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六十話 道具屋のおっさん、良いことをする。


「おっ……」


 ダメ元で待ってたんだが、駅に馬車がやってきた。ん、窓のところが焼け落ちてるな。例の家族が降りてくるも、いつもと全然違ってどんよりしている。


「吾輩の可愛いリューク、しっかりするんだ……!」


「わたくしのリューク、しっかりするザマス……」


「……う、うぅ……」


 どうやらデブガキが重傷の様子。包帯で頭をぐるぐる巻きにしてるし、多分アルタスの放った火の玉に巻き込まれた形なんだろう。


 今まで散々殲滅しといてあれだが、そこそこ愛着も湧いたからな。たまには助けてやるか……。


「ミヤレスカ、デブガキに特別なヒールをしておやりなさい」


「あ、はいですわ! エクストラヒールッ!」


「――……う? とーちゃん、かーちゃん……」


「「おおっ」」


 デブガキが目覚めて両親が喜んでいる。


「吾輩の息子を治していただいてありがとうございます……って、あなたはよく見たら僧侶ミヤレスカ様ではないですか!?」


「ほ、本当ザマスか!?」


 シルクハットと片眼鏡がよく似合う父親と、化粧の濃い縦ロールヘアの母親がミヤレスカに顔を近付けている。二人とも視力が滅法悪そうだな……。


「ですわよー」


「「では勇者様ご一行!?」」


「ああ、そうだ」


 まあいいや。俺たちが勇者パーティーってことでなんの問題もないだろう。そもそもクリスたちだって偽勇者パーティーだったわけだからな……。


「おっす、オラが勇者クリス、そこのハーフエルフが戦士ライラ、んでちょっとガキっぽい兎耳の子が魔術師アルタス、最後にみんなのアイドル僧侶ミヤレスカってわけだ」


「「「おおおっ……」」」


 家族三人、目を輝かせてる。こいつらを見てるとつい殲滅したくなるが我慢我慢……。


 歯軋りしながらやつらを見送ったあと、俺たちは馬車に乗り込んだ。最後の最後までしつこく手を振ってくるから、しまいにゃ殺そうかと思ったが、もうループしないから我慢してやったんだ。


「おい御者の爺さん、武器屋『インフィニティ・ウェポン』へ急げ! あと、これ飲め!」


 エリクサーを爺さんに無理矢理飲ませる。ループから外れるからこれ一回きりだが、どうせこんなの持ってたって使わないしな。


「ごくっごくっ……! う……うおおおおぉぉぉぉおおおお! ハイヤアアアァァァァアアアアアアッ!」


 相変わらず良い飛ばしっぷりだ。


「……今日のモルネトさん、なんだか優しいですね。善人さんです……」


「……あぁ? 善人だと……? ファッキュー、ぶち殺すぞウサビッチ……」


「ご、ごめんなしゃいっ……」


 俺が拳をゆっくり頬にめり込ませてやると、エレネは途端に目をトロンとさせた。こっちも好きでやってるわけじゃないからな。たまには善行をしとかないと、また善人モルネトが騒ぎ始める可能性もある……。


「モルネトどのには何か深い考えがおありなのだ、エレネどの……」


「はぃ、リュリアさん……」


「ああ、リュリアはちゃんとわかってるな」


「「ちゅうぅ……」」


「うぅ……」


 リュリアとのキスをエレネがじっと羨ましそうに見てる。これも教育プレイの一環なのだ。


「ほら、ミヤレスカ。お前にも俺の唇をやろう」


「嬉しいですわ……」


「「ちゅー……」」


「……ぐすっ。ひっく……」


 とうとうエレネが泣き始めた。


「酷いです……モルネトさん……私も欲しいです……」


「……しゃあねえなあ。じゃあやるよ」


「……はぃ」


「「ちゅううぅぅぅうう……」」


 エレネのやつが放してくれない。まったく、とんだウサビッチだ……。


「――着きましたじゃ!」


「お、さすが早いな」


「元気ムンムンですじゃああぁぁ!」


 ……御者の爺さん、見事に勃起してるな。ズボンが破れそうだ。


「おい、お前ら、爺さんの頬にキスしてやれ」


「「「ちゅっ!」」」


「……ふぉ、フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッ! みなぎってきたあぁああああ! ナンパしてきますじゃあああああぁぁあぁぁぁぁああぁあ!」


「……」


 爺さん、鼻血を噴き出したかと思うと、辛抱堪らんといった様子で馬車を出したわけだが、元気いいなあ……。

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