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【番外編】桜と謀反とミュシャ、そして荒ぶる玉三郎

当初活動報告の記事として書いていたため、このエッセイの一人称である「タマ」が「玉三郎」となったりしておりますが、まあお気になさらずにどうぞ。そして番外編とありあますが、内容はいつものノリです。

 桜、やっと満開になりつつあります。近所には桜並木があちこちにあり、通勤路を通るだけでちょっとしたお花見ドライブ。ソメイヨシノの白に近い爽やかな桃色もいいけれども、山桜の葉と花が混じり合った味わい深い色合いも素敵です。真っピンクの八重桜も好き。春、いいですね。好きな季節です。残念ながら桜の開花とともに雨雲が現れ、外でのお花見はちょいと難しそうですが、しかし。柔らかい雨に打たれながらも凛と咲く薄桃色の花に、心が洗われるようです。……いえ、洗ってほしい。むしろ洗ってくださいお願いします。玉三郎の荒みきったこの心を優しく柔らかく癒してッ!!


 部下が謀反を起こしました。(彼女に部下という表現が正しいか謎ですが、便宜上部下って言っちゃう。)完全なる反抗期です。いや、そんな可愛いものではない。もはや下克上。反乱。米騒動。一揆。何が気に入らないのか、ここ最近の態度がヒドい。「優しい変人」との異名を持つ玉三郎でさえも心がざわつく今日この頃。やっとこさクレーム問題が落ち着いてきたのに(詳しくは三月辺りの活動報告でどうぞ)先週から玉三郎のメンタルを削ってくれます。


 ねぇ! 返事をして! シカトやめて!なんでそんなに刺々しい態度なの!? こないだまで普通だったじゃん! 進捗状況報告して! 勝手に仕事進めないで! やっちゃいけない事しないで! お願いだから!! またクレーム起こす気なの!? コンニャローッ!!


 一時期など荒ぶるあまりに頭の中でジョジョに出てくるどのスタンドでぶちのめしたら効果的だろうと考えていました。やだ玉三郎ったらなんて恐ろしい事を……。


 朝と夕の通勤時。通り過ぎる桜並木にうっとりしながらも、やはり頭をよぎり心を占めるのは仕事のストレス。こんなに荒ぶっているのは……数年ぶり……? 普段、他人に対してイライラするなんてあんまりない玉三郎ですが、さすがに神経が参っているようです。謀反を起こした彼女もそうなのかもしれません。


 そんなとき。荒ぶる玉三郎に、突如天使が舞い降りました。それはお髭の生えたおじさん。見た瞬間にがっつり心が癒されました。心踊り出しました。——ミュシャです。友人が一緒に頼んでくれていたミュシャの画集が届いたのです!! お髭のおじさんがいっぱい描いてある画集ではありませんよ!!


「美術はようわからん」という方でも、見たことあるんじゃなかろうか、ミュシャ。有名なものはやはり壮麗なポスター類。アール・ヌーヴォー期の代表的な作家のひとりとしてまず名前があがるでしょう。


 本名 『アルフォンス・マリア・ミュシャ』。

 故郷チェコではMuchaとかいて『ムハ』。

 通称『アルフォンス・ミュシャ』。


 ミュシャが描く女性は天下一品。あの麗しい曲線美に眼球がノックアウトです。そして洗練された構図に魂を持っていかれます。しかし彼は画家というよりグラフィックデザイナーの面が強い。そう、ミュシャはデザイナーなのです。その手掛けた作品の多さと言ったら! ポスターやカレンダーの印刷物はもちろん、天井の壁画からアクセサリー、はたまた紙幣や貨幣の図案までこなしています。いやー、もうスゴい。


 仮に玉三郎やこれを読んでいるあなたがが依頼されて、とあるミュージカルのポスターを作ったとしましょう。何枚も何枚も刷られ、ただミュージカルを宣伝する為に作ったそのポスター。描いたのは主演の女優さん。劇中の衣装に身を包んでこちらを見ています。


 そのポスターがどのような評価を受けるでしょうか。どんなに良い仕上がりでも、他人から見ると「まあ素敵ねこのポスター」くらいじゃないでしょうか。貼っていたポスターを泥棒されて、泥棒さんがそれを部屋に飾ってくれるのならうれし涙。(主演女優が目当てじゃなければね!)


 想像してください。自分が作ったポスターが素晴らしいと多くの人から褒め称えられます。それは地域を越え日本に留まらず世界各国から。公演期間が過ぎてる? そんなの関係ないね! ガラスのケースに入れられ、あるいは接近禁止のロープ付きで壁にかけられ、触るときは白い手袋着用。いちポスターが素晴らしい美術品として(うやうや)しく扱われるのです。死後100年以上もの月日が経ってもその魅力は褪せることなく、美術館やコレクターはこぞってその作品を欲しがり、日々各地で展覧会が催され、今この瞬間にも新たなファンを生み出していく。……とんでもない偉業です。


 絵描きも字書きも、己の創作物で人の心を揺さぶらんとする同じ作家。この凄さ、分かっていただけると思います。それ程までに人の心に強く印象付けるミュシャの作品。そんな彼の分厚い画集が届いた時の感動。いやー、テンション上がったぁ……。


 その画集なのですが、今東京であってる展覧会のものなんですよ。展覧会、行きたい。生のミュシャ、観たい。迫力のあるおっきな絵画、観たい。ポスター、この目に刻みたい。ああ、東京。行きたい、観たい、行きたい……。別に他に観光しなくともミュシャさえ見れれば良い。しかしスケジュールが厳しい。地元の美術品も今すんごい良いのがあってるからそっちも行きたい。ああ、どうしたらいいんだ!! うわぁああ!!


 東京いきたぁぁあああーーーーいっ!!

(地方民の叫び)


 仕事でつまらんストレス抱えてる場合じゃないんだよ!! 心に栄養を与えろ!! 視野を広げろ!! 小さい世界にとらわれるな!!


 ミュシャーーーーーーッ!!


 ……てな感じで、癒されつつも結局荒ぶっている玉三郎でした。


 お髭のおじさん、ミュシャ。

 玉三郎の心を惑わす罪なお方。

書き始めた頃は桜七部咲きくらいだったのに。書き終わった現在、満開のピークを越え散り始めています。桜。儚い。しかし葉桜というのも趣きがあって、良い。


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