1天国と地獄
初投稿作品です。読んでいただけるとうれしいです。よろしくお願いします<(_ _*)>
「松木晴花。22歳OL。暴走車に巻き込まれ事故死。」
「はい」
死後の世界を見たとか言う人の話って本当だったらしい。
晴花は世間でイメージされてる通りの三途の川を渡り、今、誰もが思い浮かべるような閻魔大王の服をきた人物の前に立っている。
まあ、閻魔大王と言えば黒髭強面のおじさんを思い浮かべるところだが、こちらは銀色の髪に切れ長の目付きをしたイケメンなのだが。
「お前の人生は…そうだな…………大人しすぎるくらいに平凡だな。とくに変わった事もない。」
私の事が書いてあるのだろうか、閻魔は帳面のようなものをめくりながらつまらなそうに言う。
「はい」
「天国にいって良いぞ。……次!」
手で天国と書いた扉にあしらうような仕草をする
扉の前では優しそうな天女のような女の人が「おめでとう」と手招きして、地獄側の扉の前では鬼が舌打ちしている。
晴花は言われるがまま扉に向かおうとした…
…が、扉をくぐる前にふと、それでいいのか?と疑問が頭を過る。
そして直ぐに答えが出た。
「やっぱ地獄がいいです!」
振り返り私は叫んだ。
「え!?ん?…なんで??」
閻魔は思わず2度見する
「天国ってどんなとこですか?私の思っている天国はお花畑でアハハ、ウフフと生まれ変わる時を待ちながら皆で面白おかしく暮らすようなとこなんですけど!」
「?……そう…だが?」閻魔は混乱している。
「嫌ですよ!…散々人間関係に気を遣いながら、人の顔色見ながら、理不尽や悪意を向けられても波風たたないように自分を押し殺して何とかやってきました。
暴走車が向かって来たとき、恐怖なんてなかった。『やっとゴールだ!誰にも迷惑かけないで人生を全うできた…!』ってそう思ったんです。
死んだら無になれるなれると思ってたのに、死後の世界……本当にあるんだもんなぁ…。
…今さら誰かと集まって醜いうわべのアハハもウフフもしたくないし、ましてや私生まれ変わりたくもないんですよ!!」
「…だが、 天国にいるのは皆天国行きを許された正しき者達だぞ?その者たちと語らううちに転生に着いての考えも変わることもあるだろう。転生のタイミングも個々で違う。機が熟した時にしかるべき場所に送るものだ。」
「天国にいる人間は影口すら言ったことのない人間だと?」
死んで初めて解き放った私の自我は止まることをしらないようで、スラスラと反論が口から出る
「そ…それは…」天使の扉前の天女様が口ごもる
「目立った悪事を働いてないだけで人間なんてそもそもが薄汚いものなんですよ!だったら地獄のほうが住んでる人達には互いに干渉する余裕もないでしょう。」
「でも地獄はくるしいぜ!ククク!お前、地獄の拷問に耐えられるのか!」地獄の門番の鬼が詰め寄ってくる。
「………何で拷問されなきゃならないんですか…?私は何にも悪いことしてないんですよ??!!」
……
(何だか面倒臭いやつがきた)
閻魔、天女、鬼は思った。
「地獄とは…そういう所だ。だから、天国に行くがいい。」
閻魔は晴花に諭すように言う。
天女が扉前で閻魔に受け入れ拒否の✕のゼスチャーをおくっているのは見ないふりするようだ。
「あ、そうだ…血の池地獄で這い上がろうとするのを竹槍で落とす係とか、針の山で重しを背負わせる係とかやらせてください!」
我ながらナイスアイディア。ただで地獄がダメなら仕事で行けばいい。
「…おまえ…あれは地獄でも特に重いステージで俺達地獄の鬼もあそこだけは御免だと皆いってる。毎日毎日、人間の苦しむ姿や断末魔が見るのも聞くのも苦しくて…担当になった奴らは吐いたり涙をながしながらやってるんだぞ!」
鬼が目にうっすらと涙をため晴花の悪態をつきながら閻魔に向かって✕を出す。
天女にいたっては✕をつくったまま、青い顔で倒れている。
…鬼は何を言っているのか。心苦しいって。
「地獄で特に重い拷問をうけているヤツなんて理性もなく犯罪に走ったゴミみたいなものでしょ?
毎日毎日テレビじゃ真面目に生きてきた人が殺され、弱いものを守る立場の人が権力で私腹を肥やすそんなニュースばっかり。
この手で裁けるなんて…最高じゃない!!」
言っていて、思わず恍惚の表情になる。
……シーン
部屋は静まり返る。
少しの間を置き閻魔は何かを決意したように、晴花を真っ直ぐに見据え、語り出す
「…お主は、私の閻魔帳にもかかれていない大きな闇を抱えていたようだ。このままでは天国にも上げられないし地獄に落とすこともできん。かといって、元の世界に下ろしたとてなにもかわらないだろう。」
「お前はもうしばらく、異世界で生きて学ぶのだ。」
閻魔が手をかざすと晴花の足元が光に包まれる。
「え?…異世界??」
流石に私も急なラノベ展開にすこし動揺する。
「大変稀有な例ゆえ、私達もたまに様子を見に行く。」
最後に閻魔が言うと、光は強さを増し、晴花を包み異世界へと誘った。