アルカノ・デレトゥ 2
祐樹達がタイムワープした場所はドーム状の建物の中だった。綺麗なカーブを描く通路に祐樹達は移動していた。
硝子越しに見える外の庭園はとても美しい。ダデュカが先陣を切って歩き出す。
「アルカノ・デレトゥ。43才、出自は不明。十代中頃から理論物理学の分野で才能を開花させ、幾つも研究論文を発表する」
ダデュカはアルカノ・デレトゥの華々しいキャリアを披露していく。
「21才の時『科学評議会』と呼ばれる優れた科学者達の一員に任命される」
ダデュカは速足で歩きながら告げる。
「そして43才の時、例の論文を発表して評議会を追放される」
ダデュカも標的が明らかになるにつれて、気分が昂揚しているようだった。
「以後ネットワークを使い、論文を世界中に広めた後、行方不明。最終戦争の引き金を引いた男と一般に記憶されている」
祐樹はダデュカとレリュに歩幅を合わせながら訊く。
「今、この場所はアルカノが追放される前? 後?」
ダデュカはすぐさま答える。
「タイムワープに狂いがなければ、時間はアルカノが追放される三日前だ。場所は科学評議会の研究所。彼はまだ研究室にいるはずだ」
祐樹は尋ねる。
「彼を止められる?」
ダデュカは祐樹の確信に後押しされている。
「止められる。だが彼を止めても最終戦争は防げないだろう。彼は細心の注意を払って論文を発表した。彼の論文は分裂する細胞のように広まっていく」
ダデュカは推察する。
「彼一人を歴史から消しても……、歴史は変えられない。祐樹。君に何か考えが?」
祐樹は息を飲む。
「確かめたいことがあるんです」
祐樹とダデュカ、レリュはアルカノの研究室に着く。ダデュカは薄い膜のようなものを扉のセンサーに翳す。膜はセキュリティを解く役割を担っているらしい。膜に反応してアルカノの研究室の扉は開いた。
室内。薄暗がりの中、幾つものコンピューターが置かれた部屋の片隅に彼、アルカノ・デレトゥは座っていた。
アルカノはモニターに長い文章を書き連ねている。祐樹達が来るのを察していたかのように静かに立ち上がる。
アルカノは落ち着いた口振りで祐樹達にこう話し掛けた。




