ヴァナルガンド
生まれてきたくて生まれたわけじゃない。生まれてきたのが悪いのか、何で僕はこんな身体で生まれたのか。
少年は生まれながらにして怪力であった。その怪力は触れるもの全て壊した。そう母親さえも。あの少年に触れると壊される。みな少年を避けた。しかしただ一人だけは少年を怖れず近づいた。その者の名は「ティル」勇猛果敢な女騎士である。少年に近づく者がいないなかティルは毎日少年に食事を運んでいた。少年もティルにだけは懐いていた。少年とティルは何事もない日々を過ごしていた。
だかある日王国に参った有名な占い師は言う。「その少年を王国に住ませておけば、近い将来王国に災いが巻き起こるであろう」と。
王国はすぐさまに少年を葬ろうとしたが、ティルの必死な懇願により、少年の四肢に鎖をつけて監視するだけとなった。
少年の四肢に王国一の職人が作った鎖をつけられる。これで少年の身動きは出来ないと王国一同安心したが、少年はいとも容易く鎖を引きちぎってしまった。
鎖を見た王様は思った。こんな化物を野放しにしてはいけない。王様は王国一の職人では駄目だと考え大陸一の職人に鎖を作らせた。その鎖を少年につけるが、またも鎖はいとも容易く千切れてしまった。
王様は恐怖した。こんな化物を鎖などで封じることなど出来やしないと。王様はティルに命じる、少年が育つ前に少年を始末しなくてはならない。と。だがティルは少年を殺すことなどできないと涙を流した。ならばどうするか。ティルは我が身を犠牲として魔法の鎖を作り出した。
少年の四肢に鎖がつけられる。ティルの命で作られた鎖。少年は鎖を引きちぎることは出来なかった。
そして少年は涙を流す。ただ一人だけの大切な者を犠牲にしてまで何故生きなければならないのか。
少年は叫ぶ。咆哮のように叫ぶ。
「うわあああああああああああああああああああ」
神を殺す獣は鎖に繋がれ嘆く。
その者の名は「ヴォルフ」神狼の名を宿す者であった。
少年がバッタバッタと復讐を成し遂げていくだけの物語。
王国は神の国
ヴァナルカンドでお察しのとおりあれをモチーフにしています。