20話 護衛依頼
「ところでナオト。妾は自分が夢の存在だとは思えないのだか?」
「夢じゃないといいたいんですか?」
「うむ。痛みや味覚、空腹感もあるのだろう?夢とは思えないな…」
「…………」
やはり現実ということになるのか……
「あぁー認めたくない〜っこんな現実!」
「諦めて『勇者』を全うしてくれ。」
現実は残酷であると直人は思った。つまりは魔王をなんとかしないと帰れないということが決定した。転移者である事を認めた瞬間である。
「さて、そうなるとお主たちはこれからどうするのだ?」
「直人の強化と地下都市でまた魔王にあって交渉とかですねー」
「ふむ、では王都のダンジョンで修行するがよい。冒険者ギルドで依頼受けるのも忘れるなよ。」
そう言うとアストレアは帰って行った。
終始黙っていたクラスタだったがアストレアが帰った途端口を開いた。
「王女様は中々騒がしい方ですね……」
「本人に言わないほうがいいぞ?」
3人で顔を見合わせ頷きあった。
次の日アストレアに言われたようにギルドに顔を出した。ギルドの作りはどこも同じようで扉をくぐり右の壁側に依頼書が貼ってある。依頼書を見るために壁側へ向かうと見知った顔があった。
「ネネ?」
「ん?初心者。」
ネネは凄く期待した眼差しを向けている。きっと変わった食べ物が目当てなのであろう。
「ここでネネに会うとは思わなかったよ。」
「ん。元々、ここに家があるから。」
それなら当たり前か。
「初心者達、は、依頼、受ける?」
「そう思って来たとこだよ。」
そんな会話をしながら依頼書を眺めていると、ギルド職員が話しかけてきた。
「ナオト様とテンタチィオネ様ですか?」
顔を見合わせ頷いた。
「そうだが何か?」
テンタチィオネはギルド職員を睨んだ。テンタチィオネに話かけるのはわからなくもないが、ナオトの名前が出るのがおかしいのである。
「あ、はいっある方から依頼がありまして、是非お二人に受けて欲しいと言われまして。」
ギルド職員はテンタチィオネの睨みが効いたのか一気に言い放った。
「ある方……」
嫌な予感しかしない。
「……で、依頼内容は?」
テンタチィオネも微妙な顔をしている。
「はい…ダンジョン内での護衛ですね。報酬は銀貨3枚です。」
「ちょっと報酬が高すぎないか?」
ギルド職員は依頼書をもう一度眺めて確認している。
「間違いないですねー。受けますか?」
「「「……」」」
「……?」
1人ネネは首を傾げている。依頼は受けないと後が怖そうだ。
「受けます…」
仕方なく依頼を受ける事にした。
依頼人が来るまでギルドのテーブルにつき飲み物を頼んだ。ネネも一緒に来るそうで、同じテーブルについていた。
「あれってやっぱり……」
「たぶんそうですよね…」
「もう諦めた。」
「ドロップ、楽しみ。」
1人全然関係ない事を言っているが待っている間、ダンジョン『フラカン』について話をしている事にした。
「フラカンって地下からだと翼竜と蝙蝠がいたとこだよね?」
直人の言葉にネネが反応した。
「翼竜!」
「ネネどうした?」
「おねーちゃん、石化したやつ、翼竜と、いた。聞いたっ」
「……」
つまりフラカンか石化を使った相手の可能性があるって事か……
テンタチィオネの方を見る。少し困った顔をしていた。フラカンはあまり会話をしたがるタイプではなかった。それは直人も一度会っているのでわかっている。
「何か、知って、る?」
「たぶん…だけどね?」
「どこに、いる?」
「ダンジョン『フラカン』の中というか最下層というか…さらに奥?」
「よく、わからない……」
ネネは困惑した顔をしている。
「おまたせーっ依頼人よ。驚いたかしら?」
そこへ丁度アストレアが現れた。3人はやっぱりかという顔をしている。今日は冒険者のような服装で護衛が1人ついていた。
「依頼人?」
「アストレア、どういうつもりですか?」
直人が呼び捨てにすると護衛が怒り出した。
「なっ姫様に向かって呼び捨てとは無礼な!」
「よいのだカイナ。妾がそう呼べと申した。」
「しかし…」
カイナと呼ばれた女性はいまいち納得していないようだった。
「姫様、なの?」
ネネは不思議そうに聞いてきた。
「ん?なんじゃこのチビ助は。こやつもいくのか?」
「む。ネネ、は、チビ助、じゃないっ」
「足手まといにならぬとよいがのー」
この2人は相性が悪そうだ。ダンジョンにまだ向かってすらいないのに火花が散っているようだ。
「えーと、ところでダンジョンに行く目的は?」
「特にないぞ。普通に皆で魔物狩りじゃ。おぬしもこれなら一緒に鍛えられるであろう?」
「なるほど。」
ただついて来るための口実だと言う事か。
「で、ダンジョン『フラカン』の場所はどこなんだ?」
総勢6名はダンジョン『フラカン』へ向かう事にした。