33話 魔法具
「おはようございます。」
「あら、早いのね。」
魔法道具店を手伝うことになった直人は朝早くから店を訪れていた。開店準備でオルガが店先を掃除していたので声をかけた。
「でもちょうどよかったわ。今からおじいちゃんが材料の仕入れに向かうところなのよ。せっかくの男手なんだからしっかり働きなさいよねっ」
「おや、来ていたのかい。」
そこへちょうど仕入れに向かうためにおじいさんが外に出てきた。
「一緒に仕入れにいくかね?」
「はい、付き合います。ところで…僕まだおじいさんの名前聞いてなくてどう呼べばいいです?」
「はて、いってなかったかの…」
おじいさんの名前はラスティンというらしい。「やだ、おじいちゃんぼけちゃったの?」とかオルガがつぶやいていたがどうやら聞こえていなかったようだ。
そんなオルガは置いておきラスティンと直人は材料の仕入れに向かった。
「…ここですか?」
見覚えのある場所だ。それもそのはず今2人はダンジョン『フラカン』の入り口の前に来ている。
「いや、そこじゃない。」
『フラカン』の入り口を横切り崖に沿って下へ降りていった。一番下まで降りると岩を運んだり、岩場を崩している人などが忙しそうに動き回っている。
「ここは採掘場…か?」
「ダンジョンで出る装備などに付与するのもありだが、1から作るのもやはり必要だからね。」
「それだと好みな形で作れますね。」
「まあ、そういうことだよ。」
感心しながら近くの岩場を触ってみる。ほんのり暖かい気がする。
「岩って暖かいんだ…」
「暖かい…だと?ちょっとこっちを触ってみな。」
「冷たい…?」
何が違うんだ?首をひねって考えてみるがやっぱりわからない。
「おぅラスティン鉱石は用意してあるぜ。」
「ちょうどよかった、ナオトこちらはここの大元のノンジーだ。」
頭をさげ挨拶を交わす。ここの大元締めらしい。
「…で、だ。ノンジーここを見てくれ。」
さっき暖かいといった場所を確認するように指をさした。ノンジーはさされた場所をじっくりと眺めている。
「ん、こりゃ原石がおるな。」
原石っていうとたまに魔物からも落ちていたあれか…
「にいちゃん運がいいねー原石があれば魔法具もいいものが作れる。」
「へーそうなんですね~」
「まあなくても作れるけどなー」
そういえば以前クラスタが言っていた気がする…
直人が見つけたことで原石は少し安めに、あと鉱石類をいくつか買い取ったようだ。その鉱石類がかなりあり、木箱につめられているのだがかなり重たい。ラスティンが『ディメンションウォール』を開いたので3人がかりで木箱を移動した。
魔法道具店に戻ってくるとオルガが店を開けていた。
「おかえりっ」
「ああ、ただいま。早速工房にこもりたいのだが店番をそうだな…今日は先にオルガに頼むか。」
「わかったわ。ナオト後で交代ね。」
ラスティンとともに直人は工房に向かった。
「さて…『クリエイト』は使ったことあるか?」
「『ディメンションウォール』の中でだけならですがあります。」
「ふむ、一度見せてもらおうかな。」
「わかりました…あっちょっと中にぎやかですけど気にしないでください。」
『ディメンションウォール』を使い扉を出した。中に入ると召喚獣達が自由気ままにすごしていた。
「ほう…召喚魔法も使えるのかね。」
「使えるというか契約しかしてないんで…1?ですかね。」
「それにしてもやはりレベル10は広いなーで、『クリエイト』したのはどれだ?」
ラスティンは部屋の中を見回している。
「召喚獣とドロップ品以外は全部。」
1つづつ手で触りラスティンは状態を確認しているようだ。叩いて見たりひっくり返してみたり、匂いまでかいでいる。
「完成度が高いな…何か元となっている見本でもあるのか…?」
ひとしきり触りまくった後気が済んだようで立ち上がった。
「よし、工房に戻るぞ。」
工房に戻ってくると『クリエイト』を使った魔法具作りの指導が始まる。『ディメンションウォール』の中で使うより多めの魔力の消費があるそうでそのへんは気をつけなければいけないらしい。材料に向かい魔力を注ぎ、作りたい形を意識する。形が決定したらもう一度魔力を注ぐと付与がされるようだ。
「最初のうちは付与はランダムにしかつかない。いくつもやってみて付けられる付与の種類を頭に叩き込めっ」
話によるとつけたことがない付与は自由につけることが出来ないそうでまずはランダムでつけて覚える必要があるようだ。付与は再び魔力を注ぎなおすと上書きして元のものを削除できるらしい。
「まあ、まずは1つ形を作り付与の練習からだな。」
「そういえば原石ってどう使うんですか?」
「あー原石か…それを加工し装飾としてつけると効果が強くなるんだ。たとえば基礎能力を上げるもので速度1とかついているものにつけるとしよう。大体2~3に変化するな。」
「あともう1つ…原石の種類で何か変化とかあります?」
「んーたしかないな。あまり扱ったことがないんで、はっきりしないが。まあデザイン状好きな石使えばいいんじゃないかな。」
あまりにも原石のことを聞きすぎたらしく「何でそんなに聞くんだ?」という顔で作業の間もちらちらとこちらを見られていた。
とりあえずめいっぱい付与を試してみることにする。
「おっと、付与できたものメモっておけよ?そうしないとわからなくなるからな。」
……あぶないあぶないそのまま始めるところだったぜ。