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魔術について

 一


 彼は魔術に長けていた。生きた魔法使いだ。実をいうと、人は皆大体が魔術の素質を持っている。体内、器官にそういうものがあるらしいのだ。しかし、最近は退化しているようで、世代が移るごとに魔術の才能を持つ者は減っているらしく、彼の魔術を見た時は度胆を抜かれたほどだ。魔術の認識というのはそういうものなのだ。

 そして、魔術に関わる授業が高校に入ってからあった。

 彼女の部屋で風呂上り。ストレッチをしながらの会話である。

「何この授業。何するの?」

「一応、男子の剣道や柔道みたいに廃れかけた伝統みたいなもん。魔法のコントロールをするための授業なんだ。この授業、この学校特有のもんなんだ。でもこの授業はすごく人生において大切になる」

「魔法ねえ。私に魔法の素質があるとは思えないけど。検査も一度も引っかかったこともないし」

「おい、俺の存在真っ向否定だな。俺がいる以上、魔術が使えないわけがない。ある意味証明だぞ」

「そっか。貴方は魔力による異能のによるものか」

「カテゴライズされるなら使い魔だ。というか、それだと魔力門、意識してねーだろ。意識しねーと魔術はうまく扱えねーぞ」

 魔力門というのは、魔術を使うための力の開き口だ。それが開かないことには魔術など扱えないのだ。

「やっぱり、扱えないと困るんだろーね」

「ま、俺が魔力門開いたのは夏休みなんだけどな。焦るものでもないけど、早いに越したことはない。ちょっと今日から練習に取り入れてみようか。対人、殴り合いもすることになるし」

「ふーん」


 次の日から、バイト終わりで彼と部活の練習をすることは無くなり、魔術の練習が始まった。

「いいか? 理不尽な強さというものがある。ガキとプロレスラーが殺し合いをすれば、結果は想像しやすい。しかし子供に拳銃を持たして戦った場合、結果が容易に逆転する。拳銃という理不尽な強さ。それが大切だ」

 彼女はよくわからずに、ふんふんと頷いている。

「不等号式で表すのなら、生身、包丁と言った武器、魔術、兵器と言ったところか。兵器だとコストは俺らには合わない。最高のコストパフォーマンスを誇り、かつ、理不尽なまでの強力なもの。それが魔術。ヒョロヒョロでも軽い魔術が加われば生身のプロレスラーを圧倒する。だから肉体よりも武器の扱いよりも魔術が最優遇だ。なににおいても」

「? 殺し合いでもするの」

 彼女はからかったつもりだった。しかし彼は何も言い返さずに、悲しそうに「そうだな」とつぶやいた。


 二


 そして魔術がかかわる授業の日。彼女とあるクラスは魔術の恐ろしさについて思い知らされるのだ。

 例の授業の日。彼女は校庭に出ていた。体育みたいなものだろうが、男女で分けたりしないのだろうか、とのんきに思っていた。二クラスで授業を受けているのだ。

「お! おお! ザキザキ君だ! やっぱ進学クラスだったんか! でもヤタ君も井口さんもスズさんもいねえ! ザキザキ君だけかよ」

 どうやら、彼の生前の友達だったようだ。彼女は何も返さないが、彼は一方的にしゃべりだす。

 ザキザキ君というやつは彼のライバルのような存在だったらしい。家系もすごく、エリートのような存在だ。中学時代もいい成績を残しているとのこと。彼はまるで、自分の栄光であるかのように楽しそうに彼女に話すのだ。

「短気でプライベートでは俺がよく気を使っていた。今思えば、もっと話したかった、手合せしたかった。叶わないわな……」

 先生の話に集中する。

「魔術というのは恐ろしいぞ。魔力を暴走させたやつを抑え込むのは難しい。素人ではまずかなわない。最初の授業ということもあるし、違いを認識してもらうために、実際に戦ってもらおうと思う」

 先生は「笹崎!」と叫んでザキザキ君を前に立たせた。

「今日は18日。出席番号18番で。お。魔術回路が無い奴がちょうど一人。長田!」

 などと言われ、彼女が呼ばれた。彼はのんきに、「おおお! ザキザキ君と手合せか! 羨ましい!」などと興奮している。

「待ってください! 戦うって! 男子と女子ですよ!?」などと拒否しようとしているが、先生は「違いが判る程度に戯れてもらうだけだし、心配ない」などとのんきに言う。しかも、クラスメイトから「怖がり過ぎだよー」と笑われる始末。もはや彼女は断ることができなかった。


「例えるなら『抜き身の包丁持って防具なしで模擬戦闘してみてくれ』っていう状況とかわらねえ。酷すぎるよな今思えば」と誰よりも声を上げて笑っているのは彼だった。

「何それ……。私に見方が居ないじゃないのよぅ。誰かかわって」

「うぇ? マジに言ってんの?」

 途端に彼女の意識がなくなった。

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