47話
「ホッホッホ! お主らしいな」
「笑い事ではありません」
私はサイトウ、このソーラー学園の実技教諭で、今日の実技授業で問題を起こした生徒の報告を伝えていた。
最初は学園長に伝えようとしたら、まだ学園に帰っておらず、理事長へ報告をすることにした。
理事長室を訪れた私は、入室してみると理事長はお茶を堪能しているヒミコ理事長の姿が。彼女にお茶を誘われて、一緒に飲むことにした。
私はお茶を飲みながら、今日の実技授業で問題行動を報告する。
「それで、問題を起こした生徒に対戦で申し込むとはのう」
「それはですね、誰が悪いのか決められなくて……」
「ほほう……」
今日の実技授業で、四組と五組の生徒が喧嘩をしているのを聞き、騒ぎに駆けつけたところ、四組の転校生の男子生徒がもみ合い、その少年を止める同じクラスメイトの女子生徒と弱気な男子生徒の三人組、五組を絡む男子三人組と喧嘩になる寸前に止めて、誰が悪いのか正直に話した途中、誰が悪いのか決められず、私が頭を抱え込むように、どうしたらいいかわからず、困惑する中で、勝手に対戦で決めるしかなかった。
「申し訳ございません理事長! 私が勝手な行動をでついー」
「よいのじゃ、そのぐらい」
「ですが」
ニコニコとした表情をするヒミコ理事長、彼女は面白がるようにお茶をゆっくりと飲み、その土で出来たお茶碗をテーブルに置き、両手で伸び伸びとする。
「しかも……問題を起こした五組の生徒が、あの転校生とはのう、本当に面白い奴じゃ」
足をバタバタとしながら、大爆笑を上げる理事長。
「笑い事ではありません!」
「すまんのう」
どうして理事長はあの転校生のオオウチ君を、興味津々に持っているのかわからない。
「そうじゃ、いいことを思い出した」
「何でしょうか?」
理事長は何かを閃いた。私の顔を直視しながら会話を続ける。
「私……面白いことになりそうだ」
「何をですか?」
「サイトウ、私と賭けをしないか?」
「賭け!?」
それってつまり、私が決めつけられなかった対戦を、賭博などを利用するつもりじゃあ。
「無理です! 私には誰に勝つかお金になんー」
「バカ者! 誰が賭博の話をしたか!」
「そうですか……」
サイトウは違法な賭け事と勘違いしたのか。彼女は脂汗を出すように胸を当てて、ホッと一安心した。違法な賭博じゃなくてよかった。私は理事長の話に戻した。
「賭けとは……なんでしょうか?」
「それはじゃのう、対戦でどちらが勝つのか決めるのじゃ」
「それってつまり……」
「有無、嘘つきは敗北、正直は勝利……誰が勝つのかを決めるのじゃ」
「何それ?」
理事長の話しの内容が理解が出来ず、全く意味が分からない。
対戦に負けて敗北した者が嘘つきで悪い生徒、対戦に勝利した生徒が正直者。そんなの信じられません。
(理事長……顔が笑っている気がする?)
理事長はニヤニヤと笑った顔で、何か知っている気がする。
(そういえば理事長の能力……本当は知っているはずじゃあ)
ヒミコ理事長のソーラー・グラスを発動した能力は予知であり、その予知能力で、占いで当たる確率は100%である。
もしかしたら、今日の授業で問題を起こした生徒がわかるはずじゃあ……
「なんだその目は!」
「はい!?」
「お主、もしやわらわが答えを知っているつもりじゃなかろうな。わらわの予知能力で、占いが外れるなんてなかろうな」
「とんでもありません!?」
私は慌てて怒りに満ち溢れる理事長に、誤魔化そうと言い訳をする直前、
「お主の思った通りじゃ、わらわの能力はお見通しじゃ、教えてやらんぞ」
「そう……ですか」
やっぱり理事長は能力を使用していたの。けれど、怒られたところ、どちらが勝利するのか教えてもらえないのは残念。
「では、話に戻すとするか」
「話とは、なんでしょうか?」
「五組に転入したヨシノ・オオウチを知っておるか」
「ヨシノ・オオウチ君ですか?」
確か……今日の五組に転入したハーフの少年のヨシノ・オオウチ、彼が誰なのか気になる。
「あやつはのう、このトーエで有名な一族なのじゃ」
「一族?」
このアリス星の星都の有名な一族、あのヨシノ・オオウチはこのトーエの出身地と言う訳ですか。
「彼はこの町の出身ですか?」
「有無、だがしかし、とっくの昔に死んでいるんじゃ。奴はその生き残りじゃ」
「有名な一族? 生き残り……?」
「七年前に没落したオオウチ一族じゃあ」
「へ?」
「奴はオオウチ一族の生き残りじゃ」
「オオウチ……オオウチ一族の!?」
彼がオオウチ一族、トーエ嫌っ!? アリス星で大企業を納めて来たあのオオウチコンチェルンの御曹司、どうして理事長はそんな重大なことを教えてくれなかったのかしら。
オオウチコンチェルンといえば、アリス星で経済を発達したと言われる大企業グループ、ところが、七年前の悲惨な事件を起こし、会長とその一族らは皆殺しにされた。生き残った子供達だけだった。
「どうしてオオウチ家の彼がこの学園に」
「それはわからぬ」
「知らないのですか?」
理事長は、例の転校生のヨシノ・オオウチがソーラー学園に転入した理由が知らないとは。
「理由はわからぬが、奴の引き取り人がわかったぞ」
「誰ですか? オオウチ君を引き取り輩は?」
まずは、ヨシノ・オオウチを引き取って養子にした本人の話が聞ける。
「聞いたら、お主も驚くぞ」
「何が?」
「それは……お主と同じ職業で、知っておる人物じゃ」
「知り合い?」
私の知る人物、私と同じ実技授業を担当し、一体どんな知り合いなのかしら。
「ルビ・デグリ・アルマティじゃよ」
「はい?」
「そう……お主と同じ実技を担当した奴じゃ」
「え……えええええええええぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
ヨシノ・オオウチを引き取り人があのアル先輩が、あの殺人事件とアル先輩の失踪した年が同じで一致している。
「7年前に学園から消えたアル先輩がどうして!」
「それはじゃのう、7年前の事件と一緒に行動したのに忘れたのか?」
「あ……」
私はうっかり忘れてたよ。7年前の昔、私と先輩らと共に現場へ駆けつけたところ、オオウチ家の屋敷が跡形もなく焼け落ちた。
出火原因は放火の可能性もあるが、一族の死体の検死からは、身体部分がパーツみたいに切断されていた。どうやら、鋭い刃物で斬られて、火が放つ前に殺害された可能性が極めえ高い。
「7年前は大事件じゃったのう」
「ええ、オオウチコンチェルンの当主とその一族が殺されて、大きな大事件でしたわ」
「有無」
「それにオオウチコンチェルンが、吸収されるように別の大企業に買収したと」
「それもあるな」
マスコミはこの事件をオオウチコンチェルンを恨んでいる企業テロとして伝えられ、全ソレール系に広まってしまった。
それから間もなくして、オオウチコンチェルンは別の有名な大企業のグループによって買収されてしまう。
「それなのに、ヨシノ・オオウチの他にも生き残りがいたよな?」
「ええ」
ヨシノ・オオウチの他にも生存者がいた。オオウチ家の子供たちだ。オオウチコンチェルンのご子息の殆どが生き残り、消防隊が無事に救助されれ保護した。警察からの取り調べで犯人を話したが、全員何も話す気にはならなかった。
「それに、あの事件後には全員、ヨシノ以外引き取られた後じゃったわい」
「そうですね」
オオウチ一族を殺害した真犯人を突き止める為、公安とソレール系奴や、それに私達ソーラー学園と共同で再捜査を行おうと、被害者が入院している病院に向かったが、その子供たちは全員、退院した直後だった。
看護婦から話によると、身元引き取り人らしい人物に引き取られ、子供たちは別々になってしまった。宛先や住所を教えず、音信不通のままで、事件は迷宮入りになってしまった。
「それに連絡が付かず、手掛かりなしのままか」
「その心配ない。あのヨシノという奴がいるじゃろう」
「彼ですか?」
あの五組に転入した例の転校生のヨシノ・オオウチ。
「彼の引き取り人がアル先輩が引き取り人が先輩じゃなかったら今頃……」
「有無」
どうしてヨシノ・オオウチが引き取れなかったというと、重度な重傷を負って彼だけ意識が戻らず、そのまま病院へ置き去りのように放置し、目が覚めたのは数日ぐらいだった。
「どうして先輩は、ヨシノ・オオウチを引き取ったのでしょうか?」
「奴はオオウチの息子だからと言って、死んだ友人の子供を放っておけず、アイツは教師の職業を捨てて、奴を育てる為に学園を去った」
「え……息子? 友達……学園を去った」
理事長のヒミコは、さっき話した説明を思いつくと、ある先輩はヨシノ・オオウチの両親の知り合い、それってつまり……
「オオウチの両親とアルは幼馴染でな、昔はとても仲が良かったじゃ」
「え……えええええええ!!!!!!!!」
あのヨシノ・オオウチの両親とアル先輩は幼馴染! 私は初めて聞きました。どうして何も教えてくれなかったのですか先輩。
「それが教師を辞職した原因じゃ」
「なんですってー!」
7年前に教師を辞めて学園を立ち去った原因が、あのヨシノ・オオウチですか。
「まさか……理事長は知っていましたか?」
「もちろんじゃ」
理事長が先輩の事実が知っていたとは、教師と生徒にも黙って何も言わずに出て行くとは。
「それに、学園長も知っておるぞ」
「学園長……」
学園長もですか。あの二人、私達を黙って見届けたんですか。酷いじゃないですか、みんなを呼ばないで〝さよなら〟の挨拶を言わせてください。
「……まあ、そんなもんじゃのう」
「ははあ……」
「それに引き換え、アルの奴は何をしているんじゃ?」
「ハハッ……」
アル先輩がヨシノ・オオウチを身ごもる為、学園を離れてもう7年、先輩は今頃、どうしているんだろう。
その頃、グラウンドの校庭では……。
(誰かがお師匠様を心配する人間がいる)
僕達三人は、来週に向けてトレーニングの最中に、電波のように脳内から、誰かお師匠様を心配している気が、こっちは必死でダレスの厳しい特訓を受けている最中なのに。
「そこ! たるんでるぞ!」
「イエッサー!」
ダレスの怒号を聞いてビックリ、再び特訓の続きを開始した。




