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センの知ること

 これから山狩りが始まります。そうです仙台藩です、仙台藩が山狩りを行うのです。


 もう知っていますでしょう。狙いは鬼です。いや、お前たちじゃない。もちろんお前たちを見つければ殺すでしょう。ただ、山狩りの目的はお前たちではありません。今のお前たちなぞ取るに足らないから。後にどうとでもなると考えている。


 山狩りの目的はこの土地に住む鬼です。山姥と呼ぶものもいます。この山に住む鬼はお前たちよりもずっと強い。もちろん私よりも。


 そんな鬼でも鉄砲でも使われてしまえば危うい。だから私はそれを知らせなければいけないのです。ここから逃げるようにと伝えたいのです。


 蝦夷へ行くか、それとも京か伊勢か。どこでもいい、逃げられるなら。どこでもいいから逃げて欲しい。


 ここにいる鬼は元々は陸奥の鬼ではないと聞いいています。数百年前に京などからやってきて移り住んだと。どうして陸奥へ移り住むようになったのか、そこまではわかりません。子供の頃にそう聞きました。


 今でも京に鬼がいるのか?それはわかりません。お前達だって京でも陸奥でもないところで暮らしていたのでしょう、いないというのは考え難い。

 京に住む鬼は、恐らくは朝廷に仕えると思っています。


 幕府も京には軽々には手を出さないでしょう。そうだ、逃げるなら京がいい!私はそれをこの山に住む鬼へ伝えなければいけない。お前達だって死にたくはないでしょう。早く京へ逃げた方がいい。


 かつて朝廷は鬼の力を借りたいと考えた。しかし、鬼の一部は反発し朝廷に従わないものもいたと聞きます。


 鬼の力を借りたいと考えたのは御公儀も同じ。ただ朝廷とは違い、御公儀の意に沿わない鬼は追い詰められ殺す。その中で生まれたのがお前達の眉郷であり亜慈瑠院。御公儀は鬼の力を借り、鬼は殺されまいと仕えることにした。


 伏せられていますが鬼の力は絶大で天下統一を為すための大きな要因になったと聞きます。

 しかし天下泰平の世を盤石のものとするため御公儀は鬼の力はもはや不要と判断した。鬼を用いる隠密を消すことになった。

 それはお前達もよくわかっているでしょう。同じ様な鬼の集団は他にもあった。あったが、私たちが御公儀の命に従い殲滅しました。


 私はここよりも北にある陸奥の山中で生まれて育ちました。

 ああそうか、そうかもしれない。朝廷に反発して京を離れた鬼の末裔が私たち陸奥に暮らす鬼なのかもしれない。なんの因果か、仙台藩に鬼として隠密として仕えることになりました。


 鬼の力をよく知る仙台藩は鬼を集めていたのです。それに陸奥には鬼が多い。鬼を中心にした隠密を作り上げるにはちょうどよかったのです。

 従わない鬼は容赦なく殺されました。殺さなければ鬼のその力が仙台藩に向けられることを恐れたからです。鬼も仙台藩を恐れ、従うことにした。

 

 ただ、仙台藩は鬼を使役していることを御公儀に隠しています。

 御公儀は仙台藩の弱体化を狙ったのでしょう、仙台藩に鬼の殲滅を命じた。しかし、その命は僥倖と言えばいいのでしょうか、渡りに船というのか。仙台藩は鬼の力を独占出来ると考えたのです。


 ただ御公儀にも仙台藩にも誤算がありました。それはリクの存在です。あいつは頭が狂っている。鬼でありながら鬼を殺すことをためらわず、むしろ鬼を殺せば殺すほど鬼である自らの価値が高まると考えているのです。


 そして、恐ろしく強い。


 お前達では敵討ちなど到底無理。悪いことは言いません。諦めろ。


 御公儀も仙台藩もリクを使役しているつもりでいたが、甘く見すぎていている。あいつの力を見誤った。

 リクは御公儀にも仙台藩にも取り入ることに上手くいき、今は仙台藩に仕えるふりをしている。


 リクは唯一自分の敵となり得るこの山の鬼を狩った後には仙台藩か御公儀を潰すつもりでしょう。いや、リクが直接やるのではありません仙台藩と御公儀の戦いのきっかけを作るつもりでいるのです。あいつは太平の世を望んでいなません。

 それどころか再び戦乱の世となることを望んでいる。


 仙台藩と御公儀の戦を仕掛ければ沢山の人が死ぬでしょう。人々が殺し合うほどに、死ねば死ぬほど自分の価値が高まり必要とされると考えている。

 あいつは狂っている。


 どうして敵わないのか?強すぎるからです。

 リクは鬼が持つ四つの力、その全てを使えるという。私も尼僧のお前もそうでしょう、普通の鬼が引き出せる力は一つ、せいぜい二つ。あいつはそれが四つ。


 私が知っているリクの力の一つは体を鋼のように硬くする力。

 普通の刃で斬ったところでかすり傷一つすらつけられません。歯が立たないとはこのこと。あいつを殺すなら鉄砲でも持ってこなければ駄目でしょう。

 この力だけでもお前達に勝ち目はない。だから諦めろと言ったのだ。


 それよりも厄介なのが気配を消す力。

 尼僧、お前もその力を持っているのだろう。お前ならよくわかるはずだ、今この瞬間に、すぐ隣にリクがいても誰も気が付かない。気配を消すっていうのはそういうことです。


 私の力ですか……、知っていることは全て話す約束、いいでしょう。私の力は治癒。大きな傷は難しいが小さな傷なら治すことが出来ます。


 そうです、リクは治癒の力の他にあと一つ鬼の力を持っている。ただ、それがどんなものなのか私にもわかりません。その力を発揮する機会がないからです。どんな相手だろうとリクは四つ目の力を温存出来るくらいに、それだけリクの強さは尋常じゃない。


 それだけ強いからこそ、力の差が大きすぎるからこそ他の鬼を殺すことを躊躇わないのです。

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