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再生神機のアンダーワールド  作者: よよっち
episode2 地下世界 一ノ瀬の章
6/14

第六話 オタクは天気が良くても基本部屋の中

今回から日常回が始まります。長らくお待たせしました。

 祝日。

 それは全国のほとんどの学生にとって嬉しいものである。


 ある者は勉学に励み、またある者は己の筋肉を刺激する。

 普段放課後の数時間でしか活動できない部活動の時間を多くとることが出来る日でもある。


 人によってはそれが苦痛ということもあるのだが——まぁ、それは置いておくとしよう。


 帰宅部の身からすれば「部活がつらいならやめればいいじゃないか」と安易に考えてしまうものだが、クラスの友人は「簡単に辞めれるならとっくに辞めてる」とか「そんな一言で終わるような問題でもない」とか。そんな答えが返ってきた。

 

 彼らは部活動の内容にイライラを覚えていく内に部活動関連の事柄全てに嫌悪感を抱き始める。

 例えば、普段登校するときとなんら変わらない道を通るのに、「学校まで遠い。キツイ。部活やだ」とか思ってしまったりする。

 また、普段から仲が良い先生や先輩でも、自分たちにキツイことをさせたら「あの先生(先輩)前からうざいと思ってたんだよな。息がくせぇ。顔がキモイ。部活やだ」とか思ってしまう。


 彼らは端的に言うと部活がしたくないのだ。しかし、部活を休んでしまっては後程色々とまた面倒な事が降りかかってくる可能性が高い。例えばただでさえ嫌いだった部活の顧問に次顔を合わせづらくなるとか。


 だが、そんな部活動ボーイ&ガールたちも様々な条件が重なることで合法的にその日の部活を休むことができる。


 その条件の中で最もオーソドックスなもの、それが


『今日の天気は雨です』


 悪天候である。


 ポケットに入れていたスマホから着信音が響く。プリティーでキュアキュアな日曜日の朝から流れそうな音楽だ。

 昔は”朝から女同士で殴り合ってる姿を見せるんじゃねぇよ。こんな番組のせいで周りの女子がすぐに暴力ふるってくるようになったんだー”とか一人で言いながら真の男女平等とは男子が殴り返してもOKなのかとかこれまた一人で必死に考えてた。


 しかし、いつからだろう。そんなのどうでもよくなって単純にストーリーとキャラクターを愛し始めたのは。恐らくは変身中の無敵時間を応用して戦えばいいんじゃないかとかも思わなくなった時期だろう。

 いや、だからいつだよ。


 と、まぁ。一瞬具体的な時期を想像しようと頑張ったが、ぱっと出てこないので先にこの電話の主の要件を聞いてからにする。


 ええと、誰からだ?


 スマホの液晶に記してあった名前は「巴門」であった。


 非通知だったら切ってやろうか迷ったところだが、そうでないので普通に出ることにする。


「もしもし」

「創! 聞いてくれ!」


 いきなり大声で叫ばれた。スピーカーにしてないのに耳が痛くなるほどの声量だ。


「なんだよ」

「部活が中止になった!」

「おお、よかったな。まぁ、この嵐だし無いのも当然だろうな」

「いや、前回の嵐の時は普通にあったぞ。後日病人が大量発生した」


 なんていうブラック。


「マジかよ。それで? お前は今からこの前俺に自慢してきたゲームを進めるのか?」

「うーん、それもいいけど」

「けど?」

「お前んち行ってもいい?」

「いいわけあるかバカタレ」

「なんでだよー」

 ここで頷いてしまっては後日病人が一人増えてしまう可能性が出てくる。というかそんなの関係なしにビショビショの姿で家に入られても困るし、何よりも


「部屋でゆっくりしときたい」

「せっかくの休日なのに平常運転なんだな」

「帰宅部だから。偶然だが今日は部活は俺もないようだ」

「祝日だからな。帰宅すでにしてるからな。てか、まず登校しない日だろ天候関係なしに」

「そこに気づくとはやはり天才……?」

「馬鹿にしてんのか創」

 

 少々。例を出すなら今降ってる雨の量ぐらいかな。


 とまぁ、こんな感じで基本的に巴門のセリフに俺が感想を言ったり突っ込んだりする会話が数分間続いた。言いたいことを全て言い切った巴門は嬉しそうに


「鎌田の家行ってくる」


 と言って通話を切った。どうやらアイツの中ではこんな日に家に入れてくれない俺は特別な存在らしい。


 テレビの電源も切って自室に戻ろうとすると、チャイムが鳴った。はいはいはい、ちょっと待ってくださいねー。とか言いつつ早足で途中まで駆け上がってた階段をとんとん拍子で降りて、玄関に向かう。


 ガチャリ

 

「どちら様でしょうか」

「遊びに来たぜぇ創!」


 そこにいたのはビショビショに濡れた姿でハンサムスマイルを向ける我がクラスメイト


「……ドア閉めていいか? ()()

「は!? ちょおま何でだよ! せっかく部活が休みなの」


 バタン


 ……………………


 ピンポーン


 ……………………


 ピンポンピンポンピンポピンポーン


「うるせぇ!」

「せめて風呂入れてくれ」

「……いや、風呂入ったところでその服濡れてるからまた濡れるんじゃ」


 やめろ。追加のごはんをねだる犬のような目で俺を見るな! 


「……はぁ。分かったよ俺の服貸すよ」

「あざーっすぅ! やっぱり創ならそう言ってくれると思ってたぜ!」

「わかった。わかったからとりあえずそこでおとなしくしてろ。さっきからお前の髪やら服やらから飛び跳ねた雨水が俺にかかってるんだけど。とりあえずタオル持ってくるから」


 







 鎌田が突然家に来てから30分が経過しようとしていた。

 本来なら割と新しめので汎用性がすごく高いプログラミング言語の勉強でもしようかと思っていたが——


「行けっ! ここで弱Aからの横スマッシュ! よっしゃー! 俺の勝ちだ」

「くっそー! あのコンボ決まるのかよ……。よし、巴門! もう一回だ! ほら、創も早く準備しろよ」


「どうしてこうなった」


 あの後鎌田に服を貸して——

  それからなんか自然な流れで俺の部屋に上がって——

    鎌田が何故かスマホで巴門を誘って——

      巴門も家に来て——


 ん?


 んんん? 


 うん


 今日はあそぼ

 もう、どうでもよくなってきた。

 



 コントローラーを手に持つ。 初期設定から大分違うボタンの配置行動。


 キャラを選択する。色んなキャラを選べるのがこのゲームのいいところ。俺の愛用キャラはファルコンなパンチを撃てる素早いおっさんだ。


 さっきは考え事をしてて操作が適当になったけど次はそうはいかない。本気で行かせてもらうとしよう。 

 ready...fight!


 音声と共に全キャラが一斉に動き出した。俺は鎌田に狙いをつける。


 掴んで、下方向に投げる。そのまま浮き上がった鎌田の青いハリネズミを空中攻撃で追撃する。


 空中攻撃によるリフティングが暫く続いた後、俺と鎌田のキャラは落ちたら即死亡の”崖の外”の空中まで出ていた。初心者ならいったん陸地まで戻るのが賢明な判断だ。


 しかし俺の使っているキャラは問答無用で当たったら敵キャラを真下に落とす技がある。俺は何か特別に意識するまでもなく、

 

 シャンプーをシャワーで洗い流すようなごくごく普通の流れで技を放った。


 命中。鎌田のキャラクターの残機が一つ減った。


「え、うそ。マジで? 創? もしかして怒ってるのか?」


 怒ってませんとも。絶対にゲームで八つ当たりしようなんて思ってないさ。


「次は巴門だ」


 「ひっ!」という情けない声を出す巴門。何を慌ててるんだ。流れからして当然次は君だろ? 大体鎌田のキャラクターは今無敵時間に入ったから狙う意味がないんだよ。


「た、助けてくれ鎌田!」

「お、おう。待ってろ」


 空中にいる俺と巴門のキャラの近くに鎌田のキャラが接近する。だが


「はい」


 キャラの位置を上手く調整して2キャラ同時にヒット。巴門と鎌田のキャラは同時に崖の下に沈んだ。


 残り残機 

 鎌田 0

 巴門 1

 創  2(ノーダメージ)


「うーん。キャラの相性勝ちかなー今回は。次はジョーカーを使おうかな」


 ジョーカーというのはこのゲーム最強のキャラと名高い俗にいう厨キャラである。


 そして俺が最も使いこなしているキャラでもある。


 とか言ってる間に試合が終了する。ボタン連打ですぐに再びキャラ選択画面になる。


 時計を見る。よし、あと1時間は余裕があるな。


 この日を境に鎌田と巴門の脳内の「やったらいけないリスト帳」に雨の日に創の家に行ったらいけない。

という項目が追加されたことを創が知ることは無かった。







「ふぅ」


 鎌田と巴門を帰らすことにようやく成功した。というか、「帰るか?」と聞いたらすぐにYesの答えが返ってきた。なぜだろうか。

 二人のことだからずっとゲームしたいと言い出すのかと思ったんだが。

 ま、この方が楽だしいいんだけどね。


 それより、だ。プログラミングの勉強を開始したい。したいしたいの飛んでいけー

 飛んで行ったらだめじゃないか。帰ってこい俺のやる気。


 よし。戻ってきた。パソコンを立ち上げて―

 ネット詳しいサイトに飛んでー

 開発環境整えて——


 プルルルル


 電話がなりましたー


「っておい。ったくどうせあの二人の内どっちかだろうな。それか雄二かなぁ」


 誰でもいいや。俺は勢いに任せて電話に出た。もしもし!!


『え……ど、どうしたんだ? もしかしてタイミングが悪かった……のか? すまない。また今度——』


「ストップ! すとーっぷ!」


 そこから聞こえてきたのは女子の声。それもとびっきり透き通った俺の好みドストライクの。

 

 相手が困惑しているのが声から分かった。そりゃそうだよ。


 状況を整理しよう。脳内で超スピードで。時間なんて置いてきてしまう。


 一度しか話したことないけど相手の名前はわかる。すげー分かる。というか忘れることが出来ない。


 一ノ瀬若菜。これが電話の向こうの彼女の名前だ。

 その美貌はさることながら性格も、そして俺たちオタクの大好きな声質も最高。どこをとってもS1ランク

 

 なんであの日実際に会うまで俺が知らなかったのか自分でも不思議に思うほどの有名人。


 何故、俺がこの人と連絡先を交換するまでに至ったのか。それは——

 ……それは——

 それは——————


「恥ずかしすぎる!」

 

 思い出すのが。 


『なんでだ!?』


 しまった! ここだけ声に出してしまった。しかもめちゃ女々しい声で!


『本当に大丈夫か? 励ましたいけどいい言葉が見つからない……。やっぱりまた今度にした方が——』


 めっちゃ心配されてるーっ

 どうしよう。なんとか誤解を解かないと。俺は普通に健康むしろあなたのおかげで超健康。今なら目隠しでもエアーマン倒せちゃうレベル。


「大丈夫です。大丈夫だから切らないでください。はい。なんなら一緒に深呼吸しましょう」


 せーのっ


 ひっひっふー


 それ妊婦さんや。


『……本当に今大丈夫なんだよな?』

「ええ。それで今日はどんな用なんです?」


 当店は拷問以外なら基本受け付けております。


『ああ、実はな』


 その時、思い込みだろうか。一瞬彼女の言葉に躊躇いが生じたように聞こえた。

 唾をのむ。さっきから俺は落ち着かず、この部屋の中をぐるぐると歩き回っているが、その後の言葉が聴きたくて足を止め、耳に集中する。今は足音でさえ雑音に入る。


『君を今度の私の誕生日パーティーに招待したいのだが——』

「……!」


 っぶねぇー! 条件反射で俺の口が「行きます」と即答するのを何とか避けることに成功。方法はいたってシンプル。自分の頬を一発思いっきり殴る、というもの。意識が痛みに向くので感情を急激に抑えるのにはとても有効だ。

 先生が大事な話をしている時に笑いそうになった時とかに主に使用する俺の保有する21の特技の一つである。他の人が真似すると強すぎたり痛みが足りなかったりでダメージを極力少なく、意識を痛みに向けれるほどの力加減が難しい。

 

 美少女の誘いに対して即答で肯定するのは相手に引かれやすいことは数々のギャルゲのヒロインを堕としてきた俺にとっては常識も常識。やってみようものなら時計の秒針が動くよりも早く”陰キャ”、もしくは”オタク”と思われよう。共通点は女性との接点の少なさである。

  

「えっと、ちなみに日にちはいつですか?」

『来週の土曜日だな。今日が火曜日だから4日後だよ。それで……これるか?』

「あ、少し待ってくださいね。今予定を確認します」


 無論俺の場合滅多に休日に特別な予定が入ったりすることはない。年に数回雄二とコミケ行ったり映画の公開日に見に行ったりするくらいか。

 ここで予定の確認と称して俺は自分の心を落ち着けることに専念する。心臓の音が煩い。マウスを床に落とした時と同じくらい煩い。いや、もっとだ。ちょうどいい例を挙げるならそうだな……この家から道路を挟んだところにある家に住んでるおばぁさん(通称DJババァ)の散歩する時に大声でやってるラップと同じくらいか? 

 ああ、脳内に鮮明に流れるあのラップ。「家でゴロゴロクソジジイ。昔はハンサムだった顔は今はチンギスハンだ。いい歳こいてユーチューバー、言ってやりたいyou're my Pooh!」


 あの老夫婦はずっと健康でいてほしい。


「あ、空いてますね! 行けますよ」

『! そうかよかった! それで椎名も誘いたいのだが……さっきから連絡がつかなくてな。少しこれから私は忙しくなるから代わりに葛木が誘っておいてくれないか?』

「あ、了解です」


 雄二のヤツ多分まだ寝てるな。ならば今日の夜にでも誘っておこう。


「えっと、ちなみにそのパーティーのメンバーとか決まってます?」

 

 相手がゲーマーだったらRPGの話題と思われそうな質問の仕方だった。


『メンバーは葛木、椎名、咲夕璃、そして咲夕璃の親戚で結構仲が良い人の四人だ。

なんでもその咲夕璃の親戚の人……鈴音さんというんだが、その人にこの前の不良を一緒に退治した時のことを電話で話したら「会ってみたい」と言い出してな。急遽毎年私と咲夕璃と鈴音さんの三人でやっていたパーティーに誘ってほしいと頼まれたんだ』

「なるほど」


 知ってたけど一ノ瀬さんが俺に関心があって誘ってきたわけじゃないのね。

 鈴音さんかぁ。一ノ瀬さんがどういう風に俺たちのことを言ったのかは分からないけど俺たちに興味を持つ人間ってことは少し変わり者なのかもな。

 咲夕璃……それは確か柊の下の名前だったな。あいつも結構顔は良くて男子から人気のあるやつだ。鈴音、名前からして女だろうし柊と同じ遺伝子が組み込まれているのならきっとかわいいんだろう。


「参考までにその鈴音さんという方がどんな人か教えてくれませんか?」

『そうだな。私の考えだと、面白いこと、新しいことに敏感ですぐに飛びつくような人かな』

「織田信長みたいな人ですね。鈴音さんってもしかして大人の方なんですか?」

『ああ、その通りだ。だが、さすがに戦国武将ではないが声優の仕事をしているぞ』

「え!? 声優ってもしかして、もしかしてですけど鈴音さんの苗字って”岡田”ですか?」


 恐る恐る聞いてみる。岡田鈴音。それは俺がこの世で最も好きなアニメ声優の名前だ。その人の歌っているアルバムも全て購入済みだし、岡田さんが出ているラジオ番組、生放送も全てマークしている。


『なんだ知ってたのか。もしかしてそんなに有名なのか——? と、すまない時間が来たようだ。ええと、

では椎名に伝言よろしく頼む!』

「え、ちょっと待ってください。もしもしー? って通話切れてるし……」 


「あーもう! 俺も色々岡田さんのことについて聞きたかったのに! てかどうしよう。そのパーティーに岡田さんが来るって……やべ、鼻血が出てきた」


 色々と刺激の強すぎる通話だった。時間にするとそこまでかかっていないのだけれど十分俺の脳内の情報処理班が過労死するレベルの内容の濃ゆさだ。

 ティッシュを取り出して鼻につめる。5分もあれば止まるぐらいの出血量だ。

 ……なんか色々と疲れた。こんな時は甘い物を食べて脳に糖分を送るのがいいらしいが、生憎近くに手ごろなお菓子は見つからない。ならば


「寝るか。起きてから雄二に伝えよう」


 最強の休息方法、それは睡眠。というわけで俺はベッドに思いっきりダイブするのであった。


 目を瞑る。雨の音が若干耳に飛び込んでくる。


「雨の日だってあたしゃ働く! いつも通りのジジイは楽々! それでも孫の笑顔見たさに毎日頑張る!」 

 そんなラップが聞こえた直後、俺の意識は睡眠という深海に沈んでいた。浮上するのは何時間後か。 

 ちなみに自分の中での声優、岡田鈴音さんのイメージは悠木碧さんでした。別に新しい物好きとか聞いたことないんですけどただ単に一番好きな声優なので。因みに私が実際に悠木さんと会うとなったら間違いなく一定の距離を置いてしまうでしょうね。緊張しすぎて会話どころじゃない気がします。


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