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謎解き 4

 だが気高く構える議長にオービルが口にする。

「それにしては方法が乱暴すぎやしないか」

 議長は少しも動じずに応える。彼には彼の方法論への揺るぎない信頼があった。

「例え圧政であろうとも、人々は偽りの平和に匿われる必要があるのだよ。『最終戦争』の原因を隠し、人々に知らせてはならない。それが我々中枢審議会と『アゼテリ』の答えだ」

 そして議長は話を不敵に締めくくる。

「我々は知性の秘匿者であり、守護者でもあるのだ」

 皆はしばらく口を開けなかった。その沈黙を破って、尚もオービルが議長に反論する。たやすくあしらわれるのを覚悟しながらも。

「秘密を隠しても何もいい事はないぞ。必ず反動が起こる。紫紺の羽根団はそのいい例じゃないのか」

 オービルは右拳を握りしめる。

「彼らは政治活動だけでなく、歴史に介入さえしようとしている。その時点でアゼテリの、あんた達、中枢審議会とやらの負けじゃないのか」

 議長は身動き一つしなかった。彼のポリシーは微動だにしない。

「秘密を識者が握ってこそ、最終戦争の再来を防げるのだ。自由とデモクラシーが必ずしもいい結果を生むとは限らないんだよ」

 そして怪しげに議長は告げる。

「人間は時には沈黙を強いられなければならない。威嚇が必要なんだよ」

 オービルは大きな声で怒鳴る。

「あんたは間違ってる! 人間を矯正して奴隷に貶めようとしている! その影響は民衆だけに留まらないぞ! あんた達にも腐敗の影を落とすぞ!」

 議長は静かにオービルの意見を聞いている。だが考えを翻す様子はない。

「君の意見は尊重しよう。だがこれこそが私が歴史から学んだ政治手法だ。民衆に理性を与え、コントロールするのが私の役目だ」

 議長は口元に人差し指をあてる。

「それは絶対的でさえある。私は平和を誰よりも尊ぶ新時代の殉教者だ」

「くっ!」

 オービルは歯噛みした。まともに議論をしていたら議長には通じない。皆がそう思っていた。


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