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よんじゅうよんこめ。
頭だけ立方体の先生が
目の前に立ってる
身体は真っ黒で
光を通さないようなスーツ姿
私に問いを投げかける
「どちらがいい?」
両手に炎
違いは色
赤と青
「どちらがいい?」
再び問いかけられる
「どっちでもいい、それより愛をちょうだい」
私は答えた
先生は少し考えて
こう言った
「今、愛の手持ちが少ないんだ」
先生はこう続けた
「これでいいかな?」
先生は私の手の甲にキスを一つ落とした
ぼーっとそれを眺めていると
私の手の甲から薔薇が一輪
黄色い薔薇が一輪
「これでどうだい?」
先生が最後に言葉を放つ
放った言葉は宙を舞い
私の薔薇の中へ
「ありがとう」
「どういたしまして」
「じゃあね」
「さよなら」
薔薇を千切って
さようなら




