7女神襲来
「やっぱ、家はいいね~」
私はだらだらとテーブルに突っ伏す。
「晴花、だらけてばかりいないで、事後処理の書類の作成早くすませなよ。新しい仕事だってひっきりなしにあるんだから。自分宛に届いた資料とかちゃんと目を通してスケジュールを組むんだよ。」
シッサスはそういって二人分の飲み物を置くと、てきぱきと自分の仕事を片付けている。
「わかってまーす。飲み物ありがとうございまーす!」
私は顔を少し上げて敬礼のポーズをとる
死刑執行人は一応公務員あつかいなので、
悪人の始末だけで終わりというわけではなく意外と細かいデスクワークも多かった。
関係書類は大きな鳥が運んでくる。
各機関の連携がとれていないのか、私が勾留中にもぞくぞくと仕事の書類が届いていたようで私の前は私宛の封筒の山だ。
ふとみると、各役所からの封筒の中に、明らかに出所の違う花をあしらった可愛らしい封筒がはさまっている。…名前はない。
王妃様のところで受け取ったような応援の手紙かしらと、いそいそと開封する。
『バカ』と一言。
「キィーーーッ!!匿名の悪意っーーーー!」
破り捨てようとして、下にもう一文あることに気がつく。
『13時、裏の森で待つ。』
…いやいやいや、
…行かないでしょ。
『好きです。一目お会いしたいです。』
とか心をくすぐるワードとともに呼び出すならわかるけどね。
これでなんで来ると思うかな。
「…仕事しよ…。」
15時
バァァァァァン!!!
乱暴に玄関の扉が開かれる
そこには毛先がくるんと巻いたツインテールに真っ赤なビスチェ?鎧?…鎧のわりに面積すくなくない?
…それってあんまり守られなくない?
といった格好の17歳くらいの女の子が
「なんでこないんだよぉぉぉーーー」
と怒り狂っていた。
「…どちらさま… 」
状況のわからないシッサスが対応に向かう横で
『うわ、きっと手紙のだ…家まできたよ。マジかー』と私は天をあおぐ。
いや、でも可愛い封筒はダミーで、行くと生意気な執行人の小娘に鉄拳食らわせたいおっさん達が待っており、フルボッコにされるものかとおもってたのに、女の子か。
女性からは多少の支持がいただけたものと思っていた晴花的には少しショックだ。
一体どういったお怒りなのやら。
「おい!お前だよお前!」
シッサスの横をくぐり抜け私のとこにズカズカと歩いてくる。
「私の男を取りやがって!!!!」
ん…?
元の世界からトンと恋愛事とは縁がありませんが?
ましてやこの世界で関わった男なんて…
「私の…男?」
聞きながらシッサスを指差す
「僕がいつ君の男になったのさ。」
シッサスが冷めた声で言う。
「違うわ!!!」
ツインテールが怒る
……そこで違う言われるとあと話したことあるのは…
……
……
「コーデリア?」
「ふざけんな!!!ボケ!!閻魔さんだ!閻魔さん!!」
「え、閻魔!?」
「閻魔さんがお前の牢に一人で会いに行ったネタはもうつかんでるんだよ!!」
「いや…来たけども…」
「へー…。」
いつもより低めのシッサスの声。
「人違いの騒ぎかと思ったら。晴花、なかなかやるじゃないか。」
シッサスは、冷たい視線を向けると書類とコートをもってシレっと玄関から外に出ていく。
「いや、まって、これは違うんだって…」
…って、なんで私がこんな現場をおさえられた浮気夫みたいなセリフを…
…などと考える隙もなく後ろから髪の毛を引っ張られる
「あーーー!もー、なんなのーー!!」
閻魔を知ってるってことは私と同じ世界から来てる人間か何なのか知らないけど襲撃される覚えはない!
「お前のような異世界送りの下民と一緒にするな!!!」
…あれ、私今声に出して言ったっけ?
「天界の管理者をなめるな。嘘つきで小賢しい人間の考えくらい読めずに正しく天と地に振り分けることができるか!」
この子…こっちの世界のあの世のトップか!!!
「死ぬ前に教えてやろう。私の名はマルバ。女神マルバだ!!
そう言いながら、家の中だというのに容赦なく手にバチバチと光る魔法の球を作り出す
「マジか…」
もちろん私は防ぐような魔法なんてしらない。
なす術無しの私にマルバが魔法を放つ瞬間、2つの影が現れる。
一人は鬼だ。こん棒をくるりと回して素早く私の前にシールドをはる。
一人は見知らぬ大きな白い羽根のはえた男の人で
来て早々おもむろにマルバに無限往復ビンタを食らわせてる。
「下界で暴れるなんて!アホな上司をもつとこっちが恥かくんだよ!」
頬を打つ手は恐ろしく高速でマルバにしゃべる隙も与えない。
やがてビンタが止まると
マルバはすでにプシュンと気絶している。魔法も消えたらしい。
天使はこちらに振り返ると
「晴花様。私はこの女神マルバカ…コホン、失礼…マルバの部下、天使カルディオと申します。うちのアホ女神がすまなかった。…羅刹様もお手を煩わせてし申し訳ありません。閻魔様にも後程私から謝罪に行かせてもらいますので」
「はいよ」と軽く返す鬼。2人は会ったことはあるようだ。
天使のお兄さんは小脇にマルバを抱え深々とお辞儀をして去っていく。
「…鬼、ありがと、いいタイミングで来たね」
さっき鬼の名前を聞いた気がするけど、呼びやすいので鬼でいいとする。
「お前さんは特例の追試のうえ、別の管理区に行かせてるからおかしな動きがないかは特に閻魔は慎重に見張ってるんでね。今日は閻魔も天女も手が離せなくて俺様が来る羽目になったんだよ面倒臭せぇ。」
「元カノなのかなんなのかしらないけど閻魔の女性関係なんとかしとくように言っといてよ…」
あんな魔法出されたらたまったもんじゃない。
「言っとくもなにも、閻魔は浮いた話の一つもきかねぇよ。あの小娘も相手にされないから勝手に逆上したんだろ。」
「迷惑な…」
「じゃあな、閻魔に懸想したのはいくらでもいるから小娘や他の似たようなのがまた来るかも知れねぇぜ!お前も自分で身を守る方法も考えとけよ!いつも間に合うとはかぎらねぇからな!ガハハ!」
鬼は笑いながら帰っていった。
私はヘナヘナと座り込む。
ドッとつかれた。このまま休みたい…
しかし、マルバのせいで部屋がぐっちゃぐちゃになっていることに気がつき、晴花は絶望した。
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