序
《……に、頑固なんだから!》
ずっと聞こえていた雑音だったものが、その時急に言葉になって聞こえてきた。
いつもと同じまどろんだ中途半端な意識の中、耳と一緒に目もぼんやりと戻ってくる。とはいえ、実際の目で見えているのとは違うことはわかるそれは、色はわからないまま、物の輪郭だけを写した。それでも、そこにいるのが背を向けた女性だとはわかる。ふわふわと揺れるのは、長い髪。足もとに向かって広がる着物は馴染みのない形をしていた。
《自覚が必要ってこと、かな?》
また、声。
動きを止めた女性は、しばらくすると、頭の高さに右手をかざした。その手のひらから空中に波紋の様に金色の光が広がった。
それと同調するように、私に中の何かが動いて、ざらりと全身が内側から撫でられる。肌がざわめいたのは錯覚だろうけれど、生々しい。
《リンクは、できてるわね》
驚嘆に何もできずただ彼女を見た私に聞こえてきたのは、安堵の声。
《仕掛けは順調に機能してるし。できれば、仲介者なんていない方がいいんだけど、しかたないか》
今度は左手が、空中に金色の光の波紋を描く。
とたん、浮遊感にすべてが曖昧になっていく。
《ねえ、聞こえてたりするのかな? お節介なのはわかってるけど、でも、苦しそうなの、見てるのつらいから。あなたはね、もっと自由になっていいんだよ。自分をかわいそうにしちゃだめなんだからね》
小さくなっていく声がとても優しかった。
そして、私は――
お読みいただきありがとうございます。
自分でも、思いがけないものを書き始めてしまいました。
そして、前編を掲載してから1年半ほど放置することになってしまいました。
今回は、前編も再編集し、完結まで掲載します。
と言っても、全13話予定の第1話の完結なのですが。
たどり着けるかわからないエンドマークですが、「結末はもう決まってます」です。
色々調べながら書いてますが、範囲が広すぎて調べ切れていません。
仕方ないので、●●風で書かせてもらいます。
よろしくお願いいたします。