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二十二話 道具屋のおっさん、やる気がUPする。


 ステータスカードで自分のレベルが見えるようになって、俄然やる気がUPした。


 しかも現在の経験値や、あとどれくらいでレベルが上がるのかも調べると出てきたからな。ちなみに経験値は95%の状態だった。多分、あと5%稼げばレベルが3から4に上がるってことじゃないか?


 この程度ならあの雑魚兵士をぶっ殺せば上がりそうだ。一晩中エレネと愛し合うのもいいが、その前に1つでも上げておきたい。体力が上がればその分ハードなエッチも楽しめるわけだからな。


「コヒュー、ヒュー……」


「エレネ……大丈夫か?」


「……だ、だいじょぶでしゅ……ヒュー……」


「……」


 ボコボコになってるし鼻血もダラダラだし、全然大丈夫そうじゃないんだよなあ……。でも満足そうだからいっか。俺がドMの素質を引き出してやったんだから、こいつにしてみたら感謝してもしきれないくらいだろう。


 ――早速夜の町に繰り出したわけだが、すぐに見回りの兵士に見つかった。まああいつが出てくるルートを選んだからだが。


「おい、お前たち――ぎゃあああ!」


 俺たちに近寄ってきた正義マンの兵士が電撃で気絶する。


「……エレネ、よく見てろ」


「はい……」


 迅雷の剣を振り下ろすと、いつもの赤い噴水が出てきて心が洗われるようだった。エレネも慣れたのか穏やかな表情で眺めている。


「綺麗だなぁ、エレネ」


「ですねぇ……あ、レベル上がりましたよ、モルネトさん」


「お、そうか。これでめでたくレベル4だな」


 ステータスカードはエレネに持たせてあるんだ。このカードだけなら俺に対する反乱も起こせないだろうしな。それで俺のほうを見て片方だけ口角が上がっている。また変な情報を覗いてそうだ。まあこれくらいの我儘ならいいだろう。


「レベルUPおめです。ちゅー……」


「ありー。ブチュッ」


 祝福のディープキスを済ませて、俺たちは道具屋へと戻っていった。歩くのが面倒なので死に戻ろうかとも思ったが、痛いのはなるべく避けたいしな。




 ※※※




 道具屋に帰ってきた途端、息子が暴れ出した。わかってるなこいつ……。


「さー、エレネ。楽しもうか」


「そうですね。外に出て冷えたことですし……」


「妙な言い訳をするな! スケベしたいからすると言え!」


「……は、はい。私はスケベなのでエッチしたいです……」


「それでいいんだ」


 エレネと一緒に服を脱ごうとしたとき、何やら周囲が騒がしくなってきて止めた。なんだ? まさか勇者パーティー? でもまだ深夜だし、やつらが来るはずが……。


「エレネ、外を見てきてくれ」


「あ、はい」


 まったく、せっかくこれからってときに……。ここから外の様子を見られりゃいいんだが、この部屋は狭くて汚い上に窓すらないからな。まあ元々倉庫だったのを無理矢理寝室にしただけだし……。


「――たっ、大変です!」


「ど、どうした? エレネ……まさか、本当に勇者パーティー?」


「い、いえっ、兵士さんたちがいっぱい……」


「……な、なんだと!?」


 頭を伏せつつカウンターのほうに向かい、そっと窓を覗く。


「……なっ……」


 エレネの言う通りだ。完全武装した兵士たちに囲まれている。今にも突入してきそうな勢いだ……。てかこれ、何人いるんだ? ざっと見渡しても、軽く100人以上はいる感じだ……。道具屋のおっさんに対してここまでやるのか……。


「ど、どうしましょう、モルネトさん……」


 エレネ、声は震えてるがそこまで怯えてないな。まあ俺のほうが怖いし、それにいつでも死に戻りできるからだろう。


「兵士を殺したのがバレたっぽいな。でもなんで俺だと……」


「……誰かに見られてたんでしょうか……」


「その可能性が高そうだな……ん?」


 ふと迅雷剣の先に目をやると真っ赤になっているのがわかった。


「……まさか……」


 入口から俺が歩いた方向にかけてよく見ると血の跡が点々と続いていた。やっぱり……。


「どうやら、血の跡を追いかけてきたっぽいな」


「……みたいですね。どうしましょう……」


「……わかってるだろ、エレネ」


「自害ですか?」


「いや、ちょうどいい機会だ」


「ま、まさか……」


「おう。オラ……夜のモンスターや勇者パーティーはまだこえぇけどよ、兵士なんて何人集まろうとちっとも怖かねえんだよ。パパッと皆殺しにして経験値稼いでやっからよ、楽しみにしててくれよな!」


「はい……ちゅー……」


「ブチュッ」


 今ではエレネのほうからキスをねだることが多くなってきた。それだけ俺の魅力が存分に伝わっていることの証明だろう。

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