表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/86

未来社会 4

 祐樹達が移動した場所。そこはどこかホテルの最上階の一室だった。そこからは夜闇に覆われた大都市を一望出来る。

 都市では偵察機が巡回し、サーチライトが漆黒の空を照らし出している。人の気配はなく、まるで「死の静寂」を思わせた。オービルが窓越しにその景色を眺めると声をあげる。

「どういうことだ」

 ダデュカがその「景色の意味」を説明する。ダデュカには強い反抗の意志があった。

「これが今現在の歴史から導かれる未来だ。恐怖によって支配された閉鎖社会」

 ウィルは戸惑いながらも訝しげに尋ねる。

「人が、いない」

 ダデュカは間髪入れずに応える。

「夜間に人々は出歩き出来ない。出歩けば即「消去」される」

「『消去』?」

 オービルが「消去」という不穏な響きに反応して訊く。ダデュカはアゼテリの作った社会について詳しく説明していく。

「人々の自由は奪われているんだ。政治活動は勿論出来ない。職業も自由に選べない。人々のコミュニケーションでさえ最低限度に留められている」

 ウィルは余りに過酷な現実を前にして沈黙する。ダデュカは窓硝子に手を触れて夜闇を見おろす。

「それが私達の暮らす未来社会、『地球連合・アゼテリだ』」

 オービルはこう前置きする。

「酷い状況だ。それは分かった」

 そして当惑気味にダデュカを問い質す。

「だがその『アゼテリ』と俺達に何の関係がある? 俺達を妨害して何の意味があるんだ」

 ダデュカは落ち着いて答える。

「人類はやがて文明を破滅させる『最終戦争』を始める。あなた方の飛行機発明がその幕開けとなるんだ」

 オービルは散り散りになった心を鎮めようとする。ウィルは冷静に聴いている。

 ダデュカは偵察機を眺める。そこでは彼の荒々しい気性は抑えられている。

「その『最終戦争』で旧体制は崩壊する。そしてその崩壊した世界を再生させる為に創られるのが『アゼテリ』だ」

「良く分からないな。だから俺達を襲ったとでも?」

 オービルは苛立たしげに訊いた。ダデュカは即答する。

「そうだ。我々、紫紺の羽根団は歴史の繋がりをほぼ完全に把握した」

 そして穏やかな瞳でライト兄弟を見つめる。

「君達の発明を少しでも遅らせるだけで、『最終戦争』は免れられる」

 ウィルは、ダデュカの言葉を深く酌み取って尋ねる。

「私達が飛行機発明をやめれば……、『最終戦争』とやらを防げる?」

 ダデュカは返答する。

「その余地は充分にある」

 ダデュカは右掌を広げる。

「さて本題に入ろう。あなた方は今歴史の分かれ道に立っている。その選択は人類の行く末を左右するだろう」

 オービルは忌まわしげにダデュカを見つめている。ダデュカは人差し指を口元にあてる。

「三日後だ。三日後。君達がセルフリッジ中尉を乗せた飛行訓練を中止するのを私は期待する」

 ダデュカは両掌を広げる。

「それだけで『最終戦争』は防げる。簡単だ」

 オービルが問う。

「もし拒めば?」

「悲しむべき結末が待っているだろう。紫紺の羽根団はもう一度強硬な手段に訴える」

 ダデュカの返事にオービルはシニカルに応える。

「あんた達の本質は変わらないというわけか」

「臨機応変にというだけだよ」

 ダデュカはそう言って姿勢を整える。

「私達の提案はここまでだ。さぁ君達にとっての現実、二十世紀初頭のアメリカへ戻ろう」

 そうしてレリュがウィルとオービルの、ダデュカが祐樹と梨奈の体に触れると、風が「振れた」。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ