13:全てが終わる冬 天へ帰る
13:全てが終わる冬 天へ帰る
全ての葉が落ちた冬。ちび神様の社は、ついになくなった。
もう村のほとんど誰も、ちび神様の社を覚えている者はいなくなった。新しい社には、いつも参拝の人が訪れている。ちび神様は、いよいよ縁がなくなったので、天に帰る支度を始めた。
「行っちゃうんですか?」狐は悲しそうに言った。
「あの春に、後3年って言ったのが、本当になったね。」
「もう。ばかなこと言うからですよ。」狐は怒って言った。
「でも、僕の役割は終わったんだよ。・・・僕の未練も。みんな、新しい時代に向かって進んでいる。形あるものはいつか全てなくなる。お別れの時が来ただけなんだ。悲しまなくていい。みんな悲しんでないだろ。」
「無理です。それでも私は悲しいです。」狐の目には涙があふれた。
「・・・ありがとう。悲しんでくれて。でも、行かなくちゃ。最後に、君がいてくれてよかった。猫とカラスをよろしく頼むね。あと、あの娘も。子どもがちゃんと無事に産まれたから。一応、古い神様にも頼んできたけど。」ちび神様は、狐の頭をなでた。
「また、置いていくんですね。」狐は寂しそうに言った。
「いつもごめん。」ちび神様は悲しそうにいった。
「私も、ついていっていいですか?」狐は尋ねた。
「・・・何もないところだけど、君がいいなら。」ちび神様は申し訳無さそうに言った。
「・・・もちろんです。」
「おいで。」
ちび神様は、すーっと姿を消した。狐も、もう姿が見えなくなった。
14:新しい春 新しい世界のはじまり
新しい社では、新しい1年を祝う祭りが賑やかに行われている。
その中には、猫の子やカラスの子も混じっている。
若い娘は、新しく生まれた子どもを抱えながら、小さな社を、新しい社の横に作った。
古い社に残っていた、少し大きな石を奉った。
「ちび神様。おばあちゃん。どうか天から、私達の暮らしを見守ってくれますように。」
村の季節は、新しい春を迎えた。
終わり。