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謎解き 5

 その時、黙り込んでいたウィルが素朴な質問を口にした。それは余りにシンプルな問い掛けだった。

「戦争の原因となった論文を発表させないようにする事は出来ないのか? もしあなた方にタイムワープが出来るのならば、それは出来るはずだ」

 議長は姿勢を正し、誠実に答える。

「我々の役目は歴史を守ることにもある。それこそが紫紺の羽根団との大きな違いだ。我々は過去を変えることはしない。理解していただけるだろうか」

 ウィルもオービルも口を閉ざす。彼らアゼテリは一貫している。正しいかどうかはともかく、批判は出来なかった。

 梨奈は半歩だけ、ほんの少しだけ祐樹に体を近づける。彼女の細い指先が微かに震えている。議長が謎解きをいよいよ終える。

「さて話はこれで終わりだ。まずウィルバー、オービルの両氏だ」

 ウィルとオービルは身構える。議長は伝える。

「二人が科学に大きく貢献する歴史、正しい歴史が再び形作られている。おそらく紫紺の羽根団は手出しするのを諦めるだろう」

 ウィルとオービルの安全が保障されて祐樹は一先ずほっとした。議長は告げる。

「一昼夜の内に歴史は元通りになる。それまで二人はアゼテリが保護させてもらう」

 議長は祐樹と梨奈に左手を差し伸べる。

「問題は君達だ。相模祐樹、高橋梨奈。君達は未だに歴史を彷徨う不確定要素だ」

「不確定要素」

 梨奈が不安げに言葉を重ねる。議長は両手を広げる。

「君達はもう一度紫紺の羽根団に協力させられるかもしれない。その不安を取り除けるまで二人を管理させてもらう。何より……」

 その時、これまで感情を一切見せなかった議長にそれらしきものが垣間見えた。

「相模祐樹。不思議な男だ。あの旅立ちの日、私が、私の生涯を決める判断を下したあの時にも、君は現れた」

 議長は両瞼を閉じる。

「邪魔立てばかりする男。何かのカルマを感じずにはいられない。少し疎ましくも思うよ」

 議長は祐樹の事を知っている? 個人的に? おかしい。

 祐樹は議長にとっては過去の人間。過去への介入を禁じる議長が祐樹を知っているはずもない。

 祐樹は戸惑った。議長は思わせ振りな口調で、梨奈に優しくこう語り掛けた。


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