9:白い冬 100年前の思い残し
9:白い冬 100年前の思い残し
白い白い冬。この年の冬は特に寒く、この土地でも今までにないような雪が降り積もり始めた。古い神様は、人々がゆきかきに来ないと怒っていた。ちび神様の社は、すっかり雪に押しつぶされてしまった。でも、ちび神様は、そのままにしておいた。狐は残念そうにその様子を見つめていた。
しんしんと、雪が降り積もった。
「あの二匹も、さすがに来ないですね。今日の学校は休みかな。」狐はいった。
「こんな中で生徒に来られても困るよ。もう社もないし。危ないし。そんなスパルタな教師じゃないから。」ちび神様は笑った。
「・・・まだ、教師だった時の生徒のこと、覚えてます?」狐はちび神様にふいに尋ねた。
「うん?どうして。」
「あの猫とカラス、もしかして生徒の生まれ変わりじゃないですか。ちび神様の為に。」
「どうだろうね。」
「大神様が、もう一度やり直してみなさいっていってるんですよ。」
「そうだとしたら、大神様も意地悪だね。」
「・・・生徒が言ってたのと、同じ台詞ですよ、それ。」狐は笑った。
「確かに。」ちび神様も笑った。
「100位前・・・僕は教師を辞めて、仕事もせずふらふらとして、何をしてもうまくいかない気がして、その内に身体を壊して、一人で死んだんだよ。もうこれでいいや、って思って。」
「知ってますよ。」
「え、どうして?」
「その亡くなった先生を見つけたの、私ですから。」
「・・・そうか。君はもしかして。」
「ちび神様の狐です。それで今はいいんです。」
「何度も、ごめん。」
「私も、きっとやり直しなんですかね。ちび神様を巻き添えにしてますけど。」
「僕も君も、あの二匹も、みんなやり直しの生徒だ。」ちび神様は困った顔で笑った。
「猫さんとカラスさん、様子、見に行ってあげませんか?」狐は行った。
「うん。・・・そうだね。この雪の中、こっちに来てたりしたら大変だからね。」
ちび神様は、社を離れて見回りに行った。狐は、社の雪をそっと払った。