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ガトゥ再来 2

 タイムワープした場所は……大河の辺、祝いごとのような雰囲気の場所に人々が集まり、楽しげに話をしている。

 祐樹達は人込みに紛れ、辺りを見回す。ガトゥの言った通りだ。今まさにセルフリッジ中尉とオービルの飛行実験が行われようとしていだ。

 祐樹は記憶を辿る。この実験を依頼したのはアメリカ政府。日付は1908年、9月17日。ライト兄弟にとって、飛行実験で被害者を出したただ一度きりの日だ。

 祐樹はそれをしっかりと覚えていた。ガトゥは祐樹達二人を連れて状況を説明する。

「ここでは紫紺の羽根団の一人、マウリカという男がライト兄弟の助手として働いている」

 祐樹は、ライト兄弟にマウリカなどと言う助手がいたのは初耳だった。紫紺の羽根団が動いたのは間違いなさそうだ。ガトゥは続ける。

「彼は特殊な金属素材で水平尾翼を加工する。祐樹、君の使命はその金属素材を取り除くことだ。そして必要ならば飛行訓練を中止させる。それだけだ」

 祐樹は今一度気力が湧いてくるのを感じた。ガトゥは、なぜこの役目に祐樹が相応しいのかを告げる。

「相応の信頼を受けていた元助手が再び訪れて忠告する。ライト兄弟も耳を傾けざるをえないだろう。事態が差し迫っているのを理解するはずだ。行け。マウリカは私が止める」

 祐樹と梨奈は足早に滑走路近辺に急ぐ。そこではウィルとオービルが機体の点検を行っていた。

 つい数分前に別れの手紙をしたためたのに、すぐに再会するなんて不思議な気分だった。だがライト兄弟には四年の月日が流れているのだ。

 遠くに操縦服に身を包んだオービルが見える。傍にはウィルがいて、機体の話をしている。

 祐樹達は急いでライト兄弟に駆け寄る。そして祐樹と梨奈が二人に声を掛けようとした瞬間、大柄な黒服の男が立ちはだかった。

 セキュリティの人間だ。彼は厳しい顔つきで祐樹達を遮った。

「青年、ここからは関係者以外立ち入り禁止だ。これは軍事訓練の一環でね。秘密も守らないといけないんだ」

 祐樹は一度、大きく息を吸い込むと大声でライト兄弟に呼び掛ける。二人の耳に届くように。

「ウィルさーん! オービルさーん! 俺です! 祐樹です! 相模祐樹です!」

 セキュリティの男は面食らって、祐樹の口を塞ごうとしたが無駄だった。祐樹の声をしっかりとオービルが聞き届けたのだ。

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