未来社会 2
夜、ホテルの一室。ウィル達にあてがわれた部屋で、ウィルとオービル、祐樹と梨奈は話し込んでいた。
なるべく明るい話題を選ぼうとしたのに、皆が疲れていて暗いムードに包まれている。オービルが雰囲気を変えようと、この四年間祐樹達が何をしていたかについて尋ねる。
「今」この時間は、祐樹達にとってはライト兄弟と別れた時から数分後でも、ライト兄弟にとっては、四年も経っているのだ。祐樹は口をつぐむ。この場を凌げるのは梨奈以外にない。
祐樹の予想通り、梨奈は架空の四年間を作り上げた。
自分達は勉強に励んでいた事。地層を調べるだけでなく、天文学など幅広い分野を学んでいたとも話して聞かせた。天文学にはオービルも関心を持っていた。
「もっと大きな望遠鏡が作られれば、天文学は大幅に進歩するだろうね」
オービルはそう言った。20世紀初頭では、この考えは先を行き過ぎた考えだ。ウィルとオービルがどれだけ最先端の考えを持っていたかが分かる。
梨奈が「架空の四年間」の話をしている内に、少しずつライト兄弟にも笑顔が見えるようになっていた。
だがウィルの勧めで皆が眠ろうとした時、「彼ら」が再び訪れた。前触れなど一切なく。
カーテンが勢い良く煽られ、風が「振れた」。
「彼ら」。ダデュカとレリュが厳しい顔つきで祐樹達の眼の前に現れた。二人にはライト兄弟を初めて襲った四年前の衝動的な様子はなく、物静かだった。




