3:豊作祭りの秋 草葉の陰の社
3:豊作祭りの秋 草葉の陰の社
黄色の稲穂が実る秋。大きな社では豊作の祭りがなされた。ちび神様の社は次第に忘れ去られ、辺りには草が生い茂り、社はどんどんと朽ちていった。古い神様は迷惑そうに、「神様らしく、人々に威厳を与えてもらわなければ困る。淀んだ空気では、私の品位まで下がってしまう。」とちび神様にいった。
でも、ちび神様はそれでいいと思っていた。そうすれば、皆は古い神様のところにいくだろう。その方が、みんなにとって幸せなのだと。こんなちび神様に祈る時間があるなら、新しい社を磨いたほうが、よっぽどご利益がある。そう考えていた。そして、たまにやってくる人を、大きな音や光で追い返した。みんなは、たたりだと噂しあって、次第にだれも近づかなくなった。
狐は尋ねた。「神様なのに、祈られなくていいの?」
ちび神様は、いった。「みんな、ご利益の為に祈るんだよ。何かしてほしいから祈るんだ。それが叶えられないなら、神様としては失格だ。なのに、僕には全ての願いを叶えてあげることはできないし、何でも叶えることがいいことだと思えない。それに、偉そうにしないと偉く思ってもらえないなら、僕はそれだけの神様だったってこと。だから、これでいいんだよ。」
「でも、祈る人がいなくなったり、社がなくなったら、ちび神様はここにいられなくなっちゃいますよ。土地や人との縁がなくなって。」狐は心配そうに言った。
「その時は、それでいいんだよ。諸行無常。すべてのものは移り変わる。その時は御役御免で天に帰るよ。」
「でも、わざわざ追い払わなくても・・・。」狐は言った。
「・・・そりゃ寂しいけどさ。でも、助けないっていう助け方もあるんだと思う。」
「助けない助け?」
「それとも、ずっと恩着せがましくおせっかいを焼く偉そうな神様がいい?」
狐は言った。「わかんないです。でも、そうやって人の為に悩むちび神様がいいと私は思いますよ。せっかくの社がなくなっていくのは、ちょっと残念ですけど。」
ちび神様は、「変わり者だね。」といって笑った。




