新しい教室と自己紹介
中等校舎の中へ入った僕は、入るときには上履きが必要だ。
自分の上履きがあるのはロッカー・シューズの中に入っている。
それが自分のロッカー・シューズは何処だかわからない。仕方なく先生に声を掛けた。
「先生、ロッカー・シューズは何処にありますか?」
「オオウチ君のロッカー・シューズはここよ」
フクザワ先生は、【五組】と書かれているロッカー・シューズの真ん中に指を刺した。そこで、自分の名前が書かれたロッカー・シューズが書かれていた。
フクザワ先生に礼を言った。
「ありがとうございます、フクザワ先生」
「どういたしまして」
ロッカーヒューズを手元に触れると、引き戸が自動的に開いた。中から上履きを取り出した。
すぐ様、靴を脱いで上履きに履き替えた。
履き終えると、フクザワ先生に声を掛けた。
「それで、二学年の教室は何階でしょうか?」
「二年の教室はの三階よ」
「そうですか」
黒板型をした電子版から、案内図一覧にマップが映し出され、階上内の三階には、二学年教室錬と書かれていた。
「階段で行きましょう。オオウチ君」
「わかりました。階段はすぐそこですよね」
「ええ……」
フクザワ先生と一緒に、玄関付近にある階段で三階に上った。
彼女は担任の先生でありながら、キチンとした態度を取る。
それにしても、転校するクラスは五組、一体どんな生徒なのか気になる。
「そんなに緊張しなくてもいいのよ」
突然、前後から歩く先生が、僕に向けて声を掛けられる。
「いいえ! 大丈夫です‼」
僕はあっけなく、声を掛けられた先生の顔を見て、心の底から飛び出るように、驚くような態度で返事をした。
先生はビクッとした顔で仰天する。
「そう……ならいいけど、教室に入るのが緊張するなら言ってね」
「そんなに心配しないでくださいよ!}
僕みたいに緊張する生徒を心配してくれるとは、三階に辿り着く。
二学年のクラスの数は、全部で十クラス以上ある。
どうやら、シューズ・ボックスから書かれていた五組だ、僕は五組の教室だろう。
フクザワ先生は一旦と足を止めた。右を向くと二年五組の教室だ。
「ここがあなたのクラスよ」
「ここですか?」
今日から僕が通う学園と、そして新しい教室だ。でも……一体どう挨拶を交わせばいいのか?
「どうしたの? そんなに不安そうな顔をして?」
「いいえ、なんでもありません!」
またもや先生に心配を掛けられる。入る前に心の準備をしないと、クラスメイト達は転校生である僕をどんな風に視線するのか。
前の学園では、クラスメイト達にバカにされたり、嫉妬や恨まれる奴らも多かった。
けど僕は決して気にしていない。僕がボコった奴らが、お礼参りに襲い掛かってきた、しかしそいつ等全員正当防衛で、護身術で返り討ちにした事もあった。
このままだと、まだ変わらぬ学戦生活を……嫌々! ここは適合者専用の教育施設だ。誰にも邪魔されない。問題は起こさないようにしないと心に決めたんだ。うまくいくかな?
「オオウチ君‼」
「はいっ⁉」
「そんなに緊張しないで、キチンと元気を出して、みんなに転校の挨拶をしましょうね」
「は……はい……」
フクザワ先生は真面目な顔付きな表情で、心配しながら声を掛けられる。
僕は小声で返事をする。
「じゃあ、ドアを開くわね」
先生は二年五組の教室のドアを開き、フクザワ先生は教室に入った。
「オオウチ君も早く」
「はーい」
僕も後をつくように、教室の中へと入った。
「みなさん、おはようございます」
フクザワ先生は教壇に立って、几帳面な顔で生徒に挨拶をする。
「「「「「「「「おはようございまーす」」」」」」」」
クラスメイト達全員、先生に向けて一礼する。
(新しい教室……そしてクラスメイト……)
「おい……アレって?」
「アイツって確か……」
「今日からうちのクラスになる奴じゃない?」
「新しい生徒?」
「思った通りね」
「本当だ」
「適合者だね」
「俺らと同じ仲間になるんだ」
「そう言いたいけど」
「大丈夫なのか?」
クラスメイト達は茫然としながら、僕に向けて衆目を浴びる。
「本当に転校生だよね?」
「本当だね?」
「しかも男子でしょう」
「結構美男子」
「前髪少し長いけど」
「掛けているメガネって丸い形だけど?」
「いいじゃん、そのぐらいは」
「メガネフレームは色々愛用する人間が多いのよ」
「そうよね」
クラスメイトの女子生徒達は、キャーキャーと言いたいそうで嬉しい顔で、僕に向けて注目する。それにメガネフレームトークを語り出した女子もいるよ。
「この前、うちのクラスに転校してきたのは可愛い女の子だったよね、その次は男子か……」
「あーあー、また女子かと思ったら、今度は男子かよ」
「背が低いし」
クラスメイトの数人の男子が、僕を見てガッカリと落ち込む、僕の他にこのクラスに転校した女の子がいるのか、
男子たちは相当、転校生である僕の事を女の子だと期待していただろうか?
「ちょっと男子! 転校生に聞こえてるわよ」
隣の席にいる女子生徒が、ガッカリしている男子生徒達に注意をするように文句を言い当てた。
「なんだよ、いいじゃねえか」
「お前らがモテないじゃねえか?」
「なんですってー!」
「アンタたちに言われたくない!」
女子は男子に言い返したが、男子は顔を赤く染めるように、女子に睨み付ける。
「なんだと!」
「よくも言いやがったな!」
「キャア⁉」
「何すんのよ!」
「そんなに怒らないでよ、バカ男子!」
「バカってなんだよ⁉」
逆切れした男子は、女子に反抗して言い返す。
怖気付いた女子は、勇気を振り絞るように反発して、とうとう口喧嘩が始まってしまった。
僕の事で喧嘩はしないでくれよ、しかも転校の挨拶を逆上している。
今日が初めての転校初日の挨拶なんだ。
すると、隣にいる教壇に立つ先生は、息を吸うように目を閉じた。
「みなさん静粛に!」
「「「「「「⁉」」」」」」」
フクザワ先生は、男女抗争寸前のクラスメイトを全員に大喝、一瞬で完黙させる。
「騒ぎを起こさないようにその辺にしなさい! 男女で争うのはよくありません!」
「「「「「「す……すみません……⁉」」」」」」
クラスメイト達は、黙して大人しくする。
「ごめんなさいオオウチ君、迷惑を掛けて」
「いいんです。これぐらい」
フクザワ先生は優しいだけでなく、厳しく説教する事もあるのか、教師という人間は、性格と態度が変わるのか?
「では改めて、みなさんに転校生を紹介します。オオウチ君……挨拶を」
「はい……今日からこの学園に転校してきましたオオウチ・ヨシノです。みなさん……よろしくお願いします」
無事に転校の挨拶が言えた。
礼儀正しく自己紹介を終えた直後、
「ヨシノさん?」
「へ……?」
突然、エリスの声が聞こえた。空耳なのかと気になって教室を細見すると、後ろの席から……
(アレ? 後ろの席に座る女子? 誰かに似ているような気がする?)
僕は、背後の席に座る女子生徒を凝視した。
女子制服をキチンと着ている。白くて長い靴下と上履きに、顔にはくりっとした瞳、桃色の唇、大きな丸眼鏡、そして……腰まで伸びた黒髪を晒していた。
しかもポカンとした表情で自分を見ている。間違いなく正真正銘のエリス本人だ。
「エ―――‼‼」
「なんで―――‼‼」
僕とエリスは絶叫しながら動転とする。
なぜなら、僕が転入した五組にエリスがいる、彼女も同じクラスだとは思えなかった。
「どうしてヨシノさんが私のクラスに!」
エリスは仰天とした表情で、恐る恐る僕の方へ、プルプルと指を刺す。
「それはコッチのセリフだよエリス⁉」
僕はエリスに口述する。
「おい、あの転校生って?」
「エリスさんのお知り合い?」
「わからない?」
クラスメイト達は、ざわつくように僕とエリスの関係をヒソヒソと話し始めた。
「そういえば、あの転校生が適合者になった影響は……ザビエルだね」
「そうね、彼女は任務に参加していたよね?」
「他の生徒から聞いたわよ。おまけにエリスがテロリストに誘拐されて大変な事態だったのよ」
「本当なの? それで……?」
「エリスさんをを救助した後、彼((彼))と一緒に戦ったのよ」
「マジで⁉」
「オイオイ……アースラー教のシスターのエリスが」
「アイツは信者で、いつも懺悔してたのに」
妙な噂話を語り始めたよ。
「どうしてエリスが五組とは」
「私もいます!」
「シア⁉」
突然、エリスの隣の席から立ち上がった女子生徒がいた。それは前の学園で一緒にいた頃の顔見知りだった。
長い赤毛のツインテールに、キチンとした女子制服、右手に嵌めている手袋、それからアンダーリムの眼鏡を掛けていた。
間違いなく前の学園で委員長を務めた少女、シア・ノグチだ。
「シアも同じクラスなのか?」
「オオウチ君も同じクラスになれるなんて、夢に思わない!」
シアは嬉しさの感動で、微笑みながら近づいて来るが……
「ハイハイ! 席に戻りなさい‼」
「ムームー‼」
エリスが座席に立ち上がって、シアを取り押さえる。
両手でシアの口元を押し込むように塞いだ。
「転校生のシアさんも?」
「一体アイツは、どんな関係なんだ?」
「まさか……」
もう誤解が解けないな。
(一体……どうなっているんだ?)
転校してきて、エリスとシアが同じ五組の生徒になるとは、これはとんでもない学園生活を送る事になってしまう。




