タマと読書日記(1) 教団X
こんにちは。むいた甘栗より、から付きの甘栗が好きなタマです。
今回は読了したての本を紹介。
「 教団X 」中村文則 / 集英社
むしろ"まだ読んで無かったのかよ" と声が聞こえてきそうです。おっしゃる通りです。
ずっと読みたいと思ってました。やーっと読めた!辞書みたいに厚かったです。定規で測ったらカバーまで合わせて4.5センチ。圧巻。
本の表紙デザインも、物騒さと神聖さが合わさった様な雰囲気で素晴らしいですね。タイトルとの組み合わせでインパクト大です。
さて、この作品を知ったのは某テレビ番組、読書好き芸人さんのオススメです。
"あ、本屋で見かけた事ある!そっかぁ、面白いんだぁ " というのが最初の印象。それからずっと気になってて、最近やっと読んだ次第でございます。いやぁ、すごかった。
2つの宗教団体をベースに、幾人かの登場人物の視点で物語が進みます。宗教とは、神とは、個とは、全とは。紀元前のブッダの言葉から最新の脳科学を用いて淡々と語るシーンが印象的でした。もうなんか、読んでるだけで頭良くなった気分を味わえます (笑)
物語の後半には戦争や貧困、テロについても触れてあり、色々考えさせられました。
しかし、途中から感じる違和感。
"……これは? "
いったん本を閉じます。
インターネットで本書の感想を調べました。するとあらま。Amazonでのレビューがとても辛口な模様。
読書好き芸人さんがオススメした作品が面白くない? そんな事があるのかと思いました。あの人達は相当量の本を読んでいます。目は肥えているハズだと思っていました。
ふと、番組中で彼らが漏らしていた言葉を思い出します。(一語一句同じという訳じゃありませんがこんな雰囲気でした )
”他人からお勧めを聞かれて、コレだと答えても、お気に召してもらえない事がある”
これは本に限らず、何にでも当てはまるんではないでしょうか。お勧めの食べ物、映画、音楽、他にもいっぱい。自分が好きでも、他の人もそうだと限らない。この作品もそうなのかなと、その時は思いました。
「教団X」に関しては、その原因を解説したサイトがありました。
簡単に説明すると、小説のジャンルを勘違いしてないかい? という事です。
「教団X」は純文学にジャンルされます。純文学とは芸術性に重きをおく作品の事ですね。といっても抽象的でよく分かりませんので、タマ的には、”一般受けしない”とか”他のジャンルに当てはまらない”という認識です。この物語はミステリーや、社会派ドラマなんかを期待して読むと肩透かしを食らうんですね。タマは少し食らいかけました (笑)
巧妙な伏線も、心躍る胸熱展開もありません。ただただ、それぞれ悩みを抱える人間の葛藤を描写してあります。それが汚くて美しいと思いました。
そう、純文学だと思って読むと、何故か物語が入ってきます。不思議ですね。純文学なら何でも許されるのかい! とつい突っ込みたくなりますが、実際そうかもしれないと思います。
訳の分からない踊りでも、モダンダンスだと言われれば納得します。
妙ちきりんな音を奏でてても、現代音楽と言われれば理解できます。
子供の書いた様な絵でも、抽象画と言われれば合点がいきます。
横向きの顔のあちこちに、鼻や目があって「子供の落書きの様だ」と思っても、それがキュビズムの代表作と言われれば、その落書きはピカソの傑作になってしまうのです。
(ちなみにキュビズムとは多角的に物を捉えた芸術運動です。ピカソのあの良く分からない構図は横から、真正面から、斜めから等の視点をひとつのキャンバスに収めたものなんですね。落書きの様に見えますが、ピカソ自身はデッサンめちゃ上手です)
話は逸れましたが、純文学だと思って読むと、悪い感想は抱かなかったという事です。
村上春樹の作品が好きな方はもしかしたら好まれるんじゃないでしょうか。ちなみにタマは同氏の「1Q84」好きです。
ただ! とにかく大人な描写がこれでもかと出てくるので、お子さんにはオススメできませぬ。せめて高校生から。そして女性は少し嫌な思いをする場面もあるかもしれません。タマは双方同意の上での愛あるものが良いです。
これらを踏まえて。
「教団X」
感慨深かったです。
世界は貧困や不条理も当たり前に存在する、混沌としたもの。罪を背負い、時にうずくまりながらも生きようとする人間は、滑稽で尊い。
まだお読みでない方、少し興味を持たれたならば手に取ってみてはいかがでしょう。
※あくまで個人的な感想です。また、この作品が嫌いな方に対する批判の意図は全くありません。