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オセロ

作者: 佐倉梨琥


そこは、黒だった。


少年は瞼を開いた。

けれど、自分が目を開けているのか、否か、分からないほどの黒だった。


自分の手を見たはずが、何も見えなかった。


それでも、意思を持つ『自分』が確かに存在することを確認した。


少年は不安がることもなく、ただ、自分が生きているのか死んでいるのかさえ分からないことを自覚した。


自分は魂になったのだろうか。

ここは輪廻の狭間なのか。

それともただの夢なのか。



その時、ふと、白く淡く光る球体が、目の前に現れた。

それは魂のようだった。


死んだのだと思った。


少年は球体に話しかけた。


『…君は…誰?』


話しかけたはずだった。

少年の声は音になることは無かった。


しかし、誰かの声が聞こえた。


『な…に?』


小さな、甲高い声だった。


『私…は、誰?』


小さな声は、声の主自身に問うているようだった。


少年は考えた。

自分は誰かと。


気がつくと、球体がゆらゆらと揺れていた。

そして、すっと一直線に動き出した。


少年は反射的に追いかけた。


何も見えない黒の中、ただ一つ見える淡い球体を追いかけた。



* * *



少女は瞼を開いた。


そこは白だった。


少女はゆっくりと立ち上がった。


自分の手のひらを見ると、自分が光っているのか、周りの白のせいか、輪郭はぼんやりと朧気で、恐怖を感じた。


大きなリボンが腰についた、ワンピースも全てが白く、布の肌触りを感じるのに、何も無いようだった。


少女はただ怯えた。


何もかもを呑み込んでしまうかのような真白に恐怖した。


『君は…誰?』


どこからか声がした。


『な…に?』


咄嗟に答えた声が辺りに反響した。


―――君は誰?


『私は…誰?』


恐怖が大きくなった。

自分が何か分からないことがただただ怖かった。


少女はふらふらと駆け出した。


段々と必死になり、宛もなく真白の中を走り続けた。




――何かを見つけた。


走り寄ってみると、それは花だった。


名前も分からない黒い花だった。



『く…ろ…』


少女が呟いたとき、世界は反転した。



* * *



淡く光る球体は、ふと動きを止めた。


それに合わせて少年は立ち止まった。


『く…ろ』


――名前を呼ばれたと思った。


淡い球体は、さらに光を放ち、少女へと姿を変えた。

少女は、呆然とその場に座りこんでいた。


少年は、その少女を、少女の名前を知っていた。


『…白』


名前を呼ばれて少女は、顔を上げた。


そこは白の世界でもなければ、黒の世界でもなかった。


輪郭が、服が、影が見えた。


少女はもう、怯えてはいなかった。


『…黒』


少女は少年の名前を読んだ。


どちらともなく、手を繋いだ。


2人は安心と幸せを感じ、互いに微笑んだ。



* * *



「…実験、成功です!」


研究室は、歓喜の渦に包まれた。


「オセロ計画、成功しました!」

「これで、パラレルワールドの存在が証明された!」

「人類の進歩だ!」


白衣に身を包んだ大人達が、肩を抱き合い握手を交わした。


研究室には、ガラス張りのカプセルが幾つも並んでいる。


中には、目を瞑ったまま、身じろぎ一つしない子供たち。



「被検体θと、被検体αの世界が繋がったおかげだ」


研究室の中央には、一際大きなガラス張りの実験装置があった。


その中で、少年と少女は眠っていた。


幾人もの『黒』と、幾人もの『白』の中、やっと出会えた幸せの中。


手を繋ぎ、微笑みながら。


初めまして、または、お久しぶりです。

佐倉梨琥です。


何ヶ月ぶりの投稿でしょうか…


ぱっと思いついて、ばーっと書きました。

自分的に、好きな世界観を書けたかな?どうかな?


楽しんで頂けると嬉しいです。


あーちゃんも私も受験生なので、ぼちぼちあげます。(たぶんきっと…)


また、いつかお会い出来ることを祈って。

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