第一話 初めての狩り
この世界には人間、獣人、妖怪、天使、悪魔がいる。人間は自分たちがヒエラルキーのいちばん上だと思っていることが多い。
だからってオレの思うことは変わらない。やることも変わらない。その中で、オレは出来ることしかしない。
「……ねぇ、もっと速く動けないんですか?」
「俺は大神サンみたいに脚は早くねーの!」
「知るかよ
飛べばいいじゃないですか……」
「んなことしたらバレるじゃん!!」
鴉天狗のハァ、ハァと息の切れる音とともに異形の逃げるニチョニチョと聞こえる。
「はぁ……、
……………………鴉天狗、次は右です」
こんな路地裏、別に人間にバレるような場所じゃないんだけどな。
「りょーかいっ」
右に曲がると青いスライム状の生物……異形を見つける。あと、数メートルの距離
「目標確認、仕留める!」
そう鴉天狗に聞こえるように告げ、異形の頭の上を跳び目の前に躍り出る。狼に近いものに変化させた爪を振り下ろす。
その瞬間ーー
‘‘イヤ……ヤメテ………………コレ、イジョウ…………ボクヲ
コロサナイデ……’’
あたまに直接、言葉が流れ込んで来た。振り下ろし異形の頭に届く数ミリで手が止まった。それを見計らったのか異形は路地の闇に溶けこんでいった。
「ハァ、ハァ…………
あれ、異形は?」
「あっ……
……逃げられました」
「えっ!?追いついたんじゃなかったの!?」
「追いついたんには追いついたんですが……声、」
「?
声?」
「…………いや、オレの力不足でした
周りの声や音に気が散ってしまったので」
「ふーん……そっか
にしても残念だったね、初めての狩り」
「鴉天狗がもっと足が早けりゃ、もう少しスムーズに出来たんですがね」
「足は仕方ないでしょ!?
ってか!
俺にはちゃんと名前があるんだけど!」
「…………なんでしたっけ?」
「忘れるなんて酷くない!?
か、ら、す、ば、は、る、と!
縁結んだ時教えたよね!」
「あー、そんな名前でしたっけ」
「あー!ひとりぼっちでいるお前に優しい優しい俺が縁結んであげたの……」
「か、っ、て、に、だろうが」
この鴉天狗の末裔に当たるコイツ、鴉羽春飛。
この町、勅使河原町にある大天狗を祀る大きめの神社の宮司?神主?の息子だそうだ。まぁ神社の面積は町でいちばん大きい獅子御神を祀る神社よりかはごくごく小さい。それでも金は一般家庭よりは多い。
「……オレは承諾しなかったんですが、その辺の弁解はどうします?」
「えっと……はは、」
「はぁ……苦笑い浮かべるくらいならやめてくださいよ
同情もクソもねぇ」
アルビノ
異様に白い肌と白い髪、赤い赤い瞳。
オレが生まれつき持った忌むべきもの……
「気味わりぃのによく連れ回そうだなんて思ったよなぁ
オレってそんなに珍しいモノか?」
「……
そうだよ、その髪と目の色が珍しいから近付いた」
昔から近付いてくる奴と同じ答え、か……。
「けど、今は違う
お前と仲良くなりたい!」
「はぁ!?」
「ダメ、なのか?」
前言撤回。コイツ、今までの奴よりアホだ。いや、オレにそう言ってくるやつも何人かはいたけどさぁ……
それを真顔で真剣に言ってくるか!?いやいや、ニヤつきながら来られるよりかは良いけど!良いけど!!!
「おい、キモい顔で近づいてこないでください
あなたがなにかしら利用する目的で近づいてることくらいバカでも分かりますが?」
「チッ」
おい、今舌打ちしたな。おいコラ
「はぁ……正解だよ、利用しようと思って近付いた」
「へぇ……」
「親父からお前を監視することと、異形の生態調査を命令された
」
利用目的は知らされてないけどね、と付け足される。
まぁ、どうせオレの能力のことであるには間違いない。
「それなら報告は大神凛は異常なし、監視の必要なしって言っておいて下さいね
それじゃ」
待ってと言われた声を無視して家に帰った。家に着くと一本のメールが入ってた。
「マジかよ……」
鴉羽春飛から、
今日からよろしくね、と。
とりあえず既読無視して終わり。
手に取って下さり、ありがとうございます。自分の好きな物を詰めてつめて詰めこんだ小説になります。
もし、誤字脱字やアドバイスがあればどしどし教えてください。これからよろしくお願いします。
赤林檎