45話 祭り1日目3
早々と店を切り上げた直人たちは残り時間祭りを楽しむことにした。もちろん明日のこともあるので移動しながらも鎖だけは常時作りつつ『ディメンションウォール』に放り込むのを忘れない。
そういえば宿の食事と自分で魔物からドロップしたアイテムくらいしか食べたことがないな…
「ネネ、クラスタ、祭りのお勧めの食べ物とかあるか?」
「食べ物は、もちろん、全、制、覇っ」
「そうですね…私は甘いもの全般がお勧めだと思います。」
出店を見て歩くとダンジョンで取れたアイテムがそのまま売られている店、普通に畑や家畜などで手に入れた材料で作られている店がある。そんな食べ物の店を横目でみつつ歩いていると変わった店を見つけた。
「…スライムルーレット??」
どんな店だ…
店の人に説明を聞くとロープで縛られたスライムがうろついているからそこから1匹選んで攻撃し、ドロップしたアイテムで勝負をするものらしい。もちろん勝負する相手は店の人とだ。運の要素がかなり左右されそうなゲームだ。というかスライムをこんな店に出すとかよく許可されたもんだなとは思う。
「うにゅにゅっ、かふぇふ、しゃな?」
いつの間にか買い食いしていたネネが何か言っているがはっきり言ってまったくわからない。
「口を空にしてから言ってくれ…」
「…んっく。初心者、勝てる、かも?…と言った。」
よく直人のドロップアイテムを見ていたネネはどうやらやって見せろと言っているようだ。
「ふむ…でもこれ勝ったら何があるんだ?」
「おっお兄さんやるのかい?勝っても負けても景品はあるよー」
「景品?」
「負けたら参加賞でスライムのドロップアイテム。勝ったらこの珍しい『サイダー』という飲み物だよーっ」
「……他いくか。」
そもそもそのサイダーはおもに直人がギルドに売りつけたものだ。珍しくもなんともない。
「ちょっとおにーさんーさては負けるのが怖いね?」
「…1つ聞くけど勝った場合スライムが出したアイテムはどうなるんだい?」
「ああ、もちろんそれもあげるよーどうだいやってみないか?」
直人は大きなため息を1つついた。
「ネネサイダー飲むか?」
「ん、喉、渇いた、かも。」
「じゃあやるよ…」
「まいどーっ銅貨5枚ね!」
ぼったくりだな…まあ買い取ったままの値段なわけがないか…
お金を払い武器を1つ渡される。どうやらこの武器でスライムを狩るらしい。
「じゃあおにーさんこっちからえらぶよー」
店の男はピーチスライムを選び攻撃した。ドロップしたアイテムは桃だ。直人はそれを見てからわざわざブルースライムを選んで攻撃した。
「おにーさん…ブルーじゃピーチにはかなわないだろう…?」
「ん?よくみてみろよ…」
ブルースライムを倒した後にはペットボトルが2本と青い石が転がっている。
「…なっなんだってーーーーっ!」
もちろん水とサイダーのペットボトルだ。
「じゃっもらっていくから。」
ドロップアイテムを拾い、店においてあるサイダーも1本もらい直人たちは店を後にした。
「ほい、ネネ。」
「ん…」
「クラスタも。」
「ありがとうございます。」
「飲み物確保したしさて…なに食べますかね。」
再び飲食店の物色を始める直人達であった…
「おや…?」
「どうしちゃの?」
「いや、直人いないね~」
テンタチィオネとサラキアは人をまいた後、再び直人がいる露店へ顔を出しに来た。だがすでに直人たちは商品を売り切り、祭りを楽しむために店を離れていたのだ。
「あら…どこいっちゃのかしりゃ?」
「まあいいか、今度は邪魔されずにデートといきますか…?」
「ん、そうしゅりゅ~」
2人は再び祭りの人込みの中へと向かおうとした。
「おや、そこにいるのはテンタチィオネ様じゃないですか?」
その場を立ち去ろうとしたところ露店を出している男に声をかけられた。直人が一緒に店を出していたラスティンである。
「…そうですがあなたは?」
「はい、魔法道具店を経営しております。ラスティンと申します。」
「あー直人が世話になっている店の店主か。」
「おや、ナオトをご存知で。」
「まあ、遠い血縁者ってところだからな。」
遠い血縁者。ある意味間違ってはいない。
「なるほど道理で…」
「……ん?」
「いやーナオトの作る魔法具というかアクセサリーというかがかなりいい出来で、血縁者ときき納得しました。今日はもう売切れてしまって本人は出歩いています。」
「あーそれでいなかったんですね。…よし、せっかく直人が世話になっているし。何か1つ買っていくか。」
「ありがとうございます!」
「サラ、何か欲しいものはあるかい?」
「んーちょ…あっ指輪。おそろいの指輪かお?」
「指輪か…この辺りとかどうだい?」
「あっ!あれににてましゅね…うん。いいかも。」
2人は同じ指輪をそれぞれ手に取りラスティンにお金を払おうとした。
「いや、御代はいただけませんよ!」
「それじゃあ商売にならないだろう?……じゃあその腕輪に付与を付けてあげようか。」
「これにですか?」
そういうとテンタチィオネはラスティンの腕輪に付与を施した。直人の知らないところで親子の合作作品が生まれた瞬間である。