埋葬 3
現場では人々がざわつき、不穏な雰囲気になっていた。飛行訓練の中止が発表されたのだろうか。それとも祐樹とマウリカ、ガトゥの争いが皆に知られたのか。真相は祐樹には分からなかった。
祐樹はざわめく人込みを抜けて、滑走路で待つウィルとオービル、梨奈のもとへと向かった。ウィルとオービルは少し疲れた様子で飛行訓練が中止になったと祐樹に告げた。
彼らの手には祐樹が見つけた金属素材が幾つも握られている。訊けば翼のあちこちに取り付けられていたという。
ウィルとオービルはマウリカの裏切りに落胆していた。二人はマウリカの動機、そして今どこにいるかを祐樹に尋ねる。祐樹は二人を混乱させるだけだと分かっていたので答えなかった。
ウィルとオービルはトラブルが事あるごとに起こるのに胸を痛めていた。ウィルは頬を拭い、憂えた思いを口から零す。それはとても詩的だった。
「カルマだ。バベルの塔を神はお気に召さないらしい」
バベルの塔。それはまさに彼らの発明した飛行機そのものだった。天に届かんばかりの発明を「神」が戒めたと、ウィルが感じてしまったとしても無理はない。
ラングレーとの論争、ラングレーの自殺。そして悲劇を乗り越えての再出発に立ちはだかるトラブル。ウィルは物憂げだった。金属素材を丹念に調べるオービルも沈みがちだった。




