表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/86

ガトゥ登場 1

 ウィルとオービルは飛行機を収納し終えると、祐樹と梨奈の二人をテート夫妻宅へ連れていってくれた。

 テート夫妻は陽気な人達で、祐樹達を喜んで出迎える。夫妻は寝室も祐樹達に貸してくれるという。夫妻は気さくで夕食もしっかりと祐樹達に持て成してくれた。

 夕食が終わり、寝室に入った祐樹達は、早速相談を始めた。自分達の身に何が起こったのか、今後どうするのか整理しなければならなかった。梨奈はベッドに体を投げ出す。

「結局、何が起こったんだろう? 祐樹、あなたは一体何をしたの? ここはどう見ても過去。場所はアメリカだよ」

 祐樹はしばらく考える。一体どうやって自分達はタイムワープをしたのか。それは祐樹の力なのか。梨奈の力なのか。祐樹には全く分からなかった。祐樹は素朴にいきさつを説明する。

「金木が俺に殴りかかってきて、梨奈が俺を庇ってくれた時。何か不思議な『風』が吹くのを俺は感じた」

 梨奈はしっかりと耳を傾けている。祐樹は口元に手をあてる。

「そして気づいたら『ここ』にいた。もしこれが俺のせいだとしたら、梨奈も一緒に運ばれたのは、梨奈が俺の服に触れていたせいじゃないかな?」

 梨奈は両手を広げて、話を整理しようとする。

「祐樹はその力を自由に出来ないの?」

 祐樹にはそれは自明の理だった。祐樹は左手を軽く挙げて、足をブラブラとさせるだけだった。

「多分自由には出来ないよ。自分でも何が起こったのか分からないんだ。それに俺の力なのか。梨奈の力なのかも分からないし」

 梨奈はベッドに仰向けになり、天井を仰ぎ見る。

「これはきっと祐樹の力だと思う」

 祐樹は口をつぐんで聴いている。

「だって行き先が20世紀初頭のアメリカ。ライト兄弟の飛行実験の場所だったんだもの」

 祐樹は唇に人差し指をあてて考え込む。梨奈は半ば呆れた様子で要点を突く。

「二人の身に危険が迫った時、あなたが逃げ場所に選んだのが、世界で一番あなたの落ち着く場所、時間だった。そういうことじゃないかな」

「それはキティホーク。ノースキャロライナの?」

 祐樹は言葉を引き継いだ。梨奈は舌を少し出すと、腕を組んで考える。

「何か方法はないかしら。この時間、場所から抜け出すための」

 祐樹は考えてみてもアイデアは浮かばない。何より自分の能力を自在に操れないと分かっていたからだ。

「何も思い浮かばないよ」

 祐樹が困ったように眉をしかめると、梨奈はぺこりと頭を下げる。

「それはそうよね。ゴメンね。色々畳みかけちゃって」

「いいや」

 そう祐樹が答えると、梨奈は不意に勢い良く体を起こした。そして壁に耳をあてる。祐樹も身を乗り出す。

「どうした?」

 梨奈は壁に耳をあてたまま、左手で祐樹を制する。

「静かにして。彼らが、ライト兄弟が言い争いをしてる」

「本当?」

 祐樹と梨奈は壁越しに耳を澄ます。確かに二人の激しい言葉のやりとりが聞こえる。祐樹と梨奈は息をひそめる。オービルが強い口調でウィルを説得している声が、祐樹と梨奈に響いてくる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ