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十四話 道具屋のおっさん、ポーションを作る。


「ごべんらさい……」


 エレネのやつ、ボコボコなせいかめっちゃ喋りにくそうだが全部こいつの自業自得なんだよなあ。恩をあだで返しやがって豚が。正直まだ殴り足らないくらいだが、これ以上やると本当に死にそうだから我慢してやってるんだ。あー、こんなに何度も裏切るクソッタレを許してやるなんて、優しいな俺って。お涙頂戴ポロリだ。今流行りの感動ポルノってやつかな。


「まあ許してやるよ。俺は世界一優しいからな」


「ありがとうごらいましゅ……」


「んじゃ、無限のカードと迅雷剣、とっとと返してもらおうか」


「あにょ……迅雷剣は、わたひの武器屋にもどひました……カードは……あるぇ?」


「なるほどな。あの剣はお前の兄が大事にしてたものだしな。兄思いの妹だなあ」


「……カード……カード……」


「まああんな自慢糞野郎でも兄だしなあ……っておい、コラ。また逃げようとしてたろ、エレネ!」


「い、いえ。カードがにゃかったから、どくぉにいったのかにゃあって……そるぇで探しょうっておぼって……」


「脱げ」


「……へ?」


「確認してやるからここで今すぐ全部脱げってんだボケナスッ!」


「……ひゃい」


「……隠すな!」


「あうぅ……」


 ……痣だらけだが、なかなかいい。それが却って味になっている。てかこうしてよく見るとほんっとガキらしく貧相な体してんなあ。胸ぺったんこ……ペェペン……。ヤッベ! 勃起しちゃった!


「……コホン」


 っそれどころじゃない。カードだ。無限のカードはどこだ……?


「おい、股を開け!」

「ぅう……」


 体の至るところを確認したが、ない。どこにもない。


「お前、まさかなくしたんじゃないだろうな?」


「……そうみたいれふ……ごめんなしゃい……」


 涙をポロポロと流すエレネ。ふざけんじゃねえよ。泣いたらなんだってんだよオイ。


「泣けば許してくれるとでも思ってんのか? コラ」


「……許してくだしゃい。痛いのはもうひゃだ……」


「……そもそもよー、てめえが逃げたからだろうがオイ、ゴミクズ。マジで殺すぞお前」


「……ぎっ……」


 全裸のまま髪を掴んで持ち上げてやる。軽いなあコイツ。


「いだいいぃ……だじゅげで……殺さにゃいで……」


「とりあえず一緒に探すぞ」


「ひゃ、ひゃい」


「っと、その前にお前の俎板でぺぇじゅりしてからな。もうガチで我慢の限界だ……」


「……ひゃい? ぺぇじゅりってなんでしゅか?」


「今にわかるよ。イツデモキノコー!(ダミ声」


 ボロンッ。とっておきの秘密道具を取り出す。


「ひっ……」


 道具屋らしく最高のアイテムの一つを出してやった。これを磨けば、自身の体力と引き換えに自他ともに気持ちよくするポーションが出てくるんだ。ちなみに栄養価も高い。


「さー自家製ポーション作ろうねえ……まずイツデモキノコに刺激を与えねば……」


「……あ、あぅ、うぅ……くすぐったいです……」


「お、おおっ、我慢しろ! もうすぐ完成する!」


「や、やぁ……」


「く、来る……来るぞぉ……完成だあぁっ!」




 ※※※




「……ふぅ。いっぱい白ポーション作って疲れた……」


「……あぅ。体中びしょびしょです……それに……変なにおい……」


「なあに、すぐ慣れる。ほら、ついでに俺の唇も受け取れ! チュー」


「ちゅうぅ……」


 すっきりしたこともあり、早速嫁のエレネと一緒にカード探しに出かけたわけだが、どこにも見当たらない。


 まずいなあ。あれがないと一日がループしないってことで、死んだらそこでおしまいってことになる。何よりまずいのは勇者に道具屋を滅茶苦茶にされる未来が変わらないってこと。いずれはあいつらをぶっ殺してやりたいし、やつらとの圧倒的な戦力の差を俺みてえな底辺道具屋が埋めていくためには必須のカードなんだ。


「エレネ、どこの道を通ったかよく思い出せ。お前の命なんかよりもずっと大事なものなんだぞ」


「は、はい……」


「見つけられなかったらわかってるよな」


「……殺すんですか?」


「当たりめえだろ。それもよー、じわじわ苦しめて殺してやっからよー、覚悟しろやクソブタ」


「……さ、探します、絶対、絶対……」


 従順ないい目だ。女の子はこうでなくっちゃな。


「でも……ちゃんとここに入れておいたはずなんですが……」


 エレネが自分の服の真ん中についた大きなポケットを覗き込んでいる。確かにこれじゃ落としようがないな。


「どこかで転んだんじゃないのか?」


「いえ、それはないはずです」


「……うーん」


 何か大きく体勢が乱れるようなことはなかったらしい。


「誰かとすれ違ったか? まさかあの勇者パーティーの誰かに盗られたんじゃ?」


 考えうる最悪の展開なんだよな。それだと……。


「いえ、近寄るのも恐れ多い方々でしたから、触れ合ってもいないですし……」


「……うーん。あ……」


 俺は占いのカードを取り出した。これって占いのカードなんだし30分後の未来だけじゃなくて30分前の過去も見られるんじゃないか?


「モルネトさん、それはなんでしょうか?」


「これはな、自身の行く末を占えるカードなんだ……」


 おっと、言ってしまった。少々軽はずみだったが、まあ俺の嫁だしいいだろう。あれだけボコボコにしたわけで、当分俺には逆らえないはずだしな。


「わー、欲しいですね」


「やらんぞ」


「うぅ……。じゃあ、私が落としたカードはなんの効果だったんです?」


「一日をループする能力さ」


「わー」


「やらんぞ」


「うぅ……」


 カードでペシペシとエレネの頬をビンタしてやる。札束ビンタみたいなもんだ。……っと、それどころじゃないな。30分前の過去を占ってみよう。


「ちょっとだけ貸してやるから、これで30分前の自分を想像してみろ。おでこにつけるんだぞ」


「あ、はい」


 エレネがカードをおでこにつけて占ってる。腫れも引いてきたこともあってかなり可愛い。いかん。またムクムクッとしてきた……。


「あ……!」


「どうした?」


「モルネトさん、裏路地に戻りましょう!」


「裏路地?」


 走るエレネの背中を追いかける。


「お前、逃げたら今度こそぶち殺すからな!」


「わかってます……」


 裏路地に入り、エレネが向かったのは俺がボコボコにした場所だった。


「――あ、ありましたぁ!」


「お……」


 エレネが無限のカードを掲げている。


「なんでこんなところに……」


「あ、あの、私がモルネトさんに殴られてる最中に落としちゃったみたいです……」


「……」


 二人で大笑いした。まあ俺が殴ったのが原因とはいえ、こいつが120%悪いのに変わりはない。というわけで、懺悔としてまた全部脱がせてお仕置きしてやろう……。

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