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166.兄との再会6



 ヨハンお兄様はクリスが恥ずかしそうにしているのにお構い無しに根掘り葉掘り聞きまくった。

 皇子二人が確保した時間はそんなクリスの恋人との馴れ初めを聞く時間で終わってしまった。多忙な二人の時間をそんなことで潰してしまってもよかったんだろうか……。


 で、今は屋敷に帰るために馬車に乗っている。

 ヨハンお兄様はエリックと共に王宮に残った。というか途中でやってきたお父様に連れていかれたという方が正しい。



 だから馬車には私とお兄様とクリスの三人が乗っている。

 めちゃくちゃ気まずい。

 二人とも大切な家族だけど場の空気を和らげてくれる人がいないとこんなにも居心地が悪くなるものか。

 何か当たり障りのない話を切り出さなければ。



「マリアは……ルイス殿下の顔が好きなのか?」


 神妙な顔でそう切り出したのはお兄様だった。


「…………、どうしてそんな事を?」


 表情や声は深刻そうなのにその内容があまりにもくだらなくて一瞬何を言われたのかわからなかった。


「お前がルイス殿下に協力する理由が他に思いつかなかった。これまで殆ど交流はなかったはずだ」

「それは……」


 確かにルイス殿下の顔は大好きだ。

 けれど彼の提案にのったのは私にも利があるからで、決して顔の良さにつられたわけではない。



 それよりも気になるのは『ルイス殿下に協力する理由』と言っていることだ。

 ヨハンお兄様のあの発言によってルイス殿下の目的がバレてしまっている。

 誤魔化さなければならない。だって私達の関係が偽物だとバレてしまえば全てが台無しになる。


 けれど私一人でどうにかできることではない気がする……。


「確かにルイス殿下のことは……その、かっこいいと思ってます。でもだからって顔だけを見て彼との婚約を受け入れたわけではありません」

「へぇ、じゃあルイス殿下とフランツ、どっちの顔が好きなんだ?」


 割り込んできたクリスに動揺する。

 そんなこと聞かれても困る。といっても私の答えは決まっているけれど。


「ど、ど、どっちって……、ルイス殿下……」

「ふーん、じゃあルイス殿下とヴォルフ侯爵ならどっちだ?」

「そ、それは……」


 え、どっちだろう。同じくらい好きなんだけど。


 ルイス殿下のエメラルドのような綺麗な瞳も好きだし、でもルカの赤毛と切れ長の目元もすごく好き。

 二人とも真顔だとちょっと綺麗すぎて近寄り難い雰囲気なのに、笑うと雰囲気が柔らかくなって思わず言わなくてもいい事を言ってしまう。

 ふとした瞬間に見せてくれる意外な表情もたまらなく好みだ。

 二人ともどんな顔してても好みのど真ん中にいるんだよね。顔だけで選ぶなんて無理だ。


 あ、でも声はルイス殿下の方が……いや、ルカもいい声だし。

 甲乙つけ難いってまさにこの事だ。

 どっちも好き。


 けれど必ずどちらかを選ばないといけないのなら……。


「性格の差でルイス殿下……かしら」

「さっきと違ってえらい悩んだな」

「本当に顔のいい男が好きだとは……いや、悪くはないんだが……」


 お兄様もクリスも若干……いや、ドン引きしてる。

 私は質問に真剣に答えただけなのに酷い。


「ちゃんと顔以外も見てますから!」

「顔以外『も』って……。そこまで行くといっそ清々しいな」

「マリア、見た目も大事かもしれないが一生を共にする相手を選ぶのに顔基準で選ぶのはよくない。歳を重ねれば容姿は衰える。そのときに後悔しても遅いんだぞ」


 苦笑いしているクリスに真剣に諭してくるお兄様。

 完全に面食いのダメな子だと思われている。


「わ、私は性格も考慮した上でルイス殿下を……」

「性格を把握できるほど交流はなかっただろ。何度か会って少し話しただけだと聞いているが……。それとも隠れてどこかで会っていたのか?」

「会っていません。でも会話したときに信頼できる方だと……」

「何を話したんだ? 少しの会話でルイス殿下が信頼できると判断した理由は? まさかフランツの兄だから、なんて理由じゃねぇよな?」


 お兄様もクリスも笑顔だけど聞いてくる内容に容赦がない。

 当然答えられるわけもなく、私は俯いて小さくごめんなさいと言うしかなかった。

 ダメだ。私は面食いという二人の判定を覆せる気がしない。


「ま、その件はひとまず後回しだな。直近の問題を片付けねぇと」

「直近の問題?」

「明日のお茶会。忘れてたくらいだから何にも準備してないんだろ?」

「忘れてなんてないってば」

「明日はお菓子食べるんだから今日はしっかり運動しておかないとな」


 私が我慢できずにお菓子を沢山食べるとでも思ってるのだろうか。

 クリスの中のマリアのイメージはかなり酷いようだ。どうにかしなければ。


「毎日歩いてるんだからちょっと食べたくらいで太らないわ」

「毎日ってまだ四日目だろ。しかも昨日はメイドの仕事をしたからって殆ど歩いてねぇし」


 なんか厳しくない??

 身体の弱かったマリアが頑張ってるんだから甘やかしてくれてもいいじゃん。


「そんな顔しても少なくしないぞ。やったらやったぶんだけ結果が出るんだから頑張れ」


 その言葉になぜだかわからないけれど反発したくなった。



 クリスは頑張っても結果が出ない、なんて経験したことないんだろう。だって私の家族はみな優秀だった。

 挫折なんて知らない彼らは、いつだって私を憐れんでくれる。


 慰めの言葉も褒め言葉も全て私を愛するが故の優しさだ。けれどそれが私には耐えられなかった。




 …………あれ、どうして私はそんなことを考えているのだろう。


「レオナルドは今日はどうする?」

「…………やめておく。あまりマリアをいじめるなよ」


 お兄様の言葉にクリスは苦笑しながら反論した。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思ったらブクマ、いいね、評価で応援していただけると嬉しいです!




前回の更新からまただいぶ空いてしまいました……。

ちょっと色々と思うところがありまして。

なんかだらだらと冗長な話になってるなーと思ってどうしようかなと悩んでいたら三週間過ぎてました(´-` )

そろそろ本当に改稿頑張らないといけない気がしてます。

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