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にじゅっこめ。
ゴポッっと音がして
僕は海の中に
目の前が真っ暗
嗚呼
これは水じゃない
これは絵の具
黒い絵の具
口の中に食べちゃダメだと主張するような
苦い感覚が広がっていく
「夢に味覚なんてあるんだ…」
そう声を出そうとも
口から出るはごぼごぼという音と泡だけ
まだまだ落ちていく身体は
爪先から脳にかけて
痺れていく
「(このままここで過ごすのかしら?)」
そうだったら
とても悲しいことだね
目の前にある
絵筆とパレットは
何者かによって
壊されてしまった
心が沈んでいく
壊れてゆく
こんな感覚も
悪くない