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二十話 道具屋のおっさん、デレツン幼女と出会う。


「ただい――ぎゃああぁぁっ!」


 エレネの兄、オルグの悲鳴が武器屋内にこだまする。


 即退場してもらったのは、もう人質作戦も飽きたし、迅雷剣はこっちにあるからだ。何よりこいつの声は聞くのも癪だからもっと早く電撃を食らわせるべきだったと後悔したくらいだ。


 兵士を殺したことで俺のレベルも少しは上がったのか、前より効いてるっぽい。やたらと焦げ臭いし息も絶え絶えだ。とはいえ、こいつが即死するくらいじゃないとあのハーフエルフを相手にするのは厳しそうだ。


「さあ、エレネ、行こうか」


「はいっ」


 エレネと仲良く手をつないで神様のところに出発だ。今日はあの爺さんからどんなカードが貰えるのかなあ。


 ……あ、そうだ。神様、俺のために美少女になってくれるんだっけ? 一体どんな子かなあ。実に楽しみだ……。


「あ、あの、モルネトさん……」


「……あ?」


「ちゅーは……」


「したいのか? 兄があんな状態になったってのに、お前というやつは……」


「う、うぅ……」


 とうとうエレネのほうからキスのおねだりだ。ライバルが増えることに対する不安を敏感に感じ取ったのかもな。さすがは年頃の女の子といったところか。


「ど……どうせループして元に戻りますしっ」


「まあな。エレネ、俺とキスしたいならお前のほうから来い!」


「……は、はい……」


 エレネのやつ、思いっ切り背伸びしちゃって。そんなに俺とチューしたいのか。よし、少しだけ屈んでやろう……。


「「――ちゅー……」」


 汚っさんとのキスなのにうっとりしてやがる。人生、こんなものなのだよ。善人モルネトのままだったらこんなことはありえなかった……。




 ※※※




 いつもの時間、いつもの道、深い霧の中を俺とエレネは歩いていた。ちなみにもう手はつないでない。神様が嫉妬すると面倒だからな……。


 ――お、見えてきた見えてきた。いつもの灯りが……。


「うっす、神様ー、カード……いや、会いにきたよ!」


「神様、こんばんは!」


「……おう、よく来たの」


「「なっ!?」」


 並べられたカードの前にいたのは、青い長髪の美少女……いや、幼女だった。


 確かに可愛いが……幼すぎるし、いつもと同じ小汚い恰好だった。ホームレスの爺さんからそのままあどけない女の子に変わった感じだ。


「どうじゃ? 早速わしに惚れたか? 変態モルネトよ!」


「……」


「な、なんじゃ? 何か不満そうだの……」


「……」


「……そ、そうか。ドがつくほど変態じゃから、わしの裸が見たいんじゃな。それなら見せてやるぞい!」


 ためらいもなく全裸になる神様。


「どうじゃ! お主の好きそうなツルペタというやつじゃ! わしも研究しておる。興奮してヤろうと思ってもまだ入らんぞ! ホッホッホ!」


「……」


「……な、なんなんじゃ。モルネト、その冷たい眼差しは……。わしの何が不満だというんじゃ……」


「神様……そこは、もっと恥ずかしがるべきだろ……なあ、エレネ」


「そ、そうですねっ。神様、女の子は恥じらいも大事ですよ」


「……う、うーむ。変態を少々あなどっておったか……」


 裸になればいいってもんじゃないし、いくらなんでも見た目が幼すぎるだろ……。神様のくせにわかってないなあ……。


「聞こえとるぞ、モルネト……。わしだって知らぬこともある……」


「あ……」


 ぷくっと頬を膨らませる神様。そうだ、心が読めるんだったな。なんせ見た目がこれだし……。


「神様ってツンデレっぽいから、ツインテールの髪型にしたほうがいいな」


「ふむ? ツインテールとはなんじゃ?」


「エレネ、頼む」


「はい、神様、じっとしててくださいね」


「わ、わかったのじゃ……」


 ……お、大分様になってきたな。


「そ、そうか。照れるのっ」


「いちいち心を読むんじゃない」


「め、メンゴ……」


 ……頬なんか染めちゃって。既にデレデレかもしれない。


「あ、そうだ。神様、時間がない。カードを……」


「……ふんっ。どうせカード目的なんじゃろ! バカッ!」


 ここでツンかよ……。じゃあデレツンだな。


「神様、頼むよ。そこは、空気読んで……」


「……知らないのじゃっ。とっとと引けばいいんじゃ……!」


「「……」」


 エレネと向かい合って苦笑する。


「とりあえず時間もないし引こうか」


「そうですね、次はどんなカードでしょう……」


「……エレネ、どさくさに紛れて先に引こうとするなって」


「……ふ、ふふ……」


 まったく、エレネは油断も隙もない。


「神様神様っ、引いたよ!」


 神様にカードを向ける。説明を聞かないと困るからな。


「……いいんじゃいいんじゃ、わしなんか。ただのカードの売り子か説明係なんじゃ。バカァ……!」


 背中向けて座り込んで……地面を指で弄ってすっかりいじけちゃってる。人間臭い神様だな。


「人間臭くて悪かったのっ。わしは昔から人間観察が好きじゃから……おっ、それは……なかなかのもんじゃの……」


 振り返った神様の反応から判断するに、悪いカードじゃなさそうだな。


 ……って、視界が切り替わっていく。結局説明は聞かずじまいだったが、まあいいか……。

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