6:空気も燃える春 山火事の狐
6:空気も燃える春 山火事の狐
空気も燃える春。その年の春は、とても乾いた空気に満ちて、あちこちで山が燃えた。古い神様も、ちび神様も、大きな火になる前に火を消して、そっと村を守っていた。
「ちび神様がこんなにがんばってるのに、村のみんなももうちょっと感謝してくれてもいいですのにね。大きな社ばっかり参拝して。」狐はちび神様の仕事を手伝いながら、すねたようにいった。
「いいんだよ。僕は神様だから、誰にも見えないし聞こえない。そりゃあ、感謝されたらうれしいし、やる気もでるだろうけどね。」
「ちょっとさぼっちゃいましょうか。」狐は少し悪い顔をして言った。
「感謝される為にする訳じゃないから。僕が、もうあの日みたいなことが嫌だから、自分の勝手でしてるだけだよ。」ちび神様は、火を消しながら言った。
ちび神様は、神様になってからしばらくしての出来事も思い出していた。ある時、山で大きな火事があったとき、ちび神様は必死で山の動物たちを逃した。しかし、力が及ばず、多くの人や動物が死んでしまった。ちび神様の目の前で、逃げ損ねた一匹の狐が、炎の中に巻き込まれた。ちび神様は必死で炎を何とかしようと奮闘したが、どうにもできなかった。ちび神様は、どうしても狐のことが忘れられず、その魂が救われるよう、自分の手元に置いた。ちび神様のお使いの狐は、その時に死んでしまった狐だった。
「君を救うこともできなかった。苦しかっただろう」ちび神様は悲しい顔をした。狐は言った。「でも、助けようとしてくれたその気持ちに、私の魂は救われたのですよ。」
ちび神様は「変わり者だね。」と笑った。
「・・・でも、後2年かな。このままだと。」ちび神様は、所々穴があいた社を見た。




