61話 自宅
「ここは…」
目を覚ますと、床に転がっていた。見慣れたフローリングの床でひんやりとしている。体を起こし周りを見るとそこは見慣れた自分の部屋だった。外は暗く室内もぼんやりと見えるくらいだったのでまずは明かりをつけた。
「もしかして戻ってこれた…のか?」
ポケットからスマホを取り出し今の日付を確認しようとする。だが電源が切れていてわからなかった。とりあえずスマホは充電器にかけ、テレビをつけて今の時間と日付を確認することにした。
画面から流れてくる情報を見つつデジタル機能を操作し日付と時間を呼び出す。どうやら今は夜の8時くらいのようだ。日付は…3日ほどしか過ぎていないようだ。
この家には今直人しか住んでいない。両親を亡くし親戚とかに呼ばれはしたがどうせ数年で働くようにもなる。たまに親戚のおばさんとかが様子を見に来てくれている。それなので3日くらいいなくても誰も気がつかなかっただろう。
「と言うか明日金曜だから学校があるじゃないか…」
そこで気がついたのだが、服装や持ち物が先ほどまでと変わらないことだ。転移に使用した腕輪を身につけている。使用してみようとするが機能しなかった。もちろん『ディメンションウォール』も使えない。どうやら魔力がこの世界にはないらしい。腕輪を持っているいじょう夢ではなかったと言うことなのだが、召喚獣達はどうなっているんだろうかが気になるところだ。
「でも使えないからしかたないよな…」
結局お礼もしないまま帰ってきてしまったのでそこが気がかりだが、今となっては後の祭りだ。それにどうやら向こうとは時間の流れも違うようだ。感覚としてだが1ヶ月は立っている。だがこちらでは3日。
「もういいや風呂入って寝よう。」
風呂に入り久々に自分のベッドに倒れこんだ直人は一瞬で寝てしまったようで、すぐに寝息を立て始めた。異世界での生活に疲れていたのかその日は夢も見なかった。
朝の日差しを感じながら目を覚ます。ちゃんと自分の部屋にいるのを確認する。帰ってきたいじょう学校に今日は行く必要がある。冷蔵庫をあけ何か食べれるものがないか探すが、流石になかった。だめになってるもののほうが多い。
「コンビニでもよってくか。」
制服に着替え鞄を持つ。外に出ると日差しが強く、朝だというのにすでに暑くなり始めていた。
「そういえばあと少しで夏休みか。」
今日は7月14日。10日が直人の誕生日だった。後1週間もすれば夏休みがやってくる。コンビニに着いたので何を食べようか物色する。今までどおりパンにしようかと手を伸ばしかけたがやめた。結局選んだのはおにぎりだ。しばらく米を食べていなかったことに気がついたからだ。
「うん…やっぱ米は必要だよね。」
店の外で食べつつそんな独り言をはく。
「なんだそれ?」
「ん…おはよう。」
「おはようじゃないよ…3日も何してたんだ?」
「んー…まあ色々?」
話しかけてきた男の子は同じクラスの友達で児島雄彦。いわゆる幼馴染というやつで小さいころから学校も同じだ。まあ高校も同じになるかはわからないが。
おにぎりを食べ終わり2人で学校に向かう。学校に近づくにつれ学生の姿が増え始める。門をくぐり2人はいつものように教室に向かう。
教室のドアを開けると数人すでにいてこちらを見ている。興味をなくし視線を戻す人や逆にじっと見てくる人、ちらちらと何度も見直す人などがいる。こっちを見ている人はよほど3日も休んだことが気になっているのだろうか…
自分の席に着いた直人はとりあえず荷物を取り出し鞄をしまう。するとすぐにさっきの男の子が再び声をかけてきた。
「で…色々ってなにさ?」
「ん?色々…?」
「3日何してたのかって話だよ。」
「ああ…んー…なあ、たけは異世界とか信じるか?」
直人の言葉に雄彦は一瞬戸惑ってしまう。いきなり異世界とか言われて信じる人はいないだろう。
「なんだ~まさか異世界言ってましたとか言わないよな?」
「いや、そのまさかなんだけどさ……」
「………ラノベの読みすぎじゃね?」
「やっぱりそう言われるか。」
「証拠があったら信じてやるよ。」
「証拠ね~…」
そこで先生がきたので話は終わってしまった。授業は相変わらず退屈で、アクビをかみ締めながら話を聞いている。ほんとつくづつ何の役に立つのかわからない勉強が多いことで、直人も話半分くらいしか聞いていない。
1日が過ぎるのはあっという間で気がついたらもう授業が全部終わっていた。半分ほど寝ていたからそう感じただけかもしれない。
「なあ直人明日家行っていいか?」
「ん、何泊まるの?」
「ああ、夜中までゲームしようぜ!」
「いいけど…ちゃんと許可取ってきてよ?」
言うことだけ言うと雄彦は部活へ行ってしまった。ちなみに直人は帰宅部で何もやっていない。今からは買い物して帰らないと夕食もないレベルだ。それに雄彦も泊まりにくるなら余分に色々用意しないといけないだろう。
荷物をまとめると直人は学校を後にし、商店街へと足を運んだ。