけ。あがいてつかみ取れ。望むものと、望む場所を!」


 ――その少し後。

<ご主人さん。最後のあれ思いっきり昨日見てたアニメのセリフですよね?>

 骨董店のカウンターに座りながら、長春は小さく頷く。

 今は店には客はひとりもいない。店主も買い取りに出かけていて店には長春だけだ。

「いいだろ別に……俺の言いたいこと全部代弁してるセリフだったし」

<決戦は今夜でしょうか>

「だろうな。もう霧雨は止んだから紺の居場所は桜導にも突き止められるはずだ。

 けど石妖は基本夜の方が強くなる。ぶつかるのは今夜だろう」

 


 ――

「紺の居場所がわかったよ」

 放課後、桜導メンバーは全員が作戦会議室に集まっていた。

 辰砂の力で紺の居場所を突き止めることができ、鴇の解析によって地図上の位置もわかったからだ。

「……でも、どうして急に?リア・クロスが動いても無理だったのに」

 青磁の問いに、

「この地点は紺が消えたとされる日からずっと雨が降り続いていた地域だ。雨と言っても激しいものではなく霧雨程度だが――その雨が何らかの術だったんだろうな」

 鴇が答える。

「術、ですか?」

「うん、術だ。僕たちの使う陰陽道でも、浅黄さんが近い神道でもない。石妖の能力でもない――簡単に言えば魔法や魔術の類」

「……霧で魔術っていうと、ドルイドだよね。ケルトの」

 青磁の言葉に銀朱が頷く。

「ケルトってそういえば超有名な魔術師がいるよね……魔術師マーリン……まあ、関係ないかもだけど」

「いえ、案外関係しているかもしれませんよ?リア・クロスの方々のマナが非常に強いのはわたし、すぐわかりました。でもその能力をもってしても破れない術ですから」

「どうでもいいさ。とりあえず紺を助けられればそれでいい」

 臙脂がそう言って拳を強く握る。

「違いないな。私も臙脂に賛成だ。ひっぱってでも連れて帰る」

「あれ、瑠花珍しく積極的。でもオレも同意見。お詫びにスイーツおごらせまくろうかな」

「ふふ、では作戦会議と行こう――」



 ――

 月が昇った。

「……さあ、戦いのはじまりだね」

 いつの間にか闇の中で実体化した海松が紺の耳元で囁く。

「……海松、その……気を付けてね?」

 紺の言葉に海松は笑う。

「敵の心配しちゃだめだよ。でも……嬉しかった。ありがとう。おいで、金緑石」

 海松の言葉に答えて、金緑石が形をとった。

「姉サマ、コノ人ヲマモレバイインダヨネ?」

「そうだよ。さて……桜導がボク達に勝てるのか…楽しみだね?」

 そう言うと同時に海松は横に飛ぶ。その場所には投げナイフが突き刺さっていた。

「危ないなあ。こういうことやるのは…」

 月を背に浮かぶ黒い翼。答える声もなく今度は5本のナイフが放たれる。

「姉サマ!」

 素早く金緑石がナイフ全てを打ち落とす。

「へえ、なかなかやるじゃん。前よりはさすがに強くなったね?」

 そう答えながら空中でくるりと宙返り。その手にはすでに新たな武器が握られている。

「ふっとべっ!」

 巨大な天狗の羽扇から繰り出されるのは魔力をまとった風の塊。

「グアッ!」

「金緑石!」

 金緑石は大きく吹き飛ばされて屋敷の壁に激突する。ぱらぱら、と壁の欠片が落ちた。

「ほらほらよそ見しない!」

 青磁はたたみかけるように風の塊を放つ。

「……く……!」

(元々ボクとは風は相性悪い……)

「……臙脂!今のうちに紺を!」

「おう!」

 臙脂はそう言うと海松の横をすり抜けて駆け出す。

「……させない……出でよ土人形っ!」

 海松の声と同時に臙脂の前に複数の土人形が現れる。

「邪魔だ……どけえっ!」

 臙脂は走りながら拳を土人形にぶち込んでいく。あるものは崩れ、あるものは崩れながらも追ってくる。

「紺っ!戻ってこい!お前がいないと俺は――」

「っ…ぐあっ!」

「臙脂っ!」

 後ろから現れた土人形の拳が臙脂の頭を直撃する。血を飛び散らせて臙脂はその場に倒れた。

 紺はそれを見て無我夢中で駆け出し、土人形の前に立ち塞がった。

「……許さない……」

 紺が低く呟くと同時に頭に赤く輝く角石が現れる。

「…土に還れええっ!」

 彼はそう叫ぶと素手で土人形に殴りかかる。自らの拳が傷つくのも気にせずに何度も。

「……こ……ん……」

 刀がない状況では圧倒的に無謀。それでも紺は土人形を全て打ち倒した。

「……大丈夫?臙脂……」

「……お前……拳……血まみれじゃねーか……」

「臙脂も頭から血が出てる……お互いさま……かな」

 傷だらけになりながらふたりは笑いあう。そんなふたりは突然額に衝撃を感じて驚いた。

<あーもうー!!見てらんないわ!男の友情だかなんだか知らないけど見てて痛い!ほら、さっさと傷の手当てをなさい!>

「……えっと?」

 いつの間にかふたりの目の前には狐の耳と尻尾を持つ少女が出現していた。

<紺、あんたねえ……いつまでもぐだぐだぐだぐだぐだぐだ悩んでんじゃないわよこのヘタレ右っ!ほら、さっさと契約しなさい!この 白金(プラチナ)――あなたの石妖と!>

 白金と名乗った少女は紺に契約石として白金の勾玉を手渡す。そしてその頬に口づけた。

<よしこれで契約完了ね!じゃあ紺、まずは武器を生成するわ!>

 白金の周りに魔法陣が浮かび上がり、紺の目の前に一振りの刀が現れる。

<私はどこぞの地使いさんたちみたいに回復はできないし、攻撃も補助的な術ぐらいしか使えないのよね。けど、アナタの身体能力があればそれで充分でしょう?紺>

「うん、確かに……充分だ」

 紺は刀を手に取り、再び形を取り戻した土人形を一閃する。今度は土人形は元の姿に戻ることなく崩れて消えた。

「……土人形が再生しない?……お前のその剣の力は……」

 海松に白金はこう言って笑う。

<ふふ。術式崩壊の術をかけておいたのよ?そもそも陰陽道で有名な安倍晴明って母親が狐って伝説あるの、知ってる?>

「……力が同系統ってわけか」

<もちろんこれだけではないけれど。あたしは神狐。古今東西の術には詳しいのよ!>

 海松が白金、紺、臙脂と話していた時だ――

「……青磁!?」

 後ろで何かが倒れる鈍い音がした。


 ――

「……飛び続けるのも……結構きついね……」

「いくらなんでも無茶しすぎ。知ってるでしょ?石妖同化は諸刃の剣だって」

 屋敷の外。前線から外れた場所で青磁は壁にもたれていた。傍らには心配そうに見つめる銀朱。

「……忘れてた。紺を取り戻して、お詫びにデラックスパフェおごらせることしか考えてなくて」

 青磁はへらっと笑うが顔色は悪い。

「烏丸くんはなんか……放っておいたら無茶ばかりしそう」

「へえ、オレのこと心配してくれるんだ?」

「……茶化さないで。こんな時まで」

 銀朱の顔がわずかに朱に染まる。

「……ごめん……けど、ま、悪くはない気持ち」

「あと暗くて気づかないと思ったんだろうけど腕二か所。足にも怪我。錦さんと九条さんもだけど……もう少し体を大事にして」

 いつもより強い口調で銀朱が言って、青磁の腕を肩にかけた。

「へ?」

「……ここから離れるの。菜花のところにいけば治してもらえるから」

「あ、うん……そうだね……」

 青磁は胸がとくん、と鳴るのを感じた。

(……何だろう、これ。この気持ち……)



 ――

「……グウッ」

「……金緑石よくがんばったよ。休んで……」

 うっすらと空が暁の色を帯びる頃。傷ついた金緑石を下がらせ、海松は地面に膝をついた。

「……負けだよ。紺、その刀でボクを貫けば、ボクはただの砂に還る……」

「……」

 紺は刀を海松に向け、振り下ろす。しかしその刃は彼ではなくその脇の地面に突き立った。

「……ごめん。臙脂。俺は……海松を殺せない。……ううん、海松はまだ……消えちゃいけないと思うんだ」

<な、何言ってるの!?>

 戸惑う白金に紺は刀を返す。刀は光の粒子になって消えた。

「……紺……」

 紺は傷だらけの手をそっと海松の肩に置く。

「俺がこうやって迷いを断ち切れたのは海松のおかげだよ。そして、海松、君はお兄さんと一度ちゃんと話をするべきだと思う」

 差し込み始めた朝の光に、海松の体が薄れていく。

「見逃すっていうの?きっとボクはまた紺たちを襲うよ?だってそういう命令だから――」

「その時は全力でまた相手をするさ。桜導全員でな」

「……馬鹿じゃないの……でもありがとう……」

 海松の姿は朝の光の中に完全に消えた。

「……紺……」

「ごめん、臙脂。えっと……ただいま」

 臙脂がそっと、紺の手を取る。

「おかえり、紺」


(ああ、俺はやっぱり【紺】だ。紺で……いたい……)

 呼ばれた名前を噛みしめながら、朝の光の中をふたりは歩いていく。

 ゆっくりと、仲間たちの元へと。

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