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9緊急招集




まだ夜が明けない午前四時。


「あーヤバイ寝れない…朝食の時間になったらどんな顔をしてシッサスに会えばいいの……!」


晴花は布団に潜りらんらんと冴えた目でぐるぐると考えてる。


昨日は恥ずかしくて帰宅後さっさと部屋に引きこもった。

夕食を抜いたので腹ペコすぎて寝れないのもある。朝食もストライキをするにはもう腹ペコMAXで不可能だ。

「…なまじ格好いいだけに意識してしまう…」


頭を抱えていると

バァーン!

「晴花!」

ノックもなしにシッサスが表れる

「ギャーー!!!」

予想してないタイミングで現れたので晴花の心臓は危うく止まりかけた。

「あ、起きてた。」


「晴花、今伝令魔法で死の魔術師に緊急召集の指令が入った。死魔法庁に行くよ、支度して。」

「え…緊急…?」


このまま恋愛絡みの日常展開が起こるのかと思いきや、どうも全くそういった流れではないらしい。


朝日がのぼりはじめた薄暗い街を抜け、足早に集合場所に向かう。移動しながらシッサスが簡単に事の説明をしてくれる。

晴花はつぶれたパンのトーストをかじりながら走っている。

遅刻寸前な少女漫画のヒロインになった気分だ。

「この国から西にあるサニア王国の牢獄から死刑囚が複数逃げ出したらしい。人数等、今幹部が情報収集をしているけれどおそらく、僕はそちらの対応に行くことになる。留守の間、晴花のことは執行人の1人ラム家のフラー夫人に頼もうと思う」

「フラー夫人…」

「夫人はお身体が不自由だが、フラー夫人の防御魔法は国随一の素晴らしいものだ。…ただ、ちょっと、ウーン…」

「何、ちょっとウーンって何!」



そうこう言っている間に、集合場所である庁内の広間につく。

「やあ、シッサス君。まだ幹部達は来てないよ。」

年配の男性とその息子らしい14歳ほどの少年、そして車椅子に座ったふくよかな女性がいた。

「ご無沙汰してますダグラスさん、ルイス君、フラー夫人。」

シッサスが挨拶している。

仕事場ではまだ顔を合わせたことはなかったが、どうやらこの人たちがこの国の残りの執行人の人か。


「シッサス、この人が、あの、噂の悪魔の2本角の晴花?スゲー!」

ルイス君と呼ばれた少年がキラキラと憧れの眼差しで私を見て聞くが……悪魔の…ん?…何だって?

「うん。晴花は異世界から来たものでまだこちらの世界のことはあまりわからないんだ。皆さんよろしくたのみます。」

シッサスが保護者のように紹介をするので私も「よろしくお願いします」

と深々と三人にお辞儀すると皆笑顔で「こちらこそ」と答えてくれる。


「シッサスさん、素敵なお嬢さんじゃないの。」

フラー夫人が私の手をそっと握る。優しそうな人だ。

「夫人、実は晴花は命を狙われてるようで、僕が留守になることがあったら預かってもらえませんか?」

シッサスの言葉に、夫人は何故かハイテンションになり、すりすりと私の手をさする。

「それは大変!!もちろんよ!晴花ちゃん、いつまでだっていていいのですよ。…ああ…白くてスベスベの手ね…可愛いわ…」

コワイッッッ!!!!

めっちゃ撫で回して来なさる!!!!!!

私はシッサスに助けての視線を送るがシッサスはマズイといった表情で目を逸らす

…知ってて売りやがったな!!



バン!と扉が開き、ゾロゾロと幹部たちが入ってくる。そのなかにはコーデリアもいた。

なるほど、あやつは死魔法庁のお偉いさんで、その辺りの立場の人が公開処刑を進行してるのか。

風貌的に道楽貴族とかかとおもっていた。


「整列!ルフ様より、本日未明に起こったサニア王国の事件について伝令がある」

コーデリアが言い、一歩さがると一番偉いらしい白い髭のおじさんが中央に出て喋りだす。

「此度の事件についてだが、脱獄した犯人は6名。どれも名だたる凶悪殺人犯だ。逃げる際にも多数怪我人を出している。食糧、武器強奪の後、サニア王国南西の森にあるダンジョンに逃げ込んだ。人質はない。まだ調査の進んでないダンジョン故に、内部に転送装置等があり逃げられる可能性もある。速やかに排除するため討伐隊を組むことになり、我が国にも要請があった。…シッサス、行ってくれるな。」

「はっ」シッサスが一歩前に出て礼をする


こっちの世界に来てずっと一緒だったシッサスが遠く危険なとこに行ってしまうと思うと急に胸がギュッと苦しくなり心配で寂しくなってくる。

「大丈夫よ…」

隣に並ぶフラー夫人が私に手を添えてくるが、夫人が車椅子なので手の位置は低くお尻に当たっている。…いや、偶然では…ない

「シッサスさんはとても強いから…大丈夫よ…」

サワサワサワ…

「ひぃーーー」晴花はか細い悲鳴を上げる


ゼンゼン!ダイジョウブジャナイ!!!!!!


半泣きでいると

「晴花。」

ルフ様が私を呼ぶ。

「そなたも行くのだ。」


シッサスや他の執行人はエッ!!となっている。フラー夫人に至っては血走った目でダメよ!とか怒っている。討伐は危険だろうけど、別の身の危険を感じていた晴花には神の声のように聞こえた。

「はい!喜んで!!」

私は居酒屋店員のように高らかに返事する。


「ですが、晴花は攻防スキルをもっておらず、任務に同行するのは危険かと。」

シッサスが余計なことを言う。

でも 確かに昨日の今日で書類もまだ手元にある。なんで選ばれたのかは謎だ。


「今回の討伐にはシッサス、晴花の二名をと、サニア国王子バーナス殿の指名だ。」

ルフ様が言うとシッサスが何か察したように

「バーナス…」小さな声で呟く。


「シッサス、晴花は身支度が整い次第、王宮転送の間よりサニア王国へ。他のものは2人の留守の間の仕事の引き継ぎをコーデリアより受けるように。以上。」

言うとルフ様は部屋を出ていった。





転送の間は祭壇のようになっており、段を上ると、光の竜巻のようなものがくるくると回っている。あれが、転送の魔法か。

「どうぞ、サニア王国、対策室へとつながっております。」風の魔術師らしい人がいう。


「晴花いくよ」

シッサスが手を差し出すが私は膨れっ面で睨み付けてやる。


「そんなに怒らなくても。」

「怒るよねぇ!!?なんかいきなりキスして独占欲みたいなのちらつかせて、彼氏いない歴=年齢女を動揺からの心臓破裂及びキュン死にさせに来たと思ったら、いきなり痴女に差し出すんだからねぇ!!!!」

言うとシッサスが何故か吹き出す

「痴女って…。それに、そんなに動揺してくれたならよかったよ。シッサスチョロい!って顔してたからね。」

ぐっ…バレてたのか。


「何か最近キャラが違う!!」

私が一撃入れてやろうと拳を突き出すがシッサスは「あぶなっ」と後ろに軽やかに避ける。


キーーッッ!!!とシッサスを追い闇雲に手を振り回すが、全然当たらない。

悔しくて、体当たり気味にシッサスをドンと両手で突き飛ばす


「もーー!!鬼!悪魔!シッサスの鬼畜!!!お前の尻も撫でてやるからな!!!!」


叫び、ふと、我に帰ると、いつの間にか転移の竜巻に飛び込んでいたらしい。

地図を広げたテーブルを囲み話をしていた男女数名が驚いた顔でこちらを見ている。


「あ…あはは…」

とりあえず、笑って誤魔化すが

「……なに言ってるのさ晴花、変態じゃないか。」

シッサスがため息をつきながら真顔で言うのでちょっとした殺意がわく。


「アハハハ!!!どんな会話だよ…ヤバイ、うける」

高らかな笑い声がし、そちらに目をやると、一目で人を惹き付けるような明るいオーラをもった青年が歩いてくる

「久しぶりだな!シッサス、前回は確か、3年前に邪教集団の山狩りの討伐召集だったか。」

親しげにシッサスにの肩を組む

「ああ。バーナスも元気そうだね。」

…あれ?バーナスって王子の名前じゃないっけ?

晴花が考えていると、バーナスが私の前に立つ。

そして、姫をダンスに誘うときのような礼をすると

「ようこそ。死の魔術師のオアシス、我がサニア王国へ。」

そう言ってウインクした。


読んでくれてありがとうございます。(^^)

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