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飛ぶ 4 

 やがて軍関係者との話を終えたウィルとオービルが戻って来た。二人の顔は晴れやかだった。オービルが祐樹と梨奈に声を掛ける。

「飛ぶぞ。調整には一片の曇りもない。あとはお利口な飛行機が計算通り働いてくれるのを待つだけだ。行こう」

 祐樹達はそれぞれの役目を果たすため、飛行機の傍に待機した。操縦服に身を包んだオービルとセルフリッジが笑みを交わし、機体に乗り込む。そしてウィルが機体を誘導する姿を見て、祐樹の胸は高鳴った。

 観衆も少しずつざわめきだし、祐樹の掌には汗が滲んでいた。その様子はまるで新しい歴史の始まりを告げているようだった。

 陽差しを浴びて、鈍い光を放つ機体はいよいよ飛び立とうとしていた。スピーカーからは飛行訓練開催を告げる声が響く。

 その声を聞き届けたオービルは軽く親指を立てると、飛行機を発進させた。機体は滑走路を走り抜け、青く透き通った空へと舞い上がる。

 瞬間、オービルが祐樹に笑い掛けたようにも祐樹には感じられた。

 機体はゆっくりと空を飛び、観衆のため息と歓声が響き渡る。飛行機の飛行距離、滞空時間、どちらもキティホークでの実験を上回った。

 長い飛行時間を終えた飛行機は、人々の大喝采の中、水辺に軟着陸した。

 飛行訓練は無事成功したのだ。飛行機からオービルとセルフリッジが降りてくる。

 そして喜びに沸く観衆の合間をぬってセルフリッジとオービルの二人は滑走路へと戻ってくる。

 ウィル、祐樹と梨奈の三人は二人のもとへ行くと握手を交わして喜び合った。そして全員で軍関係者へ飛行訓練の報告をしに向かった。

 幹部たちの顔はほころび、拍手で祐樹達を出迎えてくれた。みなが喜びで満たされていた。だがその時、祐樹達は忘れていた。

 「彼ら」、紫紺の羽根団はライト兄弟が、約束を破るのを見過ごしはしないということを。

 祐樹達がセキュリティの人間に案内されているその時だった。突然、水面が噴煙を上げて爆発音を響かせる。

 祐樹達はすぐにわかった。紫紺の羽根団がライト兄弟の二人に制裁しようとしているのだと。騒ぎたつ群衆。セルフリッジも軍人の本能で、反射的に懐の銃に手をあてる。

 祐樹達はアイコンタクトをすると、紫紺の羽根団が来たのだと確かめあった。そして二度目の爆発音が響く。

 これはもうただの警告ではない。彼らはライト兄弟を、そして祐樹と梨奈でさえも歴史から抹消しようとしているのだ。

 祐樹達が肩を寄せ合い身構えていると、突然、目の前で風が「振れた」。

 祐樹は咄嗟に握り拳を作った。だが、現れたのは……ガトゥだった。ガトゥは瞬時に、ウィルとオービル、祐樹と梨奈の体に触れると次々とタイムワープをさせた。

 風が激しく「振れ」、気がつくと祐樹達四人は白い円形の部屋に運ばれていた。

 そこはかつて祐樹がラングレーを告発する文を書いた場所だった。


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