40話 商品登録
商人ギルドの中に入ると前に来たときより人で賑わっていた。祭りが近いこともあり、出店の登録に来ている者、その祭りの打ち合わせをしている人などがいるよだうだ。
「すみませーん。」
その人たちを横目で見ながらカウンターの人に声をかける。今日は男の人が立っているようだ。
「はい、ご用件をどうぞ。」
「えーと商品の登録?をしたいのですが。」
「あーはいはい。何か新しいかもしれないものでも作られたのですね。」
ひどいなおい。かもしれないとか普通いうか?
「では一度拝見しますので、出していただけますか?」
「ここでですか…?」
「どうせたいしたものではないでしょう?」
「…は?」
いやいやいや…受付の態度としてどうなのよこれ。登録に来ているのにたくさんの人の前で出せというのもおかしいけど、見もせずに決めつけるとかこの人の頭がどうなってるのか知りたいわ。
直人が中々出さず変な顔をしていたせいか受付の男は目つきが厳しくなってくる。
「あなたね…登録にきたのでしょう?いい加減さっさと出したらどうなんだっ」
「……おっさんほんとにここの人?」
「なっ…人を馬鹿にするために来たのか!?」
ばんっとカウンターを叩き大きな声をだすその様子に、何事かと周りの人たちがちらちらこちらを伺っているのがわかる。
「いいですかっあなたも商人でしょう?新しい商品がそうポンポン出来るはずがないのです!だったら周りの目を気にせずまずは私に見せ、確認を取ってからでいいはずです!」
「じゃあ新しい商品だったらどうするんだ…っその場でまねられたら登録が意味なくなるんじゃないのか?」
「その通りだね~」
流石にうるさかったらしく一人の男性が話しに入ってきた。
「関係ない人は口を出さないでくださ……あっ」
「誰が関係ないのかな?」
…ん?どこかで見たことある人だ。
「ギルドマスター…」
「ああ、そうか商人のギルドマスターのテルトゥーナさん。」
「やあ、数日ぶりだねナオトくん?」
ニコニコとしながら直人のほうに向きなおす。
「何か新しい商品でももってきてくれたのかな?」
「あ、はい。そうなんですが…この人がこの場で見せろというので…」
「それは本当なのかい?」
テルトゥーナの顔から笑みが消えた。カウンターにいた男の顔が見る見る青ざめてくる。
「いや、あの…これは…こいつが、その…」
「どうやら私がいない間にすき放題な対応しているという話は本当だったようだね。」
パンパンッと両手でテルトゥーナが叩くと奥からここの職員だと思われる人が2名ほど出てきた。
「とりあえず反省室送りで。」
「「わかりましたっ」」
「はははははんせいしつっ?」
2人の男に両脇を固められ奥へと連れて行かれる。反省室がどのような場所なのかわからないが、この反応を見る限りあまりいい場所ではなさそうだ。
「さて、ナオトくん。変わりといっては何だが私が直接見ようじゃないか。」
「いいのですか?」
「むしろ見てみたいね。どんなものが出てくるのか楽しみだ。」
カウンターを他の人に頼むとテルトゥーナと直人は奥にある、相談用の部屋へと移動した。
女性が飲み物を用意し、2つ並べると部屋から出て行く。今机の上に飲み物が2つ、椅子は向かい合い直人とテルトゥーナが対峙している状態だ。
「ここならいいかな?まあ、普段この部屋で話しているわけなんだけどね。」
部屋をキョロキョロと見渡すとなにやらガラスのようなケースに入れられたものがいくつかある。その内の数個は今お世話になっている魔法道具店にも売られている商品のようだ。
「気になるかね…?」
「もしかして登録されるとその見本がここに飾られるんですか…?」
「その通りだよ。半年は保管され、その間他の人は作る許可が出ないんだ。」
「…ん?じゃあ半年たったら作ってもいいんですかね。」
「もちろんだよ。まあだからといって作れるかどうかはまた別の話だろう?作り方を公開しているわけではないからね。」
そりゃそうか…
「では、そろそろ見せていただこうかな?」
「はい、これです…」
机の上に鎖とパーツを5つ並べた。
「ふむ…どのようなものかなこれは。」
「えーと…多機能なアクセサリー兼魔法具です。」
「ほぅ…?」
首、腕、腰、足、と違う長さのもので付けられる事、パーツで効果を増やせる事、さらにヘアアクセにも出来ると話して説明をした。
「なんと…つまり好きな効果を1つの輪で好きなだけ付けられるということだな?」
「まあそうなんですが…買うとなるとばら売りなので、完成したときにどんな金額になるか見当もつかないですがね?」
「いやいや、そこは個人で予算と相談しながらすこしづづ増やせるのがいいんじゃないか?」
「あーそういう考え方も出来ますね。」
「いいだろう登録しよう。その場合こちらを預からせていただくことになるが、大丈夫だろうか?」
「はい、お願いします。あ、この見本腕輪サイズですが大丈夫ですかね?」
パーツを全部鎖につけてみているようだ。
「もちろんこれでいいよ。」
そういうとテルトゥーナは腕にはめた。
「…ん?そこにしまうのではなくつけるのですか??」
「ああ…お披露目しないと真似されるからね。これから同じアクセサリー関係と魔道具関係の店を回り見本を見せて歩くんだよ。」
「こんな忙しい時期にすみません…」
「いやいや、これが私の仕事でもあるからね。…でいつから販売されるんだい?」
「はい、祭りの出店に出すつもりです。」
「ほほーこれはこれは…祭り当日、人数増やしておいたほうがいいだろうね~」
「そうですか…?」
人を増やすほど売れる気はしないのだが…まあ珍しいもの好きとかが買うくらいじゃないのか?
そんなことを考えつつ、登録の件にお礼をいい店に帰ることになった。まだ午後の店番の仕事が残っているのだ戻らないわけにはいかないであろう…