ガトゥの説得 1
ガトゥがタイムワープしたのと時同じくして、眠たげにソファでうつ伏せる梨奈の姿が、祐樹の掌にあるモニターに映し出された。
そこへガトゥの足音が響く。ガトゥは梨奈に拘るイズーを変えるつもりのようだった。良く通る声でフロアのどこかにいるイズーに語り掛ける。ガトゥに緊迫感はなかった。
「議長、お別れの時です。戯れに高橋梨奈、彼女を拘束するのは一夜が限度でしょう。我々に矛盾は許されないのですから」
ガトゥの呼び掛けは続く。彼はイズーが改心すると信じてやまないようだった。
「私が彼女を相模祐樹のもとへ帰しましょう。議長にお手間は取らせません。何も問題はないはずです。別れの言葉でも仰るのがよろしいかと」
ガトゥの言葉に応えるイズーの声は沈み込んでいる。梨奈との「再会」が彼の判断力を狂わせているのは明らかだった。イズーはガトゥに促す。
「ガトゥ。彼女の……、高橋梨奈の意志を確認するといい。彼女が望むのならば未来に住まわせるのも悪いアイデアではない」
ガトゥはフラットな姿勢を崩さない。ガトゥはイズーを、梨奈へ行き過ぎた愛着を示すイズーを、改めさせようとしていた。
ガトゥは強大な権力を持つイズーでさえも従わなければならないルールがあると信じているようだった。
ガトゥは、半分眠っている梨奈の傍に立つと話し掛ける。
「梨奈嬢、あなたには選択の自由があります。選択肢は二つ。ですが一方の選択肢はあなたの心を混乱させ、多くの歴史を変えてしまう可能性があります。ならば自ずと答えは明らかでしょう」
ガトゥは優しく微笑む。ガトゥは、問題はすべからく解決出来ると確信しているようだ。




