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六十一話 道具屋のおっさん、初体験する。


「ただいまー……あれ? モルネト君……?」


 店の中で待っていると、オルグが帰ってきた。


 今日は性奴隷フレンドたちには奥に隠れてもらって、俺一人でこいつを出迎えることにしたんだ。鬱陶しいとはいえこいつと接するのも最後だと思うと、たまには普通に会話したくもなる。


「ど、どうしたんだい? 久しぶりだね」


「ああ、久しぶりだな」


「今日凄い火事があったみたいだけど、まさか君の道具屋も燃えたからってここに来たのかい……?」


「いや……誉めに来たんだ」


「……え?」


「オルグ……お前の店の武器、どれも凄いなー」


 これは本心だ。俺の器の大きさってのを奴隷たちに見せつけるためでもあるが。


「も、モルネト君……ありがとう。なんだかおっきくなったね。まるで色んなことを経験してきたみたいだ……」


「……まあな」


 確かに色々経験しまくったから間違いではない。


「苦労は人をでっかくするからね……。特にあの迅雷剣なんて、凄いだろう?」


「ああ、凄いな」


 もう俺には必要ないと思って戻しておいたんだ。


「……って、君が手に持ってるのは、まさか……」


「ん? ああ、これね。やるよ」


 こいつもいらないしプレゼントしてやろう。もう拳だけで魔王も倒せそうだしな。


「……こ、これは……ひょひょ、氷結剣だ。紛れもない……。こ、こんな凄いものを……君が僕にくれるなんて……」


 オルグ、めっちゃ感動してるのか顔を震わせてる。


「……じ、実は僕にはエレネっていう妹がいて……」


「ん? そうだったのか」


「あ、ああ! 人見知りだけど、とっても可愛い子なんだ。君になら、嫁に出してもいいよ……」


「……」


 まさかこいつがこんなことを言い出すとは……。これがジーク・モルネトの魔力か……。




 ※※※




「モルネトさん、とっても格好良かったです……」


「……正直、濡れた……」


「私なんてもう、大洪水ですわよ……」


「こらこら、お前ら押すな。タイミング合わせるぞ」


「「「「ちゅー……」」」」


 クアドロプルキッスも慣れたものだ。


 早速神様のところに向かう。いつもの恥じらい芸を楽しんだらカードを返却し、最後のカードを引くつもりだ。一体、どんな効果なのか気になるのだ。神様は引いてはいけないと言っていたが、俺はジーク・モルネトだぞ。恐れるものなど何もありはしない……。


「――ホッホッホ。よう来たのぉ……」


 例の灯りが見えてからまもなく、怪しい笑みを浮かべた幼女が姿を現わす。


「あれ、神様……その恰好……」


 普通のローブを着ているだけだった。おかしなところがあるとすれば、肩がはだけていることくらいだ。


「おっと、サイズが大きすぎたの……」


 しかも俺に見られて恥ずかしそうに直そうとしている。若干わざとらしさはあるが、これ結構ポイント高いな。神様、恥じらいというものが遂にわかってきたか……。


「あああっ、ダメなのじゃぁ……」


「「「「なっ……」」」」


 俺たちの声が被るのも無理はなかった。ローブがずれ落ちて神様が全裸になったんだが、幼女に似つかわしくないアンダーヘアーがびっしりと生えていたのだ……。


「いやぁぁあんっ……」


「……」


 神様、ギャップ萌えまで入れてきたのか……。


「その通りじゃ。二重の仕掛けを施しとる。どうじゃ、勃起したか!?」


「……」


「なんじゃ。しとらんのか……って、何するんじゃ!?」


 俺は神様の背後に回ると、ナイフでヘアーを剃り始めた。


「ちょ、ちょっと、モルネト、やめんかい!」


「ダーメ」


「う、うぅ……恥ずかしいのじゃぁ……」


「それが本物の恥じらいだよ。ほーら、神様、綺麗つるつるになったよ」


「ちゅうするのじゃ……」


 神様、うっとりした顔で自分から唇を合わせてきた。もう俺のことが大好きなのを隠す気もないんだな……。


「「ちゅっちゅっ……」」


「「「じー……」」」


「「はっ……」」


 エレネ、リュリア、ミヤレスカに囲まれてしまっていた。もうこうなったらアレにチャレンジするしかないだろ。


「「「「「チュー」」」」」


 クインティプルキッスである。かなりぎこちなかったが、なんとかやれた。こりゃ練習が必要だな……。


 っと、そうだ。カードを返さないとな。


「ん? これはどういうことじゃ?」


「返すんだよ。もう俺には必要ないからな」


「ふむぅ……。まあいいわい。キスの続きじゃっ」


「ちょ、ちょっと待って。カードを……」


「へ? あれは引いてはいけないカードじゃぞ」


「俺なら大丈夫だから」


「い、いや、あれは決して――はっ……」


 よく見ると神様のお尻に挟み込んであった。


「ゲット!」


「だ、ダメじゃ! それだけはっ! あくまでも笑わせるために飾っておったのに!」


「……え?」


 視界が一気に真っ白になっていく。なんだ? この感覚は。初体験だ……。

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