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4初仕事

広い城下町中央の広場に公開処刑のための特設会場がつくられ、溢れんばかりの観客がステージの下を埋め尽くしていた。


「よし。」

初仕事開始直前。

晴花は控室で何度も剣に魔法を施す練習をしていた。

「晴花、もう完璧にできるね」

シッサスからお墨付きをもらう。

「ここ数日特訓してもらったお陰。ありがとう。」

今日、彼はサポートについてくれるらしい。心強いことだ。

「受刑者が誰か聞いてないけどそういうものなの?」

「ああ。昔から、執行人が下手に事件について詳しくなると穿った感情移入をする場合があることや、逆に処刑日時が決まることで犯人に近いものや、被害者の関係者が執行人に近づくのを防ぐために、処刑対象は当日、その瞬間まで解らないようになってるよ」

「そうなんだ。」



「あと、公開処刑の時はショー的な要素がからんできて、執行の前に儀式のようなものがあるんだ。」

「儀式?」


「執行人はその能力がたしかに死の魔術師であることを示す儀式だよ。方法は自由だけど、晴花は初めてだしその魔力を纏った剣を高く掲げればいい。儀式は大方それで終わりだけど、ごく稀にその時の司会、進行の人の演出によっては、カゴに用意された災いを司るゲジゴルと言う魔獣を始末して『正義の元の処刑』であることを表現することもある。そして儀式が終わると刑の執行だ。出来そうかな?」


「魔獣だろうが悪魔だろうが、余裕よ!」


…この言葉は本気だった。余裕だと思っていた。


だが、現実は思ったよりずっと厳しいものだった。





「ムリムリムリムリ!!!!殺せない!!!」

さっきの大口から一時間後私は泣きながら剣をかまえていた。

そんな滑稽な私の姿に会場は笑いの渦だ。


シッサスの持つカゴの中には首をかしげながら

パッチリ、うるうるした目でこっちを見つめるモフモフしたぬいぐるみのような生き物がいる

「何処が魔獣なの…これの何処が魔獣なの!!」

「晴花、ゲジゴルはこうみえて正真正銘凶暴な魔獣だよおちついて、僕がカゴをもっているから、柵の間に、剣を突き刺すだけでいい。」

シッサスが励ましてくれる。


スーハー、スーハー深呼吸をして剣を災いの魔獣ゲジゴルに向ける…

「きゃふ…ん」

ゲジゴルは可愛い鳴き声をあげると、頭を抱えてフルフルとふるえて怯えだす

「むりィ……できないーーー!!!」


ドッ!!

晴花が懇願する度に会場から盛大な笑いが起きる

「ブハハ!なんだあの執行人はぁ!」

「…魔獣すら始末出来ないなんて、前代未聞ね」

「こりゃ、刑の執行なんて絶対出来ないだろ…」



ハァ…っと、大きなため息がきこえ、

「…情けないですね。」

見るからに偉そうな今回の進行役のおじさんが舞台脇から近寄ってくる。


「市場で市民に暴言を吐いていたとの情報もあるのでさぞかし華麗な手捌きをみせてくれるのかと思ったのですが…。」


「コーデリア様」

スッとシッサスが私の前に出て片膝をつき、司会に話かける。

「異世界から来た晴花の初仕事が公開であるのはやはり荷が重いと思います。本日の処刑、私にやらせてください」


「シッサス…」

こんな大風呂敷を広げるだけ広げてポンコツな私を庇ってくれるなんて、なんていい奴なんだ…。


「ならん!!!今日の執行人はその異世界人と、決まっておる。変更はありえない。

…だが、客も同じ茶番をずっとみせられても退屈だろう。そやつの剣が死の魔力を纏っているのは観客皆わかっておるし、儀式はおわりだ。兵士よ、罪人をつれてこい。…本番と参ろう。」


コーデリアは嫌みっぽい笑みを私に向ける。嫌がらせをしたいだけなのが見え見えだ。

「コーデリア様…晴花には…無理です。」

シッサスが苦しげに言う


「無理ならば剣を握ったその娘を、お主が後ろから人形のように操って斬ればいいだろう。それもまた見ものだ…フハハ!」


その言葉にシッサスの怒りが込み上げる

「…これは罪人を裁く場ですか…?それとも新たな執行人の娘が泣きながら血飛沫をあびる姿を貴方が楽しみたいだけの性癖の絡んだ気味の悪い殺人ショーですか!!」

「シッサス…貴様なんだその口の聞き方は…っっ!!」

コーデリアが持っていたステッキをシッサスに振り上げた

「やめて!!!」

私は咄嗟に叫ぶ。

「やめてくださいっっ!…私、やりますから。……やれますから!!………………人間なら。」



「えっ」

シッサス、コーデリア、民衆は思わず声をあげる




「…フ…フン!負け惜しみを……。」

「コーデリア様、死刑囚、連れてまいりました!」


ザワッ

鎖に繋がれ兵士に連れてこられた大男をみた観衆がざわめく。

「あいつは……!」

「ジス=グレンデルだ!!」

「とんでもないのが出てきたな……」



「お嬢ちゃん、可愛いじゃないか。鎖に繋がれる前に会いたかったぜ」

兵士に跪かされた死刑囚がニヤニヤと晴花に声をかけてきた。

そこかしこに彫られた奇妙な文様の入れ墨が不気味さを滲み出している。



ステージの中央に出たコーデリアが罪状を演説し始める

「群衆諸君。新聞記事などで腐るほど見覚えがあるだろう。この死刑囚の名はジス=グレンデル地域はこの国全域にわたり、強姦殺人を繰り返してきた。被害者はのべ34人、反抗手口は…」

「ギャーーーーーーー!!!!」

自分の話を遮る叫び声にコーデリアが振り返ると、叫ぶグレンデルの姿…その横に立つ晴花と、目が会う。


「あ、ご免なさい。ちゃんと切れるか心配だったんで…ちょっと、試し切りを…」

この人思ったより声出すんで…と演説を邪魔してバツがわるそうにポイッと晴花は持っていたグレンデルの親指を後ろ手に無造作に投げる。

…とそれは兵士の頭上に飛んでいき、兵士がギャーと悲鳴を上げた。

「…意外と骨って気にならないんですね。…って、何か、ハモとかたべた時の食レポみたい…フフ」




その場にいる誰もが悟る。

『あの女は本当にヤバイやつだ』…と。



「あ、話、続きどうぞ。」

晴花はコーデリアに言う

「も…もうよいわ!!とっととやるがよい!」

コーデリアは明らかに怯えたようすで2歩、3歩とあとずさりしている


「あ…はい…私も何か言った方がいいのかな。

…えー、先ほど被害者34名の強姦殺人犯と言っていたので、今日は受刑者をとりあえず34分割に切っていきたいとおもいます。…あ、指の分は別で…」


!!!????

晴花の言葉に辺りは混乱に陥る



「晴花!?一体何を…」シッサスが青い顔で聞いてくる。

「だって、スパッと首を落として即死で終わりにするには余りに悪者すぎるじゃない。さっき、私に卑猥なかんじで声かけてきたし反省もしてないでしょ。…亡くなった被害者34人とその遺族の為に一つ一つ、魂を込めて斬るわ。」

「いや、でも晴花…」


「さて、どこからいこうか。途中で死なないようにしないとね。」


「…くっ…くそっ…貴様っ!!!ゆるさねぇー!」

グレンデルが鎖を引きちぎろうと暴れるが鎖は切れない。

晴花が振りかぶった刃がグレンデルに向かって下ろされるのをを皆が、固唾をのんでみていた



……そこから先は、地獄絵図のようであった。とだけ言おう。




30分後。晴花の隣いた死刑囚は34つと指一本になった。

会場にいる誰もが言葉を無くしてボーゼンとしている。


初仕事を終え、ふぅ、と顔を上げた晴花は、観客の中に、早速様子を見に来たらしい市民に変装した姿の閻魔、天女、鬼を見付けた。閻魔はため息をつき頭を抱え、天女は泡をふき、鬼は怖いと泣いているようだ。


なれない魔力を大量に使いフラフラで笑う余裕はなかったが、晴花は血に染まった手の、指を2本立てた。


それは、天界の三人に"こっちの世界でもなんとかやってるぞ"の意味をこめたピースサインであったが、この異世界にそう言った形のサインはないので群衆にはとても怖いものに映り、後にそのサインは憶測のもと

"お前を地獄に落とす。"

を意味するものとされ、晴花は『悪魔の二本角』と異名で呼ばれるようになった。



今話も読んでくれてありがとうございます(^^)


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