1:桜が満開の春 散る春の傷
1:桜が満開の春 散る春の傷
少し昔の春。桜の咲くころ。今はこんなちび神さまだったが、神様に成りたての頃は、それは希望に燃えていて、自分の見守る場所くらいは、みんな幸せにしたいと思っていた。ちび神様はあんまり力はなかったが、病気をそっと楽にしてあげたり、迷子の子をこっそり案内したり、困っている人にささやかにアドバイスしたり、人々が困らないよう、けがをしそうな石を動かしたり、色々なことをしてきた。ちび神さまは、毎日山の社から村の景色を眺めては、微笑んでいた。
でも、ある年の桜の散るころ、ちび神様は少し悲しい顔で景色を眺めるようになった。
少し前のあるとき、小さな子どもが崖の近くで遊んでいた。崖に近づかないように、ちび神様は、雨と雷で脅かした。子どもは以来、崖で遊ばなくなったが、怖くて外で遊ばなくなってしまった。そして、その子の親が、社に怒りにきた。うちの子をどうして、と。ちび神様は悲しい気持ちになったが、理解はしてもらえなかった。
またある年の桜の散るころ、お金がなくて困っている男が村にいた。ちび神様は可哀想で、少しのお金を授けた。しかしそれ以降、その男は何かある度にお金を貰いに来るようになった。そして、それを見た他の人も、ご利益があると、お金を貰いに社へ来た。ちび神様がこれ以上は力が出せないし、きっと皆にもよくないと思ってやめると、皆はとても腹が立ち、怒って社を壊してしまった。そして、その人達はお金をちび神様に頼っていたので、自分のことができなくて、犯罪者になり、牢屋にはいってしまった。社はその後、ちび神様を慕う人々によって直ぐに立て直された。
もちろん、村のみんなではないが、ちび神様を慕う人々も多かった。でも、ちび神様はとても悲しい気持ちになった。どうすれば人々が幸せになれるんだろう。そう思えば思うほど、自分の力不足を感じた。
「僕は、神様に向いてないんだろうな。」ちび神様はぼそっとつぶやいた。
「そうですか?よくやってると思いますよ。」
「どうかな。不幸になった人も一杯いるさ。」
「ちび神様は、でもどうして神様になったんですか?」
「うーん。どうしてかな。気がついたらこの社にいたんだ。誰かが僕を奉ってくれたみたい。」
「誰かが、奉ってくれたから、ですか。」
「それに、ここは僕が昔、人間だった頃にいた学校の近くだから、何か縁があったのかな。」
「・・・かもしれませんね。何かやり残したことがあるんじゃないですかね。」狐は遠い目をしながら言った。
「君は、ここで良かったかい?狐になる前にも、縁があるのかな。」
「狐になる前も、なってからも、誰かを追いかけていたら。いつのまにか。でも、今はちび神様のお使いです。ちび神様に置いてもらって、感謝してます。」
「こんなののお使いになって大変と思うけど。でも、いつでも自由になっていいんだよ。」
「意地悪ですね。」
「え?」
「いたいからいるんです。それで十分です。ちび神様のお手伝いができれば。」狐ははっきりと言った。
「・・・そっか。ありがとう。」ちび神様は微笑んだ。
「・・・でも、後3年くらいかなあ。この社も。」ちび神様は、少し汚れの目立つ社を見た。




